H2ブロッカー×無顆粒球症
今回のテーマは、
ファモチジン(ガスター)など
H2ブロッカーによる「無顆粒球症」です。
スイッチOTCとして発売され、
病院にいくことなく手に入るようになった
代表的な薬ですね。
安全域がすごく広いため、
”副作用”が軽視されがちな薬ですが、
場合によっては重度の症状がでることがあります。
~開発中に起こった副作用~
H2ブロッカーが開発途上にあったとき、
「メチアジン」という候補薬品がありました。
実は、このメチアジンは高頻度に
無顆粒球症を起こしたことが報告されています。
その原因が、メチアジンのチオウレア基である
と推測されたため、シアノグアニジン基に変更され
”シメチジン”が誕生したのでした。
その結果、無顆粒球症の頻度は減少し、
いよいよ臨床で使われるようになったのでした。
しかしながら、
H2ブロッカーによる無顆粒球症は
それ以降に発売された薬でも度々報告されています。
それは、2つの原因によって起こる、
と考えられています。
①H2ブロッカー(or代謝産物)が好中球の細胞膜に共有結合してハプテンとして働き、抗好中球抗体の産生を引き起こす免疫学的機序
②H2ブロッカー(or代謝産物)が骨髄における顆粒球系前駆細胞を傷害する直接毒性
Q. 「ハプテン」ってなんだっけ?
⇒低分子物質で抗体と結合できるけど、”低分子”であるがゆえに単独では抗体に結合できない抗原のこと。体内のタンパクなどに結合することで、抗体と結合できるようになり、”抗原”として働く。
よって、
①のように用量に関係なく生じる一方で、
高用量であれば②の機序で毒性を発揮するともいえるのです。
そして、H2ブロッカーの重要な特徴として、
腎排泄である、ということがあげられます。
ちなみに、現在使われている
H2ブロッカーには下記のものがあり、
肝代謝は、ラフチジン(プロテカジン)のみ!です。
ファモチジン(ガスター)
シメチジン(タガメット)
ラニチジン(ザンタック)
ロキサチジン(アルタット)
ニザチジン(アシノン)
⇒すべて腎排泄!
(腎機能によって用量調節の記載あり!)
ラフチジン(プロテカジン)
⇒これだけ肝代謝!
意識的に、
H2ブロッカーの用量調節をしている
医師はどのくらいいるでしょうか?
この用量調節で疑義をしている
薬剤師はどのくらいいるでしょうか?
有名ではあるけど、
意外に抜けてしまうor軽視しているところではないでしょうか。
特にOTCだと正確な調整は不可能ですし、
自己判断による過量服用のおそれもありますね。
ちなみにシメチジンに関しては、
濃度依存的に顆粒球系前駆細胞を傷害する
ことが知られています。
無顆粒球症が起こったら?
自覚症状としては、
「寒気」「喉の痛み」「突然の高熱」
などがあり、注意喚起を行いましょう。
発生後の最も大切なことは、
追加の処置よりも前に、
”被疑薬の中止”なので忘れずに!
発熱を伴っているため、
至急に細菌検査を行い、
必要な抗菌スペクトラムをもつ抗菌薬を即時開始。
必要に応じて、
顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)
の投与も検討します。
一方、消化性潰瘍の治療の継続が必要な場合は・・・?
肝代謝のラフチジン(プロテカジン)に変更、
もしくは、PPIに変更するという対応が考えられます。
免疫学的な機序の場合は、
再投与はリスクがあるので、十分な配慮が必要ですね。
切り替え後も、漫然投与は避け、
定期的に血液検査を行い、
無顆粒球症の早期発見に努めなければなりません。
以上、H2ブロッカーによる
無顆粒球症というテーマでご紹介しました!
安全性の高い薬ではありますが、
現在の漫然投与はいただけない、
と個人的にはすごく感じています。
”薬は一時の助っ人、根本原因を探求せよ!”
以上、ありがとうございました!
【参考図書】