傷寒論で「桂枝湯」の使い方を学んでみよう!

keisitou

今回のテーマはズバリ漢方です!

漢方って学校ではほとんど習わないので、卒業してから自分で勉強するしかないんですよね・・・。

漢方をちょっと詳しくやってみたいなっていう方は結構いると思いますが、「病名=処方名」で終わっちゃっている人も結構いると思うんですよね(自分でもギクッ)。

ということで、今回は漢方のバイブルといわれる「傷寒論」を使って桂枝湯について学んでいきます。

たぶんこれ以上分かりやすく書かれているところはない!って、僕のモチベーション維持のために勝手にハードル上げておきます(笑

漢方をこの機会に少し詳しく学びたいっていう勉強熱心な方はぜひ読んでもらえれば嬉しいです。

では、前置きは長くならないようにして、早速内容に入っていきます(笑

桂枝湯の証をイメージしてみよう!

まず「桂枝湯」って言われてピンときますでしょうか?

葛根湯なんかに比べるとあんまりメジャーではないかもしれませんが、傷寒論では冒頭で紹介されている超~基本となる処方なんです。

なので、桂枝湯を「衆方の祖」(たくさんの処方の基になる処方)ともよばれています。

桂枝湯を基本処方として、葛根と麻黄を加えたものが葛根湯なので、実はすごく大事な処方です。

では、具体的に桂枝湯の「証」の解説に入っていきます!

太陽中風証

まず傷寒論に、桂枝湯は「太陽中風証」の治療に使われると書かれています。

はっ!?

早速、謎の言葉「太陽中風証」がでてきました。今回は、こういうのを一個一個確認していきます!覚悟しておいてください(笑

「太陽病」のイメージ

まず「太陽」というのは太陽病のことを指していて、太陽病というのは、「風寒の邪」が「足太陽膀胱経脈」に侵入した段階です。ハイ、意味わからん。

(ホントに冗談抜きで、漢方の本読むとこんな専門用語続出で、訳ワカメのオンパレードなんですよ!)

風寒は、そのまま「風」と「寒さ」のイメージ。気温が低くて、冷たい風が吹いているときに外にいたら風邪を引きますよね?そんなイメージで^^

ハイ、次は足太陽膀胱経脈。これは「経絡(けいらく)」という、これまた東洋医学独特の概念で、血とか気が通る大事な通路のことです。鍼灸師とかツボマッサージなんかやる人はすごく詳しいはずです。

とりあえずいきなり全部ではなくて、一個一個いきましょう(笑

足太陽膀胱経脈の図はこちら↓
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眉間から始まって、首、肩、背骨、腰にいって、枝分かれして腎・膀胱と足に行く方に分かれているのが分かります。(こういう経絡が十何か所あるらしい。)

膀胱は西洋医学の概念とある程度は共通していて、「水を溜める」という役割をもっています。東洋医学では単なる水ではなく「津液」といって、血液以外の体内にある水分をイメージしてもらえればいいです。

で、膀胱に溜められた津液が「腎」(これはいわゆる「腎臓」とイコールではないので注意!)の働きによって気化されて(空気じゃなくて体の「気」)、「太陽の気」になります。

(この辺は、そういうもんなんだーって、とりあえず受け入れるようにしてください)

「衛気」 VS 「風寒の邪」

その太陽の気が体の表面をめぐって皮膚を温め、汗腺の開閉を調節する「衛気」というエネルギーになって体の表面をめぐります。これが健康な状態を保てているときですね。

ですが、ある時「風寒の邪」が何かをきっかけに身体に侵入してきたとします。侵入するときには、いきなり中に入り込むんではなくて体表部に入ってきます。

そこで待ち構えているのが「衛気=防衛軍(太陽の気)」です。風寒の邪と衛気との戦いが勃発するのです。ちょうど、この戦いが勃発しはじめた時期を「太陽病」っていいいます。

ここで、もう一つ漢方に特徴的な概念があって、「表」とか「裏」ってありますよね?簡単なイメージとしては、「表」は皮膚に近い体の表面部分、「裏」は内臓部分ととらえてもらっていいと思います。

じゃあ、上のように外部から邪が入ってきて、体の表面で戦っている状態はどっちか?といえば「表」ですから「表症」になるわけですね。

厳密には、太陽病にも種類があって「裏証」もあるんですが、いわゆる一般的な風邪は「太陽表証」なので、そんな感じで覚えておいてもらえれば!

「太陽病」の具体的な症状

ずいぶん概念的なお話が続いたので、ちょっと臨床的な話をしていきたいと思います。

じゃあ太陽病って、具体的にどんな症状がでるのでしょうか?

傷寒論の原文には、

太陽ノ病タル、脈浮、頭項強痛シテ悪寒ス

と書かれています。では、これも一個一個確認していきましょう!

脈浮とは

漢方では脈の状態を重要視します。脈浮とは、脈をとると皮下の浅いところで触れる脈のことです。

外邪が体表から侵入しようとし、これに対して衛気(太陽の気)が抵抗をはじめると、体内の「気」や「血」が体表部に向かっていきます。

すると、脈もこれに応じて内から外に発散するような状態になり、脈が浮いたようになるというわけです。

逆にいうと、漢方では浮脈がみられたら病は「体表」にあると判断します。

頭項強痛とは

ずこうきょうつう、と読みます。症状としては頭が痛み、項(うなじ)のあたりがこわばるということです。

上で少し説明した足太陽膀胱経脈は、後頭部から項を下って、背中に沿って繋がっていますよね。

つまり、この太陽経が邪を受けると、その経脈内の気血の流れが妨げられて渋滞してしまいます。これにより、頭や項のこわばりが起きるわけです。

悪寒とは

これはイメージしやすい症状で、いわゆる寒気ですね。悪寒は、外感病(外から邪が侵入)の初期の段階、つまりこれは表証に必ず出現する重要な症状です。

太陽の気には、体表を運行して皮膚を温める役割がありましたよね。

太陽経脈に邪が侵入して、衛気の正常な働きが阻害されると、皮膚が温められなくなるので「悪寒」が生じるというわけです。

この浮脈、頭項強痛、悪寒という3症状がそろえば、病人は「太陽病」とすぐに判断されます!

「中風」の意味は?

少しずつイメージが浮かんできましたか?

次に、太陽中風証の「中風」という意味をつかんでいきましょう!

太陽病は、その原因と症状によって「太陽中風」と「太陽傷寒」に大別されます。脈浮、頭項強痛、悪寒という代表的な症状に加えて、発熱・発汗・悪風・緩脈といった症状のでるものを「中風」といいます。

中風の意味は、「風邪(ふうじゃ)」を感受して発症した病という意味で、「ふうじゃ」は身近にイメージする「風」のように動きを表わすもので、悪いものを運んでくるものとイメージしてください。

症状が起こる理由

「風邪(ふうじゃ)」は、陽邪で体の表面部分で衛気と争います。衛気も「陽気」に属しており「陽」の性質があるために、陽vs陽の衝突が起き「発熱」が生じるのです。

皮膚には血管や汗腺があって、発汗を行っています。この発汗をつかさどる部分を、漢方では「営」または「営陰」っていいます。皮膚の生理機能は、衛気とこの営によってバランスをとっています。

体表の衛気が風邪に障害されると、この皮膚機能のバランスが崩れて汗腺の働きが異常をきたします。だから、じっとしていても「発汗」してしまうのです。

汗が出るということは、風に当たると気化熱によって熱を奪われます。すると、寒気を感じるために風を嫌がりますよね。この状態を「悪風」といいます。

「緩脈」についても、衛気と営陰の機能が障害されて生じる症状で、血管の緊張が弱く、弛緩した脈のことを指します。

また、漢方では肺と皮膚はつながっていると考えられています。このように、体表で不和があるとすぐ肺にも波及して、その機能(宣散作用)が損なわれるので、鼻水が出てすすり上げるようになります。

この症状!いわゆる日常的に私たちが体験する「鼻カゼ」になるというわけですね。

桂枝湯の証をまとめると

これまで長々と説明してきましたが、いくらかイメージはつかめたでしょうか?

以上のイメージが「太陽中風証」であり、桂枝湯が使われる患者の状態ということになります。

説明した症状をまとめると、太陽病の基本の3症状(脈浮、頭項強痛、悪寒)があり、それに加えて中風に特徴的な「発熱・発汗・悪風・緩脈」といった症状がでてくるということですね。

こうしてみると結構細かい症状もありますが、傷寒論では「頭痛・発熱・発汗・悪風」があれば、どんな症状でも使ってよいとされています。

だからこそ、桂枝湯のカバーする範囲は非常に広くて、超基本となる処方ということなんですね!

では最後に、桂枝湯がこの状態にどのように作用するのかを少しみていきましょう。

桂枝湯の働き

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http://www.kigusuri.com/

桂枝湯の構成は、桂枝・芍薬(白)・甘草・大棗・生姜です。

桂枝・・・発汗解肌(表証で汗の出ているときに軽く発汗させて肌表の邪を解除すること。)の作用があり、営衛(衛気と営陰)を調和させます。

芍薬・・・こちらは、営陰(発汗を調整しているもの)を補って、強化して過剰な発汗を抑制します、桂枝と芍薬を等量ずる合わせると、体表の風邪を発散しつつ、営衛を調和させることができます。

甘草、大棗、生姜・・・脾胃を補い、それぞれが協力して桂枝・芍薬を助けて営衛陰陽を調和させます。生姜は吐き気を止める効果もあります。

漢方は、各生薬の効果を分離して考えるのはあまり馴染みがなく、一緒に使うことでそれぞれの効果や性質が変わることもあります。

もちろん、各生薬の性質を知っておくことは重要ですが、処方全体としての使い方を知っておいた方がより実践に近い気がします・・・。

それはそうと、桂枝湯は少しだけ発汗させることによって体表の邪を発散し、営衛を再び調和させることを目的としているのです。

桂枝湯とともに熱いお粥を一杯与えることで、気血の源である脾に栄養を与えるとともに、体を温め発汗を助けることができます。微かに汗ばむくらいがよいとされています。

汗がでて治ったら、服用は止めてもよいですが、十分な汗がでないときには何回も重ねて服用させることが大切とされています。

また、食事の注意として消化の悪いものや刺激性の強いものを禁止しています。それは、体表で戦うために正気(病邪に対する人体の抵抗力のこと)を集めるため、脾胃を障害するものはダメということです。

脾胃から生じる胃気は正気の根源なので、まずは胃腸を守るというのは基本というわけですね。これは、アーユルヴェーダの「アグニ(消化の火)」に近い概念だと思いますが、病気の基本は胃腸ということを指しているのかもですね!

とりあえず、今回の内容としてはこんな感じですかね^^

う~ん、分かりやすかったのかは不安ですが、やっぱり漢方は専門用語がどうしても多いので、そこはイメージをつかんでいかないと、内容はサッパリです。

なので、オススメの勉強法としては、本を読み進めていって分からない単語がでてきたら、すかさずネットで調べてイメージできるようにする、というがいいかと思います。

続編についてはご希望があればやろうかな。。。

それでは、今回はこの辺で!

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