腎排泄型薬剤と肝代謝型薬剤の見分け方と基準ってあるの?

目の前にいる患者さんに、どの薬を選択し、一体どのくらいの量を使ったらいいのだろうか?

そんな問題を考えていくときに、重要な糸口になるのが「腎排泄型」と「肝代謝型」のタイプに区別する方法です。

実際には、薬は「ADME」の過程において、吸収されて排泄されるまで、体の至るところで代謝・分解され、便や尿中に排泄されます。

ですから、「肝」か「腎」かに明確に分けることは本来難しいことです。

しかし、大まかにでも両者を区別することで、類似薬があればどの薬剤を選べばよいのか?、用量設定はどうすればよいのか?判断する上で、ひとつの手がかりになります。

今回は、その方法について解説していきます。

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尿中排泄率とバイオアベイラビリティ

バイオアベイラビリティ(BA)

現在使われている多くの薬は、口から飲んで服用する「経口薬」ですので、それを例に考えていきましょう。

復習ですが、経口薬の場合には、服用した薬がそのまますべてが体内(体内循環)に入るわけではありませんでした。

そもそも腸管から吸収されにくい薬は、口にした薬のほとんど腸管から吸収されずに便中に排泄されてしまうため、体内循環に入る量はほんのわずかです。

また、消化管の酵素で分解されたり、それを乗り越えて門脈を通って肝臓に入っても「初回通過効果」という洗礼が待ち受けています。

これらの代謝過程を無事回避したものだけが、体内循環(血流)にのって全身に運ばれるのでした。

当たり前の話ですが、この体内循環に入る前に代謝を強く受けてしまうものは「肝代謝型」の薬剤ということができます。

ちなみに、バイオアベイラビリティ(BA)はAUCという値を使用して計算します。

AUCの復習はこちら

経口投与したときのAUC p.o.と静脈投与したときのAUC i.v.を使って、

AUC p.o. ÷  AUC i.v.= BA と計算できます。

両者で投与量が同じ場合にはシンプルにこの式で算出しますが、投与量が違うときには投与量Dを使って補正します。

(AUC p.o.÷ Dp.o.) ÷  (AUC i.v.÷ Di.v.)= BA

(単純に投与量が多くなればAUCも大きくなるので、両者をフェアにするために投与量で割っているだけですね。)

未変化体に注目せよ!

一方、今度は尿中に排泄される薬に注目すると、代謝を受けに「未変化体」として排泄されるものがあります。

この未変化体というのがキ-ポイントです。

なぜなら、肝臓でガッツリと代謝を受けて「水溶性」の代謝物に変換されてから、腎臓で排泄される薬というのが結構あるからです。

この場合は、いくら代謝物が尿中に排泄されていても「肝代謝型」の薬物ですから、騙されてはいけません!

投与された薬物のうち、代謝を受けずに「未変化体」として腎臓に多く排泄されるものを「腎排泄型」の薬物とよぶので注意が必要です。

そしたら、この未変化体の量を測定して「尿中未変化体排泄」を調べます。

すると、さきほどのバイオアベイラビリティの値を使って「尿中未変化体排泄率(fu)」を下記の式で求めます。

尿中未変化体排泄率(fu)

= 尿中未変化体排泄量 ÷ (投与量 × バイオアベイラビリティ(BA))

なぜこんな式になるのか説明しますね。

別に投与量で割ればいいじゃないか?と思うかもしれません。なぜBAがでてくるのか、と。

それは、体のなかに入ってからどうやって代謝・排泄されているのか?を見たいからです。言いかえれば、吸収されなかった分は考慮しないようにするためです。

たとえば、単純に腸管から吸収されない薬の場合はどうか?

投与量に比べてそもそも体内循環に入ってくる量が少ないはずです。

つまり、当然尿中にでてくる薬の量も「腎排泄型」「肝代謝型」にかかわらず少なくなってしまいます。

そうすると、単純に尿中未変化体排泄量 ÷ 投与量で計算してしまうと、必然的にfuもすごく小さくなってしまい、「これは肝代謝だ!」って決めつけてしまいます。

でも、実際には投与量100mgのうち10mgしか血流に乗らず、そのうち10mgすべてが「未変化体」として尿中にでているのかもしれません。

すると、実際にはこの薬は腎排泄率100%の薬剤だったわけです。それを誤って肝代謝だと勘違いしてしまったのです!(これはさすがに極端な例ですが笑)

こういうことが起こるから、BAを式に反映させているのですね。

式そのものは簡単なので、あとはこのfu値の理解の仕方と使い方についての確認です。

尿中未変化体排泄率(fu)の3:7で区別せよ

特に明確な理由があるというわけではなさそうですが、一般的に下記のように判断されることが多いです。

fu:0.7以上・・・腎排泄型薬剤

fu:0.3以下・・・肝排泄型薬剤

それ以外・・・肝・腎ハイブリッド型薬剤

体内循環に入ったうち、7割以上が代謝されていれば「肝代謝」と考えてはいかがでしょうか?ということですね。

逆に、fuが0.7以上あったら、腎臓が悪い患者にはちょっと使いにくいかもな。。。という目安にしてもよいということです。

尿中排泄率を使うときの注意点

上で少し触れたように、尿中排泄されるのは未変化体だけでなく、「代謝物」も存在します。

代謝物には、薬効を発揮する「活性体(活性代謝物)」と「非活性体」があります。

最近では、吸収率をあげるためにプロドラッグ化して、代謝を受けたのちに効果を示すものが多くあります。

もし、添付文書やインタビューフォームなどで、自分が知りたい薬物の「尿中排泄率」を調べるのであれば、この点に注意する必要があります。

①その薬は、未変化体で薬効を発揮するのか?代謝されて薬効を発揮するのか?

②尿中排泄率の計算するときに、「未変化体」「代謝物」が区別されているのか?もし、されていないのなら、本当にその値を参考にすべきなのか?

このポイントに注意しながら判断するようにしましょう。

参考までに、アロプリノールの排泄についてみてみると、インタビューフォームに下記の記載があります。

アロプリノールは血漿、尿、および各組織のキサンチンオキシダーゼにより酸化されて、大部分 がオキシプリノールとなる。腎機能が正常な患者3名にアロプリノール600mg/日を経口投与した場合、尿中へは服用した76%が排出され、排泄物の割合は、アロプリノール10.4%、オキシプリノール73.6%であり、それぞれのヌクレオシドとして12.5%、3.5%であった。

14C-アロプリノール169mgを単回経口投与した場合、一部は未変化のまま尿中に排泄され、残り の大部分はオキシプリノールに代謝されて、48時間で投与量の約40%が尿中に排泄される。また、投与量の20%が未吸収のまま48時間で糞便中に排泄される。

こんな感じの記載があります。

これを読み取ると、

口からアロプリノール錠を飲むと

「8割が体内に吸収され、2割が糞便に排泄される」

「吸収されたうち、未変化体のまま尿中にでるのが1割、残りの9割は何らかの代謝を受けている」

ということが何やら分かります。

じゃあ、これをどう考えたらいいのか?というと、アロプリノールの場合には代謝を受けてオキシプリノールとなってからも十分な薬効を発揮します。

ということは、ほぼ薬効を示す活性体がほとんど尿中に排泄されているということになります。

つまり、腎臓が弱っていれば、未変化体・活性代謝物ともに体内に蓄積することになりますから、これは立派な「腎排泄型」の薬物と考えることができます。

うーん。単純なことをやや掘り下げてしまった感はあるかもしれない・・・。

でも、ここまで考えてあげないと、本当に意味のある「使えるデータ」にはならないのです。

記載された数値をさらっと理解するだけでは、実際の体内での挙動をまったく反映していない誤った予測を立ててしまうことにもなりかねません。

常に数値やデータの背後にあるものを捉えなければ、真の姿に近づくことはできないのです。

それでは、今日はこのあたりで話を終わりたいと思います。

P.S.
こういうことを厳密に考えようとすれば、かなりの仕事があるよなぁとしみじみ感じます。それが、実際の臨床に「役に立てられるのか」が問題ではありますが(苦笑)

でも、今後薬剤師に求められるのってこういうステージな気がしてます。。。

[今回の参考図書]

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