「この薬は乳児(胎児)に影響はないの?」という質問に答えるには?

adult-18604_640

妊娠と薬と関係については、
ほとんどの薬剤師が大学過程では
詳しく学んでいないのが現状です。

なぜかということを考えると、
学問として学ぶには不確定要素が多く、
体系化するのが難しいではないでしょうか?

催奇形性や胎児の発育に対する影響
など簡単な法則みたいなものはないのです。

しかしながら、実際にこのテーマは
すごく深刻で悩みが深いものです。

今回は、基本的な考え方と対策について
まとめてみました。

「胎盤は鉄壁ではない」

妊婦が睡眠薬や胃腸薬として
使用したサリドマイドが原因で奇形児を
出生した「サリドマイド事件」は最も有名な薬害事件でしょう。

それまでは、「母体と胎児を繋ぐ胎盤は
鉄壁の障壁であり、母親が飲んだ薬の影響は
胎児には及ばない」と考えられていました。

しかし、専門家の間ではキニーネやアミノプテリン
が奇形を起こすことが知られており、サリドマイド事件
をきっかけにして、一般にも認知されるようになりました。

薬の量によって違いはありますが、基本的には、
ほとんどすべての薬は胎児に移行すると考えたほうがよいです。
時期によってその影響は異なります。
詳しく解説した記事は、
https://next-pharmacist.net/archives/990

といっても、何か指標となるものはないのでしょうか?
これまでに様々な動物実験や臨床知見から
各国でガイドラインがつくられています。

「妊娠しているのですが、この薬は服用して大丈夫ですか?」
という質問を受けて、どう判断するかといえば、
添付文書やガイドラインを参考にするしかありません。

国内で最も身近な参考資料としては
やはり医薬品の「添付文書」です。

「妊婦、産婦、授乳婦への投与」
という項目がこれに当たります。

「投与しないこと」
⇒妊婦や妊娠を希望する女性に対して「禁忌」を意味する。

「投与しないことが望ましい」
⇒「原則禁忌」を意味する。

「治療上の有益性が危険性を上回る場合にのみ投与すること」
⇒「投与してはいけない」のではなく、「投与できる」と考えてよい。

「妊婦、産婦、授乳婦への投与の記載がない」
⇒ほぼ安全である。

こう整理すると、抗てんかん薬など以外には、
「投与禁忌」の薬は意外に少ないのです。

他にも、FDAやオーストラリア医薬品評価委員会
などガイドラインは多数あるため、比較しながら
各々の薬剤について検討するしかありません。

参考リンク:おくすり110番「妊娠と薬」

母乳中に移行しやすい薬とは?

ある調査では、「授乳時に服薬に不安あり」
と答えた授乳婦は69.2%で、大多数の方が
「薬が母乳に移行し、乳児へ影響しないか」
という不安を抱えているという結果がでました。

当然といえば当然ですが、
多くの人が気になっている、もしくは
知りたいと思っているテーマということですね。

薬剤師として、思考の指標となる
薬の性質についてまとめていきます。

<母乳中に移行しやすい薬の特徴>

・脂溶性が高い
⇒脂肪滴に溶け込んで母乳中に移行しやすい。

・分子量が小さい
⇒分子量200以下の水溶性薬物は細胞膜細孔を通過するが、逆にヘパリン、インスリン、インターフェロンなどの巨大分子は母乳中に移行しにくい。

・血清蛋白結合率が低い
⇒母乳中に移行する薬は血中で蛋白に結合していない遊離型の薬物のみ。
よって、蛋白結合率が低い薬ほど母乳中に移行しやすい。

・生物学的利用率が高い
⇒母体内への吸収率が悪い薬剤は当然母乳への移行率も低くなる。

・半減期が長い
⇒半減期が長いほど、母体血液中に滞留するため母乳への移行量は多くなる。
また、乳児での半減期は成人よりも長いことが多く、母親が半減期の長い薬を長期に使うと、乳児の血中濃度がどんどん上がってしまう可能性がある。

・pKa(薬物解離定数)
イオン化されていない薬は母乳中に移行しやすい。
pKaが7.4より小さい弱塩基性の薬は母乳中によく移行する。
※母体血漿pH7.4、母乳pH6.8

・分布容積(Vd)が大きい
分布容積とはその薬が体内でどのくらい広く分散しているかを示す指標。
分布容積の大きい薬(1~20L/kg)は分布容積の小さい薬(0.1L/kg)よりも母乳中によく移行する。
※分布容積について詳しく知りたい方は、
https://next-pharmacist.net/archives/1166

このようにある程度は理論的に、
乳児に影響を与えやすい薬は予測することができます。

例えば。。。

抗アレルギー薬であれば次のものが候補になります。

・プランルカスト水和物(商品名:オノン)
⇒蛋白結合率が99%以上と高い

・ロラタジン(商品名:クラリチン)
⇒母乳乳への48時間の移行率が0.03%と低い

・セチリジン塩酸塩(商品名:ジルテック)
蛋白結合率92%と高く、分布容積が比較的大きい

鎮痛薬では、蛋白結合率の高い
・ジクロフェナク(ボルタレン)
・イブプロフェン(ブルフェン)
・ロキソプロフェン(ロキソニン)
は母乳中への移行が少ない薬です。

こういった物性は添付文書やIFで調べることは可能です。
基本的な理論を把握していれば、大まかな結果を予測することはできます。

以上、薬剤師の視点から表題のテーマについて
まとめてみました。少しでもお役に立てると幸いです!

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク