今回は検査値のみかた、
特に「肝機能に関する検査値」
についてまとめていきたいと思います。
「肝臓」はエネルギーの貯蔵、
蛋白・脂質の合成、有害物質の
解毒といった重要な役割を担っています。
肝機能のモニタリングは薬の副作用
を早期に発見する上で重要です。
服用中に定期的な肝機能検査が
義務付けられている薬剤も少なくない
ため、その検査値のみかたは大切です。
今回は、その中でも特に重要なもの、
AST、ALT、γGTP、ALP、ビリルビン
について解説していきます。
◆ASTとALTとは?
AST
=アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ
ALT
=アラニンアミノトランスフェラーゼ
これらはもともとGOT(グルタミン酸
オキサロ酢酸トランスアミナーゼ)、
GPT(グルタミン酸ピルビン酸トランス
アミナーゼ)と呼ばれていました。
最近は、名称が国際的に標準化され
それぞれAST、ALTと呼ばれるように
なりました。
よって、AST=GOT、ALT=GPTなので
異なるものだと勘違いしないようにしましょう。
AST、ALTはその名の通り、
「アミノ酸代謝」に関わる酵素です。
ASTは心臓>肝臓>骨格筋>腎臓
の順に多く存在しています。
ALTは主に肝臓に存在しています。
健康な状態では、いずれも血清中に
0~30IU/L存在します。
(基準は施設により若干異なります)
血清中と比較して、
ASTは心臓や肝臓に1万倍、
ALTは肝臓に2000倍存在しています。
そのため、肝障害、胆道閉塞、
筋疾患、心筋梗塞などが生じると、
肝臓や心臓の細胞が障害されることで、
細胞内からこれらの酵素が溢れてきます。
これを酵素の「逸脱(いつだつ)」
と呼び、AST・ALTの血清濃度が
上昇することになります。
ASTとALTは同時に測定されること
が多く、両者の比(AST/ALT)に着目
することも重要です。
肝細胞の壊死が急速に進んでいる間は、
絶対量の多いASTの上昇が優位になります。
つまり急性肝炎などではASTが急激に上昇します。
一方、ASTはALTより半減期が短いため、
非活動期の慢性肝炎などではALTが
優位となります。
覚え方としては、
AST⇒Sでshort!!
ALT⇒Lでlong!とかでしょうか?
しょうもないゴロなのでスルーを(笑
ちなみに。。。
AST・ALTは「肝障害のマーカー」
であって、肝臓の機能そのものをみる
ものではないことに注意しましょう!
つまり、低いから肝機能が高いとか
高いから肝機能が悪いとかは、
単純に言うことができないということです。
◆γGTPとは?
γGTP(γグルタミルトランスペプチダーゼ)
は、肝細胞や胆管細胞に存在する
酵素です。
ASTやALTと同様、細胞障害により
逸脱しますが、アルコールや精神安定剤
によっても誘導されるのが特徴です。
過度の習慣飲酒、アルコール性
の肝障害、γGTP誘導作用をもつ
フェニトインやカルバマゼピンを
服用している患者でも高値を示します。
基準値は男性50I/L以下、
女性30IU以下とされています。
γGTPは胆道閉塞への特異性
が高いことが特徴で、AST、ALT、
ALPが正常でもγGTPが異常高値を示すこともあります。
◆ALPとは?
ALP(アルカリホスファターゼ)は、
アルカリ条件下でリン酸モノエステル
を加水分解する酵素です。
リン酸といったらATPやリン脂質
など身体のどこにでも存在するので、
この酵素も全身に広く分布します。
特に、骨、小腸粘膜、肝臓、
胎盤に多く含まれています。
ALPが上昇するということは、
これら組織の細胞が障害されている
ことを意味します。
つまり、病態としては、
急性・慢性肝疾患や胆汁うっ滞、
妊娠や転移性骨腫瘍などで上昇します。
ALPには複数のアイソザイムが
存在していて、その中でも薬剤性の
肝障害ではALP2(肝型)が上昇します。
ALPの基準値は測定法により
かなり幅がありますが、
だいたい300IU/L程度が上限とされています。
◆ビリルビンとは?
ビリルビンは古くなった赤血球が
破壊された際に生成する黄色の
色素の一種です。
体内のビリルビンは2種類存在
していて、「抱合型」と「非抱合型」に
分けられます。
血中ではアルブミンと結合した
非抱合型ビリルビンとして存在します。
これを「間接ビリルビン」といいます。
非抱合型ビリルビンは肝臓で
グルクロン酸抱合を受けて、
抱合型ビリルビンとなり、胆汁中に排泄されます。
これを「直接ビリルビン」といいます。
これら2つを合わせて「総ビリルビン」
と呼び、基準値は0.2~1.2mg/dLです。
それぞれ分けて考えると、
間接ビリルビン:0.1~0.8mg/dL
直接ビリルビン:0.4mg/dL以下
とされています。
例えば、赤血球が異常に破壊される
溶血性貧血では、総ビリルビン
および間接ビリルビンが高値となります。
一方、胆汁うっ滞などの肝胆道疾患
では、直接ビリルビンが胆汁中に
排泄されなくなるので総ビリルビンと
直接ビリルビンが高値となります。
結構、この「直接」と「間接」の違い
がごちゃごちゃになったりするのですが、
以下の説明が分かりやすいです。
血清ビリルビンの測定法は1916年にvan den Berghが報告したジアゾ法から始まります。彼は 閉塞性黄疸患者の血清ビリルビンには、ジアゾ試薬に対して異なった反応をする 2種類の色素があることに気付きました。ジアゾ試薬に直接反応する可溶性色素が直接型ビリルビン、直接には反応せず可溶化を必要とするビリルビンを間接型ビリルビンと呼びました。後に直接型は肝臓でグルクロン酸抱合したビリルビン(抱合ビリルビン)であり、間接型はグルクロン酸抱合していないビリルビン(非抱合ビリルビン)とわかりました。
以上、ざっくりではありますが、
肝機能の状態を把握するのに
使われる検査値についてまとめました。
結構、検査値ってぼや~っと
覚えていることが多いかもしれませんが、
血液検査だけで病態を予想できるってすごいですよね。
薬剤性の肝障害は、ほぼ全領域の薬で
起こりうるものなので、兆候をキャッチ
する手段としても有用になります。
一般の方でもなんとなくでもいい
ので知っておくと、自分の身体の
状態を把握できるようになると思います。
以上、今回の記事はこの辺で!
では!
コメント
ASTとALTとALPの血液検査で基準値なら肩腫瘍の可能性はないか?