【副作用学講座Vol.16】降圧薬で”悪い夢”をみる!?

akumu

それでは、第16回です。
今回はβ遮断薬による”悪夢”、
中枢性副作用について学んでいきましょう。

β遮断薬は主に心臓で働く薬
というイメージがあるので、
中枢性副作用は見過ごされがちかもしれません。

メトプロロールの副作用を例にすると、
徐脈、めまい・ふらつき、倦怠感、
頭痛、肝障害、TG上昇などが主なものです。

実はそれ以外にも、睡眠障害、悪夢、
うつ傾向、幻覚など中枢性の副作用も
報告されているので注意が必要です。

”中枢性”というからには、
その原因であるβ遮断薬が
中枢の血液脳関門を通過する必要があります。

なので一般的には、”脂溶性”が高い
ものほど脳内薬物濃度が高くなり、
発現頻度が高くなると言われています。

しかし、近年の研究で明らかになっている
ように、脳への移行は単純拡散だけでなく
P糖タンパクやトランスポーターなど様々な
機構により制御されています。

その証拠に水溶性のアテノロールにも
悪夢の副作用があります。
あくまで脂溶性は「指標」ということです。

ただ脂溶性と頻度は、
相関傾向にあるので、
脂溶性の高いものはおさえておいて損はありません。

◆脂溶性:高い◆
☆プロプラノロール(商:インデラル)
☆ベタキソロール(商:ケルロング)
☆カルベシロール(商:アーチスト)
☆ラベタロール(商:トランデート)

◆脂溶性:中間◆
☆ピンドロール(商:カルビスケン)
☆ビソプロロール(商:メインテート)
☆メトプロロール(商:セロケン)
☆アロチノロール(商:アルマール)
☆アモスラロール(商:ローガン)

β遮断薬は高血圧だけでなく
心不全、不整脈などでも使用頻度は
多くなってきているので注意ですね。

また、β遮断薬を服用しはじめて、
「だるい」などの倦怠感を訴える場合は、
急激な血圧低下が起きていないか確認します。

もし、血圧低下が著しくない場合は、
そのだるさは中枢性のものかもしれません。
同時に「悪い夢」をみていないか等も確認しましょう。

また、β遮断薬による中枢性副作用を
病気や高齢によるものとあきらめている
ケースもあるようです。

特に高齢者では、睡眠薬やβ遮断薬
による副作用を認知症などの症状と
誤解していることがあるので注意が必要です!

もしも、こういった中枢性副作用により
継続が難しいと判断された場合は、
Ca拮抗薬、ARB、ACEI、水溶性β遮断薬
などへの変更も考慮することもあります。

β遮断薬の中枢性副作用は、
服用中止により脳内濃度が下がれば
回復するケースが多いので、確認しておきましょう。

血圧の薬を飲んで、
「悪い夢」にうなされ、日中もだるい。。。
なんてもうやるせないですよね。

リスクとベネフィットは常に
頭に中で整理しておく必要があるな
と感じますよね。

以上、有名といえば有名だけど、
ふと忘れやすいかなというテーマについて説明しました。
では、ありがとうございました!

<マニア知識>

β遮断薬が中枢性副作用を起こす
メカニズムとして考えられている説。

①セロトニン受容体を遮断する。

②非特異的な膜安定化作用をして、神経伝達異常を起こす。

③脳内のβ受容体を部分的に刺激する。

④末梢のβ受容体遮断作用が自律神経系を介する中枢への反射機構に影響を与える。

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コメント

  1. passwordsan より:

    海外での臨床研究の結果の論文を知りたい。