GFRとCCr(クレアチニンクリアランス)の違いとは?

前回の記事では、GFRの考え方と測定方法について説明しました。

「GFR(糸球体濾過量)」は腎臓の濾過能力そのものを表わしていて、「イヌリンクリアランス」=GFRということでした。

そして、さらに簡便に算出するため、血清クレアチニン値(Cr)を使ったeGFRが考えられたという話でしたね。

今回は、最近の主流であり、もう一つの腎機能の指標である「クレアチニンクリアランス(CCr)」について説明していきます。

クレアチニンクリアランスとは?

クレアチニンとは、筋肉でのエネルギーの供給源であるクレアチンリン酸の代謝産物です。

つまり、「筋肉が多い人はクレアチニンのつくられる量も多い」ということを念頭においておく必要があります。

クレアチニンクリアランスはその名の通り、クレアチニンという物質に注目して、その排泄能力を腎機能として評価したものです。

eGFRも血清クレアチニン値を使っていましたが、それならば、クレアチンクリアランスをそのまま腎機能の基準として用いればいいよね、という発想です。

CCrは、24時間の蓄尿により”実測値”として求めることもできますが、eGFRと同様に血清クレアチニン値から推算できます。

これを「eCCr(推算CCr)」といい、有名なCockcroft-Gault式【CG式】を用いて推算することができます。

Cockcroft-Gault式

CG

この式から、Cr値が大きくなればeCCrは小さくなる、つまり腎機能は低下していることになります。

また、この式には「体重」が含まれています。一般的に体重は筋肉量を反映していますが、体重が重いから筋肉があるとは一概には言えませんよね。

脂肪が多くて体重が重くなっているケース、いわゆる「肥満体型」はどうでしょう?筋肉が多いわけではないので血清クレアチニンは低い値、かつ、体重は大きな値になります。

これを式に当てはめていくと、分母は小さく、分子は大きくなってeCCrは高めにでてしまいます。

例えば、筋肉量が同じ50kgと100kgの人物がいた場合、CG式では単純に100kgの方が2倍のeCCrとなってしまいます。

筋肉の少ない人は注意!

また、一般に筋肉量は男性で多いのに対し、「女性」「高齢者」「小児」では少ないため注意しなければなりません。

寝たきりの高齢者などでは、腎機能が落ちていても、クレアチニンの産生量が少ないのでeCCrが高めに算出されてしまいます。

一般に、平均的な筋肉量をもち、通常の日常生活を送っていれば、Cr値は0.6mg/dL程度はあるといわれています。

もし、Cr値が0.4など低値だった場合、eGFRの推算式やCG式にそのまま代入すると、腎機能を過大評価してしまう場合があります。

ですので、そういった患者の場合には、筋肉量が少ないと判断して、Cr=0.6を使用すると実測値に近い値となることが多いです。

Cr値が通常よりもやけに低いときには、eCCrを計算する際には注意しましょう。

「GFR」と「CCr」の関係は?

では、次にGFRとCCrの関係について簡単に説明していきます。

GFRの測定に使う「イヌリン」は尿細管において分泌や再吸収などは受けません。一方で、「クレアチニン」は尿細管から分泌されます。

どういうことかというと、クレアチニンは糸球体濾過された後、さらに尿中に分泌されるので、その分だけ「クリアランスは大きくなる」ということです。

一般に、同じ患者でもCCrはGFRよりも高くなり、だいたい約30%程度高くなると言われています。

そういった理由から互いの換算式は、

・GFR=実測CCr × 0.715

・GFR=eCCr × 0.789

といった式が使われています。

添付文書やガイドラインなどでは、CG式に基づくeCCrで検討されていることが多いので、必要に応じて換算して使います。

注意点

eGFRは体表面積で補正する必要がありましたが、eCCrはその必要がありません。

一方で、CCrは体重により大きく変動するため、肥満患者などの場合には注意が必要でしたね。

eGFRやeCCrはどちらもCr値を使って計算しますので、「筋肉量」に影響を受けます。患者の状態・体格を見極める必要があります。

「e」=推算値は目安ですから、

・イヌリンクリアランスを使った実測GFR

・24時間蓄尿による実測CCr

これらが、本来の腎機能を示します。

推算式を盲目的に使用して、その値が”実際の腎機能”だと評価してしまうと、治療に影響することもあるので注意が大切です。

それぞれの検査値の測定方法、算出方法、特徴をしっかりと理解した上で使用していきましょう。

以上、GFRとCCrの関係についてお話をしました。参考になれば幸いです!

参考:PharmaTribune.2013.11

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