こんにちは。
今回は、薬物動態学の分野である「定常状態」に関する質問をいただいたので、回答していきたいと思います。
アムロジピンの1日2回投与についての話題ですので、興味をお持ちの方はさらっと読んでいただければ嬉しいです^^
では、早速内容に入ります。
今回の質問
いつも興味深く拝見しております。
薬物動態の定常状態と用量用法についての質問です。
半減期の長い薬が定常状態に達した時、
例えば、
人は寝る前にも追加して服用されています。
そこで質問です。
定常状態に達する薬剤は薬の用量を増やせばその分、
但し、
つまり、
私の回答
質問ありがとうございます。
これは、実際の現場でも皆さん気になっている話題かと思います。
添付文書では1日1回となっているのに、医師が1日2回で処方してきている。
これは、いわゆる「疑義照会」の対象となりますが、実際にはこのまま服用してもらうことが多いケースでもあります。
とくにCa拮抗薬のニフェジピン製剤、アムロジピン、ARBなどでも、こういった使用法は一般的になっています。
で、今回の質問は、薬物動態的に考えたとき、これら1日1回服用となっている薬を1日2回で服用するとどういう状況になるのか?ということです。
まず、定常状態のイメージをもう一度確認しましょう。
aoitori-center.com
定常状態といっても、大きくわけて2種類あると思っていて、この図における実線と破線のグラフです。
実線が「持続点滴」といって、同じ速度で一定の薬液を血管内に注入していくケースで、これは病院内の場合が多いですよね。
破線のイメージとしては「内服薬」で、1日何回とか間欠的に薬を体内に入れる場合です。
つまり、普通の錠剤を飲む場合には、破線のイメージで薬の血中濃度っていうのは推移しているわけですね。
で、1日1回と1日3回の薬を比べたときには次のようにグラフが変わります。
http://vdijmeu.blog61.fc2.com/
1日に分けて飲めば飲むほど、この山が細かくなって、さらに上下幅が小さくなります。
そして、特別な理由がないのであれば、この幅が小さいほうが効果が安定し、副作用のリスクも少なくなると考えられます。
(おもしろいのは、敢えてこの上下幅を利用して、必要なときに効果が出して、必要でないときは血中濃度を抑えるという方法もあります。睡眠薬は一番イメージしやすいですかね。)
この用法による血中濃度推移の差は、半減期が短い薬であればあるほど顕著な差がでてきます。
では、今回の質問にあった半減期の長い薬についてはどうなのか?
アムロジピンについては、Tmaxが8時間、半減期が36時間という薬です。(改めて考えてもこいつはガチの優等生ですだよね・・・。)
簡単にいえば、個人差はありますが、飲んでから丸一日たっても70%以上は効果が残っているという印象ですかね。
そして血中濃度も徐々に上がっていくわけですから、これはもう定常状態に達したら、グラフの波はかなり小さくなっているんじゃないでしょうか?
とすればですよ。治療上は1日1回でまったく問題ないと思います。
実際、こんな研究もあったようなので参考までに。
1日1回でも2回でも、効果も副作用の頻度も変わりないっていうことだそうです。
あとは、もう医師の好みということになるでしょうね。
確かに1日1回でまとめて10mg飲むよりは、1日2回に分けて5㎎を飲んだほうが山の幅はより小さくなるのは間違いないですからね。(ただ飲み忘れたら元も子もない!)
アムロジピンに関しては、元々の動態が優秀すぎるのでそれを狙う必要があるか?といわれれば、個人的にはないと思いますけど・・・。
このあたりは答えがある問題ではないので、ひとつの意見として聞いてもらえれば。
ただ、アダラートCR(ニフェジピンCR)の分2になると、全く話が異なります!
これなんて2峰性のグラフ描きますから、1日2回服用したらそれはもう複雑なことになってるはずです。なおかつ半減期も数時間なんで、考えごたえありますよ(笑)超ド級のMな方は計算してみてください^^;
こっちのCR錠に関しては、1日2回の方が血圧が安定するって話もあるので、1日2回服用は個人的にはありなのかなと思っています。
とりあえず長くなるので、この辺にしますね。
最後までお読みいただきありがとうございました!
では、また!
P.S.
メッセージや質問いただけるのは大変嬉しいです!
ただ、回答が遅くなったり、こうやってシェアさせていただくことがあるのでご了承くださいm(_ _)m
コメント
早々の回答ありがとうございます。(^_^)
確かにニフェジピンCRは分2で処方されるケースが多く疑義照会をしても却下される場合が多いです。医師は解っていても自分の感覚や患者の要求で処方する様に思います。
ただ、薬物動態学は薬剤師の聖域でもあるので思わぬ副作用が出ない様しっかり伝えていくべきだと思います。
追伸
時間薬理学にも興味があるので何か面白い話題等あればアップしてもらうと嬉しいです(*^_^*)
コメントありがとうございます^^
そうですね。頭では分かっていても、分2の方がうまく効く気がするというのは感覚的にあるかもしれませんね。
もちろん医師の皆さんも勉強されているとは思うのですが、基礎知識という面では理解が難しいケースもあるかもしれません。
薬剤師が積極的にアプローチしてもいいかもですね!
時間薬理学おもしろいですよね。
薬動は個人差が大きいこともあり、なかなか現場でフル活用が難しいのが現状ですが、興味深い分野のひとつですね^^