【副作用学講座Vol.12】ステロイドの「光」と「影」

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こんにちは、第12回講座です。
今回はちょっと大きなテーマで、
「ステロイド」の副作用についてです。

ステロイドって本当にいろいろな病気
の治療に使われますが、その分だけ
いろいろな副作用が起こるんですよね。

ということで、今回はステロイド薬の
復習と副作用についてまとめていきます。

◆「ステロイド」とは?復習

一般的に「ステロイド」と言われる薬は、
もともと「副腎皮質ステロイドホルモン=コルチコイド」
といって体内で分泌されているホルモンをもとに合成したものです。

”副腎”は、左右の腎臓の上端に
位置する内分泌に関わる器官で、
髄質を囲む皮質はさらに3層に分けられます。

☆球状層
⇒鉱質コルチコイド(アルドステロンなど)

束状層
糖質コルチコイド(ヒドロコルチゾンなど)

☆網状層
⇒性ホルモン(テストステロンなど)

球状層から分泌される鉱質コルチコイドは、
腎臓でのナトリウム・水の再吸収、カリウムの排泄を促し、
水・電解質バランスの調整に関与します。

一方、ヒドロコルチゾン(コルチゾール)を
代表とする糖質コルチコイドは、糖・脂質・蛋白
の代謝に関与するとともに、強い抗炎症作用を有します。

このように、それぞれのステロイドは
「違う作用」をもっている一方で、
共通の「ステロイド骨格」をもっています。

なので、相対的な作用の強弱はあれど、
双方の作用はお互いに持ち合わせています。

そして、主に治療薬として求められるのは
「糖質コルチコイド」の方の作用なので、
ステロイド薬はヒドロコルチゾンの構造を基に創られています。

逆に副作用として水・電解質バランスを崩す
鉱質コルチコイド作用は減弱させるように
デザインして治療薬にしています。

◆ステロイドの作用と副作用が強い理由

糖質コルチコイドは副腎皮質から分泌された後、
血流に乗って全身に届けられ、各細胞内にある
受容体と結合して作用を示します。

糖質コルチコイドが結合した受容体は
活性化して核内へと移動し、標的遺伝子の
mRNAへの転写を、プラスまたはマイナスに調節します。

この結果、各種代謝の調節に必要な因子の発現が
コントロールされ、生理作用の発現へとつながるのです。

糖質コルチコイドは、
生体の維持に重要な機能を担っており、
その受容体がほぼ全身の組織・細胞に存在します。

このことが、ステロイド製剤が
全身の数多くの疾患に効果を示す理由であると同時に、
多彩な副作用の原因ともなっているわけです。

また、副腎皮質ステロイドホルモン
の分泌・作用経路は個体差が少なく、
よく保存されているといわれています。
だからこそ、ステロイドは「よく効く薬」であり得るわけです。

ステロイド製剤の薬理作用には、
用量によって変化するという特徴もあり、
例えば免疫抑制作用を得るには抗炎症作用の数倍の量が必要とされます。

このため、疾患やその重症度により
投与量や投与期間の幅が極めて大きいのも、
ステロイド製剤の特徴です。

実際、疾患によって数mgで使用することもあれば、
ステロイドパルス療法といって、g単位で使用することもあるので
副作用についても一律で考えることはできません。

下記にステロイドの基本的な副作用と特徴をまとめておきます!

◆耐糖能異常、糖尿病
糖代謝:肝臓における糖新生の促進、末梢組織でのグルコース利用の低下から、血糖値を上昇させる。

◆大量での筋力低下、皮膚萎縮
蛋白代謝:少量では蛋白の合成促進、大量では蛋白異化の促進

◆脂肪肝、高脂血症、満月様顔貌、野牛肩
脂質代謝:
脂肪組織における脂肪分解の促進⇒脂肪酸の肝臓への蓄積、血中脂質の合成促進
肝臓でのコレステロール合成促進

◆浮腫、高血圧
電解質代謝:鉱質コルチコイド作用によるもの

◆骨粗鬆症、骨折
骨代謝:大量で腸管からのカルシウム吸収抑制、骨形成低下

◆消化性潰瘍
消化器系:胃酸分泌を促進

◆易感染性
血管血液系:
好中球数の増加、リンパ球の減少
蛋白の異化促進・リンパ球活性低下のための抗体産生抑制⇒免疫抑制

◆不眠、精神変調
神経系:脳の興奮性を高め、精神活動を活発化

◆リバウンド、離脱症候群
副腎皮質:大量で負のフィードバックによる副腎皮質機能の低下⇒ヒドロコルチゾンの産生抑制

こうしてみると、ステロイド服用中は
”何が起こっても不思議ではない!”
と考えた方がいいですね。

しかし、適切な用量で使用すれば、
代用がないほどの効果を発揮するのも事実です。
メリット・リスクをしっかり理解して使用すべき薬の代表格です。

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