嗄声(させい)の原因とメカニズム

今回のテーマは「嗄声」です。2015y07m06d_160208555

よく「かせい」と誤って読んでしまうことがありますが、正しくは「させい」と読みます。

「声がハスキーになる」「かすれ声」「声がれ」と表現されることもあります。

嗄声は、生活習慣、ある種の病気、薬の副作用として起こることがあります。今回は、これらの原因とメカニズムについて確認していきましょう!

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嗄声はどのように起きるのか?

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咽頭(のどの奥)には、筋組織と粘膜からできている左右一対の「声帯」と呼ばれるヒダがあります。

息を吸うときには、この声帯が開き空気が肺に入っていきます。その後、すぐに声帯が閉じて、その隙間を空気が通り抜けるときに声帯が振動して「音」が生じるわけです。

その音が、喉頭、咽頭、口、鼻で共鳴して、その人特有の「声」になります。人によって声色が違うのは、共鳴する場である口や鼻の形が異なるからです。

では、次に声が変化する原因について説明します。

声帯の生理的変化

子どものころは誰しも声が高いものです。そして、大人になるにつれて声のトーンは次第に落ちていき、特に男性の場合は「声変わり」を経験します。

声の高さというのは、声帯が振動するときの「周波数」によって変わります。

目安ですが、会話しているときの周波数は、乳幼児が400Hz、18歳女子が205Hz、男子が125Hzといわれています。ちなみに、ソプラノ歌手の歌声は800Hz以上になるといわれています^^;(驚

つまり、振動数が少ないほど低い声になるというわけです。これはギターの弦と同じ原理で、指で弦を短く抑えると高い音がでるように、声帯の長さと張りによって声のトーンが変化します。

一般的な声帯の長さは、7歳で4~5mm、18歳女子が8.8mm、18歳男子が12.2mmとなり、男女間でその長さに差がでてきます。

また、男性の場合には第二次性徴のときに、喉にある甲状軟骨が大きくなり、声帯が伸びて厚みを増すため、さらに声は太くなるのです。

ただし、これらは声の高さや強さの変化であり、音質が変化する嗄声とは異なります。

声帯の炎症と浮腫

かぜを引いたときに声がかすれるというのは、多くの人が経験したことがあるでしょう。

かぜは急性上気道炎とも呼ばれ、ウイルスや細菌が喉や気管支に感染を起こした状態です。すると、喉や声帯にも炎症が起こり、声帯が赤く腫れてきちんと閉じられなくなります。

すると、声帯が通常時のように振動できずに、きれいな声を発生させることができなくなります。

また、下記のような刺激によって慢性的に声帯の粘膜を刺激したりすると、声帯に炎症やポリープができて嗄声の原因になることがあります。

・過度の喫煙・喫煙、花粉、黄砂、PM2.5などの有害物質

・カラオケでの歌いすぎ、歌手などよく声を使う職業の人

・胃食道逆流症(食道への逆流物が咽喉頭、声帯粘膜に炎症をおこす)

アナフィラキシー

アナフィラキシーとは、食物アレルギーや蜂さされ、薬物性アレルギーが原因になって起こる強いアレルギー反応のことです。sick_anaphylaxis

アナフィラキシーを起こすと、免疫反応によってヒスタミンやロイコトリエンなどが多量に放出され、それらが神経を刺激します。

すると、血管の拡張が起こり血流が多くなり皮膚が赤くなります。同時に血管の透過性が高まって、血管のすきまから血漿成分が血管外に漏れだして浮腫(むくみ)が起きます。

これにより皮膚では蕁麻疹が現れ、声帯や咽頭でも浮腫が起こり、気道が狭くなって呼吸困難におちいります。こうなると声がかすれるどころの話ではなく、窒息死の危険があります。

浮腫が全身に及ぶと、血管内の水分量が不足して、血圧が急激に下がって、いわゆる「ショック状態」になります。

甲状腺機能の低下

甲状腺機能低下症では、甲状腺ホルモンの欠乏により新陳代謝の低下がみられます。具体的には、寒がる、眠気、皮膚の乾燥、記憶力の低下などが起こります。

同時に、体の組織中の間質にムコ多糖類とタンパク質の複合体ができ、それがリンパ管から回収されずに沈着して浮腫を起こすことがあります。

これを粘膜水腫といいますが、水分ではなくタンパク質による浮腫のため、指でおさえたときに圧痕が残りにくいという特徴があります。

粘膜水腫によるむくみが、舌や声帯にも起こることで嗄声が生じることがあります。

声帯の乾燥

声帯や口、舌が正常な動きを行うには、適度な水分(粘液)が保たれていることが重要です。

口腔内の乾燥が激しいと、声帯粘膜も乾燥して、うまく閉じれなくなって声がかすれることがあります。

高齢になると声がかすれてくることは多いのは、加齢によって声帯が委縮し、唾液の分泌が低下して口腔内が乾燥するためです。

神経の異常

声帯の開閉は、反回神経という迷走神経の一部によって調整されているため、この神経に何らかの障害が起こると嗄声が起こります。

反回神経は、脳から出て、咽頭のそばを通り、心臓の近くでUターンして、再び咽頭に入って声帯にも分布しています。

つまり、反回神経は食道、胸腺、甲状腺、大動脈のそばを通っていますから、これらのどこかで病変があると近くを通る反回神経にも影響がおよび、嗄声が発生することがあります。

具体的には、食道がん、甲状腺がん、縦隔腫瘍、肺がん、大動脈瘤などの症状として嗄声が起こることがあります。

また、TVドラマや映画で有名になった筋委縮性軸索硬化症(ALS)などの神経疾患や脳血管障害でも反回神経の障害が起こることがあります。

肺の機能低下

加齢や疾患によって肺機能が低下すると、発声時に安定した呼気流を作りだせなくなります。

すると、声がかすれたり、大きな声が出せなくなったり、長く話すことが難しくなったりします。長年の喫煙による肺機能低下やCOPDといった呼吸器疾患でも、同様の症状が起こることがあります。

薬の副作用で起こる嗄声

薬の副作用が原因となり、上記のような症状が生じることがあります。

これらもいくつかのメカニズムに分けて説明することができるので、ご紹介していきます。

声帯の男性化

先の説明で、男性は成長の過程で声帯の構造が変わっていくという話をしました。

一方、薬として男性ホルモンやタンパク同化ステロイドを投与した場合には、いわゆる声帯の男性化がすすんで、声の低音化がみられることがあります。

薬物アレルギー

アナフィラキシーは、まれではありますが薬の服用によって起こることもあります。

アナフィラキシーは2度目以降の反応で起こると思いがちですが、免疫グロブリン(IgE)を介さないアナフィラキシー反応では、初回の投与でもアナフィラキシー症状を起こすことがあります。

たとえば、次に挙げる薬物は肥満細胞を直接刺激してヒスタミンを遊離させる作用をもちます。

・コデインリン酸塩、モルヒネ塩酸塩(硫酸塩)

・テトラコサクチド酢酸塩(コートロシン®)

・ヨード造影剤

・クロルヘキシジングルコン酸塩(ヒビテン®他)

・非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs:ロイコトリエンの産生を亢進するため、アナフィラキシー様反応を起こしやすい)

また、ACE阻害薬などは、ブラジキニンの分解阻害作用も併せ持っているため、血管浮腫を起こし、まぶた、舌、唇、喉頭、声帯などの浮腫が起こることがあります。

ステロイドによる嗄声

吸入ステロイドによる嗄声は、最もよく知られている副作用のひとつです。

喘息のコントロールのために使用される吸入ステロイドが喉に付着して、局所的な副作用を生じる例のひとつです。

特にドライパウダーは、粒子径が大きい乳糖などをキャリアにしているため、声帯に付着しやすく、エアロゾルに比べて嗄声の発生頻度が高いといわれています。

原因としては、下記のような機序が考えられています。

・ステロイド吸入によりカンジダ症が発生し、声帯に炎症が起こる

・声帯に付着したステロイドによりステロイドミオパチーが起こり、声帯の筋力が低下する

・ステロイドが、声帯粘膜層のコラーゲンや基質を増やすことにより声帯が太くなり、声帯の閉鎖不全が起こる

副作用による甲状腺機能の低下

意外かもしれませんが、甲状腺機能の低下を起こす薬は少なくありません。嗄声が起こる機序については、上記で説明したものと同様です。

甲状腺ホルモンの合成や分泌を抑える薬剤としては、抗甲状腺薬、ヨウ素製剤、含嗽剤などのヨード含有薬物、アミオダロン塩酸塩(アンカロン®)、炭酸リチウム(リーマス®)、インターフェロン製剤、サリドマイド(サレド®)、ゴナドトロピン放出ホルモン誘導体、スニチニブリンゴ酸塩(スーテント®)、ソラフェニブトシル酸塩(ネクサバール®)などがあります。

ただし、これらは甲状腺中毒を起こすこともあるため注意が必要です。

また、甲状腺刺激ホルモンの分泌を抑えるものとしては、ドパミン製剤、ドブタミン製剤、副腎皮質ステロイド、オクトレオチド酢酸塩(サンドスタチン®)などがあります。

抗コリン作用による喉の乾燥

口腔内が乾燥することで嗄声が起こるという話でしたが、抗コリン薬によっても口の渇きが起こることがあります。supiri-ba

近年、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療に抗コリン薬の吸入薬が有効だということが明らかになり、スピリーバ(チオトロピウム臭化物水和物)などの薬剤がよく使用されるようになりました。

このような抗コリン作用をもつ薬物が、吸入時に声帯に付着して、喉頭内腔の線分泌が低下して乾燥が生じることがあります。

これにより、声帯部分の浸潤性が低下して嗄声が起こるとされています。

その他の副作用による嗄声

薬の副作用によって、食道、甲状腺、肺といった臓器に障害がでることがあります。

これらの臓器に異常になることで、反回神経が正常に働かなくなったり、肺機能の低下により発声がうまくできなくなることで嗄声が生じることがあります。

まとめ

以上、今回は「嗄声」について少し詳しくまとめてきました。

「声がかれる」という非常に身近な症状であっても、多くの原因や発生メカニズムが考えられるということが少しでもご理解いただけたでしょうか?

成長に過程に起こる生理的な嗄声から、命にかかわるアレルギーの症状として嗄声が現れることがあります。

それらの鑑別するには、喉だけではなく全身の状態を確認したり、原因物質について考えたりする必要があるのです。

特に高齢者の場合には、様々な薬剤がいくつも処方されている場合があり、副作用による嗄声が起こるケースも少なくありません。

抗コリン作用をもつ薬剤は、嗄声だけでなく、緑内障の悪化、前立腺への影響、便秘、認知症との関連など、実は考慮しなくてはならない事項がたくさんあります。

身近な人で、最近声がおかしいなと感じたら、背景に病気があったり薬の副作用がでているかもしれません。

そんなときには、今回の内容を少し教えてあげてみるとよいかもしれませんね。

それでは、最後までお読みいただきありがとうございました!

参考:DI premium.2013.4

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