今回のテーマは、
おもしろい「薬の飲み合わせ」です。
ワルファリンカリウム(商品名:ワーファリンほか)は、
血液のうっ滞や凝固系の関与が強い静脈血栓に対して非常に有効な薬です。
また、凝血塊の発育・成長による塞栓症の再発防止を目的に、
冠動脈疾患(心筋梗塞、狭心症など)や末梢動脈塞栓症、
脳動脈塞栓症に対しても幅広く用いられています。
ただこの薬には大きな欠点があるのです。
飲まれている方はご存じと思いますが、
ワルファリンは体内のビタミンKの作用を抑えることにより効果を発揮する薬です。
つまり、ビタミンKを含む食品を食べると効果が弱まるのです。
具体的には納豆(納豆菌がビタミンKを産生する)や
クロレラ、青汁、多量の青物などは控えるように指導されます。
このようなワルファリンの特性を補うために併用されるのが、
ブコローム(商品名:パラミヂン)です。
もともとこの薬は、尿酸排泄促進作用をもったNSAIDs
(非ステロイド性抗炎症薬)で高尿酸血症(痛風)に適応のある薬です。
一方で、ワルファリンと併用すると、
ワルファリンの血中濃度を高めることが臨床的に知られています。
ある報告では、
ワルファリンと併用することで、
その使用量を平均3.5mgから1.3mgに減少させたとのことです。
つまり、ブコロームを併用することで、
ワルファリンの投与量を少なくし、
かつ安定した血中濃度を保つことができるということです。
では、なぜこのようなことが起きるのでしょうか?
※このあたりは医療関係者向けのお話になりますが^^;
以前の仮説は、血液中において
高い蛋白結合能を持つブコロームが、
ワルファリンのアルブミンへの結合を競合的に阻害し、
遊離型ワルファリンが増加するからというものでした。
しかし近年では、肝薬物代謝酵素チトクローム
CYP2C9に対するブコロームによる競合阻害
が主な要因となっているのではないかとされています。
どちらか100%というわけではなくて、
体内では様々な相互作用が総合的に
合わさって最終的な薬効をもたらしているのです。
以上、
本来なら「飲み合わせ」の悪いものをうまく利用することで、
薬の飲む量を減らすことができるようになる!
という興味深いテーマでした。
今後も「薬の飲み合わせ」
(専門的には「薬物間相互作用」)
についてご紹介していきたいと思います。
コメント
パラミジンはバルビタール誘導体であり、アセトアミノフェンもそうなようにNSAIDに分類してはいけません。中にはNSAIDと書いている記事も見かけますが薬理学的に齟齬を生じると思います。またワーファリンの効果増強剤として一時流行したことがあるけれどワーファリンの効果に影響を与える複雑な因子にさらに一石を投じることにおいて患者さんへの安全性が担保されにくくなると思います。ワーファリン単剤でコントロールすべきでそれが無理なほど肝臓の薬物代謝酵素(CYP2C9)活性の遺伝子多型が人並み外れて活性方向に変異している患者さんにはワーファリンの代わりにDOACを使用すべきだと思います。2014年の記事ですか、この年代ならこの記事はやはり不適切です。