抗菌薬とワーファリンの相互作用!

薬物間相互作用は
薬剤師の柱の一つになるだろう、
と勝手に思っている私です。どうも。

今回は前からちょっと気になっていた
内容なんですが、ワーファリン服用中に
抗菌薬ってどうなんだっていうテーマです。

本題の前に、ちょっと復習!
ワーファリンの薬理は?
⇒「ビタミンK作用に拮抗し、肝臓におけるビタミンK依存性血液凝固因子の生合成を抑制して抗凝血効果および抗血栓効果を発揮する」添付文書より

ちなみに、納豆がだめな理由は?
⇒納豆には、納豆菌が含まれていてこの菌がビタミン
Kを産生することで、ワーファリンの効果を減弱するといわれています。

では、抗菌薬を使うとどうなるか?

納豆菌以外にも、腸内細菌には
ビタミンKを産生する菌があり、
抗菌薬で腸内細菌叢が壊れて体内のビタミンKが減ってしまいます。

結果として、ワーファリンの効果が
増強してしまう恐れがある、
といわれているわけです。

で、実際にワーファリンと
抗菌薬を併用するとどうなるの?
というのがテーマなわけです。

ちょっと調べたら、
かなりそれらしい内容に辿り着いたの
みんなでシェアしていきたいなと。

WF-anti

ワーファリン服用中の患者に
いくつかの抗菌薬を使用した場合、
PT-INRがどう変動するか?という論文のようです。

PT-INRとは?
プロトロンビン時間–国際標準化比率の英文略記で、血液の固まりにくさを表し、ワーファリンによる治療がうまく行われているかどうかを判断するために使われる検査です。標準は1.0で、数字が大きくなるほど血液が固まり難いことを意味します。適切な範囲内に維持されるようにワーファリンの使用量を調節するわけです。70歳未満では2.0~3.0程度が良いとされていますが、70歳以上では安全性を配慮して1.6~2.6にすることが推奨されています。

そして、この論文では、
PT-INR が5以上となると
コントロール不良と評価しています。

早速ですが、結果です。

抗菌薬を使用することにより、
使用後2週間以内でのPT-INRが、
5.0以上となるリスクは、トータルで使用前の2.46倍に上昇。

【PT-INRが5以上となった割合】
アジスロマイシン=3.8%
シプロフロキサシン=4.3%
レボフロキサシン=5.3%、
モキシフロキサシン=9.2%、
メトロニダゾール=10.5%、
ペニシリンやセフェム系=有意差つかず

結論としては、
ニューキノロン系やアジスロマイシンには要注意。
メトロニダゾールはピロリ2次除菌など
用途が限られているので問題にはなりにくいですね。

ワーファリン服用中に怪我をして
セフゾンを数日間服用するなんていう
場合は問題ない、といえるかもしれません。

で、ここからが重要な話です。
そもそも抗生剤を使うときってどんな時ですか?

当たり前ですが、
「感染症」になっている時ですよね。

たとえば風邪(上気道炎症状)の場合、
抗生物質を使用していなくても、
PT-INRが5以上となるリスクは、
感染症状のない場合の2.12倍に増加すると報告されています。

つまり、感染症という状態そのものが
ワーファリンの効果を不安定する要素である
ということです。

また、感染症以外にも
・女性であること
・基礎疾患に癌があること
・抗生剤使用前のPT-INRが2.5以上であること
などがワーファリンの効果を不安定するリスクを高めます。

あとは、高齢者の場合は、

本剤は、血漿アルブミンとの結合率が高く(「薬物動態」の項参照)、高齢者では血漿アルブミンが減少していることが多いため、遊離の薬物の血中濃度が高くなるおそれがある。

といった記載もあるので、注意が必要ですね。

で、何がいいたいのか、
そろそろまとめに入っていきますね。

抗菌薬とワーファリンという事例
でみると、確かに相互作用はゼロではない、
これは他の研究などからも事実でしょう。

しかし、本当のところは?
ということを考えていったときに、
その相互作用自体はそれほど影響はないのではないか
という視点も見えてきます。

抗菌薬は感染症に使われる、
しかし、そもそも感染症になると
ワーファリンの効果は不安定になるのです。

であるならば、
注意するところも変わってきますよね?

ワーファリンを服用しているから、
ニューキノロンを使用できない
もしくは、ワーファリンを減量する、
というのは、もしかするとナンセンスかもしれません。

だって、もともとの原因は、
感染症にあるかもしれないのだから。

あとは、「リスクの増加」って
かなり誤解をしやすい評価法だと
個人的には思うのです。

たとえば、
”リスクが2倍になる”
という結果があったとします。

これだけみると、
2倍!?
これは気をつけねば!とぱっと見で感じるかもしれません。

しかし、ちょっと冷静になると、
ちょっと違う視点でもみることができます。

そもそも、リスクそのものが、
1000人に1人に生じるものであったとします。
すると、2倍になっても1000人に2人です。

これって、どうでしょうか?
例えば抗菌薬を使えば1000人に100人助かるのに、
2倍のリスクという概念に振り回されて、
抗菌薬を使わないという選択肢を選んでしまうかもしれません。

これは極端な話ではありますが、
こういうケースというのは、
普段からあり得ると思います。

データをみるときには、
背景に隠されている要因は影響していないか?
評価している項目は本質からずれていないか?
リスクの増加はベネフィットを上回るものなのか?
これらの視点を忘れてはいけません。

情報やデータの本質を理解する。
そういう力をつけたいものですね。
最後までありがとうございました。では、また!

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