妊娠に気づかず睡眠薬を飲んでいたときの対応は?

ninpu

今回は、妊娠と睡眠薬についてお話しします。

妊娠と薬と関係というのは、すごく気になる人が多いと思いますが、結局のところ「これなら安全!」って言いきれるものはなくて、ひとつひとつ確認していくしかないんですよね。

ということで、今回は睡眠薬についてです。

細かいところに興味ない人もいると思うので、長々と説明する前に結論から書いておきますね。

【結論】

まず催奇形性については、肯定・否定ともに報告があります。最終結論はでていませんが、先天異常の自然発生率(簡単にいうと、薬を飲まなくても先天的な異常が発生する確率のこと)と大きな違いはないと考えられています。

一方で、妊娠後期の継続した睡眠薬の服用により、新生児に退薬症状や筋緊張低下、黄疸の増強などの症状が現れることがあり、分娩後の観察が必要となるケースがあります。

具体的には、「ぐったりしている状態」や「手足をブルブルふるったりする状態」があらわれることがあります。 薬の影響がより強い場合には「けいれん」や、「息をとめる」な どの一時的な症状が現れることがあります。(睡眠薬の効果が、生まれてきた子どもにも現れることがあるということです。)

この離脱症候群についての詳細は、厚生労働省のこちらの資料をご参考に。

では、ちょっと詳しく知りたい人のために説明していきます。

一般の方でも理解できるように書いていきますので、よかったら参考にしてください!

添付文書の記載

では、製薬会社が作成した薬の説明書にはどのような記載があるのか?

いくつか例を挙げていきましょう。

・ゾルピデム(マイスリー®)、ゾピクロン(アモバン®)

⇒妊婦、妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。(妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。)

・ブロチゾラム(レンドルミン®)

⇒妊婦、妊娠している可能性のある婦人には、投与しないことが望ましい。

・フルニトラゼパム(ロヒプノール®)

⇒動物実験で催奇形性が報告されているので、妊婦、妊娠している可能性のある婦人には、投与しないことが望ましい。

いかがでしょうか?それぞれの表記は少しずつ違いますね。

結論をいうと、当てにならないです!^^;

もちろん明らかに悪影響がある場合には、「投与してはいけない(禁忌-きんき-)」と表記されるので、上記のような薬に関しては「それほど問題にはならない」といったニュアンスが含まれています。

これは、薬の世界ではよくある表現で「何かあったときに、責任をとれないから明言は避ける」という姿勢からきています。単純によく調べられていないということもありますが^^;。

ですので、妊娠中に睡眠薬を飲んだからといって慌てて取り乱す必要はない、ということが知っていただければ幸いです。

胎児・新生児への影響

とはいえ、睡眠薬が子どもに全く影響がないというわけではありません。

では、インタビューフォーム(IF)という詳しい薬の説明書に載っている症例についてご紹介します。

ニトラゼパム(ベンザリン®)のIFより

妊娠後期の分娩までの8週間、毎晩10mgのニトラゼパムを服用した29歳の女性が、眠りがちで哺乳したがらない男児を出産した。生後3日目では過度の傾眠傾向にあり、無反応で母乳を吸うことができなかった。7日目には退院できるまでに回復した。

これは、母親が服用していたニトラゼパムが、胎盤をとおして胎児に移行していて、生まれた後も数日間にわたってその効果が続いたというケースです。

ほとんどの薬は、服用を止めればだんだんと体から排泄されて、効果は弱まってきますから、このケースでは大事には至らなかったということです。

このように、飲んでいた量が適正であれば子どもへの影響も少なくて済む場合が多いのです。

妊娠後期の婦人にニトラゼパムを5mg経口投与したとき、12時間後の母親の血中と臍帯血(さいたいけつ)中のニトラゼパム濃度は同程度であった。

胎児にどのくらい薬が移行するかは、薬に種類によって異なりますが、母親と同程度の薬がそのまま胎児にも移行している場合もあるということです。

外国の調査では?

2007年にスウェーデンの調査で、妊娠初期にペンゾジアゼピン系薬剤(現在、一般的に使われるほとんどの睡眠薬はこのタイプ)を使用した際の影響について調べたものがあります。

その結果では、先天奇形発生率や口唇口蓋裂との関連は認められなかったようです。

まとめ

睡眠薬に限らずですが、妊娠中に薬を飲むということは、基本的には胎児も同じように薬を飲んでいると考えてください。

しかし、皆が妊娠期間を通して健康でいられるとは限りません。もともと持病をもっている方もいますし、妊娠後に体調を崩す方だっています。

そういうときには、一般的に「リスク」と「有用性」を天秤にかけて医師が考慮して薬を使うのかどうか?ということを判断します。

安心してほしいのは、薬害で印象づけられた「薬=奇形」のような事実はない、ということです。現在分かっているなかで、そういった障害を生む薬というのはほん一部です。

薬は使わないに越したことはありませんが、使わないほうが返って胎児に悪い場合もあるということを忘れないようにしましょう。

また、健康な妊娠でも一定確率のもと先天的な障害は生じるため、後になって「薬のせいだ」と決めつけて悩んだり、自分を責めることはしないことです。

しかし、そういったことにならないよう、あらかじめ知識をもっておくことは大切なことです。

最後に

インターネットには多くの情報が存在し、いろいろな意見があると思います。

特に「睡眠」に関していえば、様々なサイトが多くのサプリメントや健康食品を紹介しているものもあります。

薬じゃなければ大丈夫と思いがちですが、妊婦への安全性は調べられていないことがほとんどです。むしろ、病院でもらう薬のほうが安全という場合もあります。

また、「天然だから安全」という考え方も危険です。天然の成分のなかにも強い効果のものや妊婦によくないとされているものもあります。

ビタミン剤でも多く摂取するとよくないものもありますし、ポイントとしては何かを成分や栄養を極端に摂取することは勧められません。

不眠は、心理的な状態と密接に関わっているため、生活リズムや生活習慣を見直したり、考え方を変えたりするだけで改善する場合もあります。

睡眠時間を見直したり、照明を変えたり、ヨガをやってみたり、食べ物を見直したり、アロマや音楽でリラックスしたり・・・いろんな方法があります。

そういった視点で少しずつ薬を減らしていくのもよいかもしれませんね。


以上、今回は妊娠と睡眠薬をテーマに簡単にご紹介しました。

少しでも参考にしていただけた幸いです。では、また!

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コメント

  1. 梅木さとみ より:

    妊娠初期にベンザリン10mgを5日間飲んでしまいました。とても後悔していますが飲んでしまったことをなかったことにもできず不安になっています。赤ちゃんへの影響は出てしまいますか?突然のコメント申し訳ありません。できればご意見をお聞きしたいです。よろしくお願い致します。

    • しゅがあ より:

      >梅木 様
      不安なお気持ちになられていること、お察しいたします。

      私が集めた情報では、ベンザリンなどのベンゾジアセピン系薬によって奇形率が顕著に増えるということはないとのことです。

      ただし、新生児に何らかの障害をもつ確率というのは、健康に妊娠・分娩されたとしても数%あると報告されています。100人の生まれてくる子どものうち数人は何らかの障害をもっているということですね。

      薬による胎児への影響を考えるときには、この自然発生率と比較することになります。一方、ベンザリンを服用した妊婦さんを調査したら、両者の確率はほとんど変わりなかったということです。

      私の個人的な考えでは、服用したことに関して現時点ではそれほど深刻に考える状況ではないと思いますし、逆に不安やストレスは確実に妊娠へ悪影響を与えます。

      まずは、これからの妊娠期間をできるだけ健康に生活されるようにご自愛いただければよいかと思います。

  2. さとみ より:

    しゅがあさん、ご丁寧にとても優しくお伝えしてもらえたことにとても感謝しております。飲んでしたった後悔は拭い去れないのは今も正直あります。事実起きてしまっことは変えられないけどこれからの未来前向きに大丈夫!と私が信じて妊娠中過ごしたいと思います。私の気持ちを軽くしてくれて背中を押してくれたことに感謝の気持ちでいっぱいです。ほんとにほんとにありがとうございましたm(__)m