【副作用学講座Vol.9】チアマゾール(メルカゾール)服用中の発熱に注意!

こんにちは。
今回のテーマは抗甲状腺薬による
”無顆粒球症”についてです。

下痢、咽頭痛、発熱で受診された
患者がいました。
あなたは何を疑うでしょう?

冬場であればインフルエンザを
疑いたくなるでしょうか。

でも、これが薬による副作用だったら
かなり危険な赤信号なので
注意が必要です!

チアマゾールはバセドウ病など、
甲状腺の機能が病的に亢進している
患者に使われる薬です。

そして、チアマゾールによる無顆粒球症
の発生頻度は0.1~0.5%と報告されています。
1000人に数人です(報告されていだけで)。

多いか少ないか、感じ方は
人によるかもしれませんが
決して少ないとは言えないと思います。

そして「いつ起こりやすいか?」というと
65%以上が服用開始から2か月以内です。
数か月後に発生した事例もあります。

なので、チアマゾール投与開始から
少なくとも2か月間は2週に1回、
定期的に血液検査することになっています。

◆無顆粒球症とは?

では、「無顆粒球症」とは何でしょう?
好中性顆粒球数が500(/μL)未満に
なった状態です。

好中球は白血球の40~70%を占め、
細菌感染巣に遊走し、細菌を殺菌する
機能をもっています。

つまり、無顆粒球症では、細菌に対する
抵抗性が低下し、肺炎や敗血症などの
重篤な感染を起こして死に至ることもあります。

そして初期症状は、感染の徴候、
・寒気
・のどの痛み
・突然の高熱
などです。

これらがかぜの初期症状と
似ているため、気づきにくく
対策が遅れるということになります。

まして、チアマゾールは体調を
維持する上で重要な薬なので、
疑いがなければ当然のように飲みつづけます。

こういう副作用があるということを
知っておいて、まずは疑って検査する。
これが非常に重要です。

◆もし無顆粒球症だと分かったら?

基本的な対応は他の副作用と同じです。
「チアマゾールを中止」します。

また、好中球の減少が著しい場合は、
顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)という
好中球を増やすための注射が使われます。

あとは十分な感染対策を行い、
肺炎など重篤な感染症を防げば
命に支障はありません。

以上、ポイントとして2つです!

・チアマゾール服用+急な発熱
⇒無顆粒球症を疑い、受診勧告!

・チアマゾール服用中には
定期的な血液検査を行っているかチェックせよ!

~おまけ知識~

もう一つの抗甲状腺薬である
プロピルチオウラシルとチアマゾール
は”交差性感作”があります。

つまり、チアマゾールで無顆粒球症
を起こした患者にはプロピルチオウラシル
を使うべきではないとされています。

以上、参考になれば幸いです。
では!

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コメント

  1. kymkyu より:

    すいません。教えて頂けますか?12月16日から一日3錠のメルカゾールを飲んでいます。怖い副作用を聞きますが

    • しゅがあ より:

      kymkyuへ

      コメントをいただきありがとうございます。
      「特に怖い副作用」ということでしたら、記事でご紹介したような症状となります。

      特に開始数か月での発生が多いことが報告されておりますので、自身で感じられる症状についてはご参考いただければと思います。血液検査を実施することで、その兆候を疑うこともできますので重要です。

      その他、メルカゾールに限らず、副作用のリスクはすべての薬でゼロではありませんので、何らかの気になる症状(普段との変化)がでたときにはすぐに相談する、というのが基本の対応となります。

      メルカゾールは、甲状腺の機能を調整して体調を維持する大切な薬ですので、自己判断で止めたりということがないようにお願い致します。

      知らないことや理解できないことは、誰しも恐怖に変わりますよね。大切なことは、むやみに恐れることではなく、リスクと対策を知ることです。
      また何か疑問点などがあればご相談ください。