こんにちは。
おもしろいトピックなので、
シェアしたいと思います。
降圧薬で「咳」といったら、
すぐに想像するのはACE阻害薬です。
このメカニズムは次のとおりです。
ACE阻害薬によってブラジキニンの不活性化が阻害され、ブラジキニンが神経線維のC繊維を刺激して、サブスタンスPなどの咳誘発物質を遊離するため。
神経繊維については、
http://kanri.nkdesk.com/hifuka/sinkei16.phpを参考に!
で、本題です。
Ca拮抗薬で咳が起こる、
とはどういうことなのか?
これは、薬理作用からくる副作用です。
Ca拮抗薬の作用は、
「平滑筋の収縮を抑制する」というものです。
なにも「血管だけ」とは言っていないのです。
もちろん選択性はある程度あるとは思いますが、
平滑筋は血管平滑筋だけではありません。
今回、問題となるのが、
下部食道括約筋(LES)という
平滑筋です。これ↓
吉岡病院HPより引用
Ca拮抗薬は、このLESの収縮も抑制し、
その筋肉の圧力(LES圧)を低下させる
作用があります。
そうすると、胃酸の逆流が起こります。
胃酸が逆流すると、どうなるでしょう?
もちろん逆流性食道炎などの
症状に加えて、咳を引き起こす原因になります。
慢性の咳の3大要因をご存じでしょうか?
・咳喘息
・後鼻漏
・胃食道逆流症(GERD)
となっています。
Ca拮抗薬は、このうちの
胃食道逆流症の原因となりうる
ということなのです。
胃食道逆流症による咳のメカニズムは、
・胃酸が下部食道の迷走神経受容体を刺激し、反射的に下気道に刺激が伝わる機序
・逆流した胃内要物が咽喉頭に到達し、下気道を直接刺激する機序
などが考えられています。
もし、Ca拮抗薬による胃食道逆流症と咳が現れたら?
・ARBなどへの降圧薬の変更
・食道症状の改善のため、PPIなどを一時的に使用する。
(食道症状は数日で改善することが多いが、咳症状は2~3か月を要することもある)
・胃食道逆流症を悪化させる要因(前かがみの姿勢、過食)に注意する
こういった対策があげられます。
以上、簡単ではありますが、
Ca拮抗薬で起こる咳について説明しました。
<今日のつぶやき>
このテーマはすごくおもしろいなと思います。
薬理学というと、主作用の部分に
注目することが多いですよね?
でも、実際はそんなことはなくて
薬が全身をまわっている以上、
他の部分にも確実に作用しているはずなのです。
このケースでは、
Ca拮抗薬が血管平滑筋ではなく、
食道の平滑筋に作用していたわけです。
この作用を知っていて、
Ca拮抗薬の変更が可能であれば、
咳が回避できたわけです。
こういった視点がなければ、
メジコンやらPPIやらをずっと処方し続けて
患者は飲み続けるようになるかもしれません。
最悪、喘息かも?なんてことになり
吸入薬を追加されるかもしれません。
もし今回の内容を知っていたら、
2種類以上の薬を増やさずに済むかもしれません。
これってすごいことだな、と思うのですがどうでしょう?
こういう視点を
薬剤師は提供すべきなんだろうなと思います。
物事はいつも多角的な視点にて観察する
以上、ありがとうございました。
ではまた!
コメント
いつも勉強になっております
更新ありがとうございます!!
>えく さんへ
こちらこそ
嬉しいお言葉をいただきありがとうございます^^
ほんの微力ですが、お役に立てておりましたら幸いです!
お久しぶりに来ました。猫好きです。
いよいよ実習に向かうことになり、少しずつですが、臨床に行く上での最低限の知識を
持って帰るために寄らせていただきました。
今回のテーマについては、処方解析学で胃食道逆流症が、降圧剤(特に、カルシウムイオン拮抗薬)で起こる原因について調査のため覗かせていただきました。
薬理学的な考えをこちらから提示するならば、平滑筋の収縮を抑制→弛緩することにより、LES圧が低下して、このような症状が出てしまうということになるということで、
よろしいでしょうか。
勉強していくうえで、大事なのは関連づけて理解して覚えることであると思います。
今後も、実習で、全体的に見ていくことができるように頑張っていきたいです。