動脈管収縮とは?「モーラス、妊婦で禁忌に!」

妊娠後期の女性に対するケトプロフェン外皮用薬(商品名モーラス他)の使用について、厚生労働省は3月25日に添付文書の変更を指示。テープ剤は従前の「慎重投与」から「禁忌」に、パップ剤やゲル剤などテープ剤以外の外皮用薬でも新たに禁忌となった。

ケトプロフェンのテープ剤を使用した妊娠後期の女性の胎児において、死産につながる恐れのある動脈管収縮の発生が過去3年で2例確認されたため。

インドメタシンなどケトプロフェン以外の非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)外皮用薬にも、妊婦などへの投与に関して、類薬で妊娠後期女性の胎児に動脈管収縮が起きた旨が追記された。

シップなら安全・・・

外用剤にも全身性の作用がある、
ということが一般的には
まだまだ知られていません。

「家族にも使っているよ!」

「近所の人にあげているよ!」

このように平気でお話される
患者さん、結構いらっしゃいます。

確かに、確率的には
かなり低いわけですが、
シップでも薬は薬、ということを知っておく必要はありますね。

今回の禁忌になった理由としては、
「胎児の動脈管収縮」による死産リスク
ということです。

これは、NSAIDsの内服でも
起こるといわれていた副作用で、
ついに”シップ”でも正式に禁忌ということになりました。

動脈管と卵円孔は正常胎児循環に必要不可欠の存在である.右室から拍出された血液の大半は動脈管を経由して下行大動脈に短絡する.胎児動脈管の早期収縮は右室の後負荷を急速に増大し,右室圧上昇,右室収縮不全,三尖弁逆流を招く.卵円孔での右左短絡は増加し,肺血流増加による左房への肺静脈還流増大と相まって左室容量負荷を増大する.また未熟な胎児肺動脈への圧負荷と容量負荷は肺動脈中膜肥厚を招き,出生後の肺血管抵抗低下を阻害して新生児肺高血圧の原因となる。

動脈管収縮って
結構イメージしづらいんですよね。

なので、
簡単にちょっと説明してみます。

まず、胎児に肺呼吸は必要ありません。
つまり、肺に血液を送る必要がないのです。

そこで、右心室からでた血液は、
そのまま大動脈に入って全身に送られます。

で、この右心室⇒大動脈をつなぐのが、
「動脈管」っていうものです。

ここで、妊娠後期で
NSAIDsを使うとどうなるか?

動脈管を広げるのには、
プロスタグランジン(PG)
が主にその役割を担っています。

NSIADsはPGの合成を
阻害する薬なので、
動脈管を広げるPGが減少します。

よって動脈管が閉じてしまうのです。

閉じるとどうなるのか?

いままで道路が2つあったのに、
一方は閉じてしまったのです。

当然ですが、
右室に負担がかかります。
細い道から肺に血液を送らなくてはいけません。

一方で、肺に送られた血液は、
一周まわって、左心房にもどって
左心室に入ってきます。

明らかに多くの血液が
心臓に溜まるようになります。

つまり、心臓全体の負荷が
尋常じゃなく増えるっていうことです。

上の引用で書いてあるように、
本来使われない未熟な肺動脈は
どんどん厚くなってしまいます。
(=狭く、硬くなっていく。)

そうすると、肺動脈圧の上昇
を招き「肺高血圧」という病態にも
つながってくるのですね。

なにげなく使ったシップで
胎児に影響がでているとしたら。。。

「たかがシップ、されどシップ」
周知する必要がありますよね。
以上、簡単ではありますが。では!

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