【副作用学講座Vol.15】ピオグリタゾン(アクトス)の浮腫と体重増加とは?

【記事専門度】★★★

今回の記事はかなりマニアックな
ところまで追求していくので、
ご興味のある人のみご覧ください!

テーマはずばりピオグリタゾン、
商品名はアクトスによる「浮腫」です。

昔から何となく”謎多き薬”という
イメージを勝手にもっていて、
最近になり色々なことを理解できるようになってきました。

薬剤師は、表面的なことだけでなく
「分子」レベルで理解できるというのが
特権ではないかと思います。

では、さっそくですが内容に
入っていきます。

まずはじめに事実として、
ピオグリタゾン(アクトス)の添付文書にはこう書いてあります。
「循環血漿量の増加によると考えられる浮腫(8.2% 112 / 1368 例)があらわれることがある。」

そして、さらには、
ピオグリタゾンの浮腫は
インスリン併用時において多くみられます。

単独 or 他の糖尿病薬(インスリン以外)との併用時
⇒男性:3.9% 女性11.2%

インスリン併用時
男性13.6% 女性28.9%

こうしてみると、
これは”まれ”な副作用とは言えないなと感じます。

そして、「なぜ浮腫が起こるのか?」
について触れていきます。

ピオグリタゾンはのターゲットは、
PPARγとという核内受容体(転写因子)です。
これに結合して様々な作用を引き起こします。

今回は、脂肪細胞の方は置いておいて、
「腎臓での作用」に注目します。
(※基本的な作用についてはこちら

これまでの見解では、PPARγの活性化を
介して、遠位尿細管、集合管の上皮細胞ナトリウムチャネル
(ENaC)の発現亢進が起こるとされていました。

さらに、インスリン自体も
腎においてNa+/H+交換輸送体などの
機能を亢進させて、Naの再吸収を促進します。

よって、インスリンの効きをよくする
ピオグリタゾンは”ダブル”の意味で、
身体の中にNa(=水分)を貯める作用があるのです。

こう考えると、インスリンを併用すると
浮腫のリスクが高まるというのは
納得できます。

で、最近明らかになった研究結果がこれです↓

チアゾリジン誘導体がPPARγによる遺伝子転写調節を介さない細胞内情報伝達経路を使って腎臓の近位尿細管におけるナトリウム輸送を亢進させることを明らかにしました。

主に遺伝子転写を調節すると考えられていたPPARγが、腎臓の近位尿細管において遺伝子転写調節を介さない迅速なナトリウム輸送刺激シグナルを伝達することが初めて示されました。

近位尿細管では管腔(尿)側の細胞膜にナトリウム・プロトン交換輸送体NHE3が発現し、反対(血管)側の細胞膜にはナトリウム・重炭酸共輸送体NBCe1が発現しています。

これらの輸送体の働きにより近位尿細管では糸球体で濾過されたナトリウムの約60%以上を再吸収しています。ラットやウサギの近位尿細管にチアゾリジン誘導体を作用させると数分以内にNHE3 とNBCe1 輸送体の機能が著明に亢進しました。

輸送体機能亢進のメカニズムを詳細に検討したところ、チアゾリジン誘導体と結合したPPARγがSrcなどの細胞内情報伝達物質を介して迅速に刺激シグナルを伝えていることがわかり、同様の現象はヒトの近位尿細管でも確認されました。

一方、PPARγを発現していないマウス由来の培養細胞ではこうした刺激シグナルは認めませんでしたが、PPARγ遺伝子を発現させると刺激シグナルが回復しました。

またこの細胞に遺伝子転写調節機能をなくしたPPARγ遺伝子を発現させても、同様に刺激シグナルが回復しました。しかしチアゾリジン誘導体が結合しないようにしたPPARγ遺伝子を発現させた場合には、刺激シグナルが回復しませんでした。さらにSrc を発現していない細胞では刺激シグナルを認めませんでした。

以上の詳細な解析により、近位尿細管におけるチアゾリジン誘導体の刺激シグナルにはPPARγとSrc の結合が必要ですが、PPARγの遺伝子転写調節機能は必要としないことが明らかにされました。すなわちチアゾリジン誘導体は、近位尿細管と遠位尿細管のナトリウム再吸収をそれぞれ異なるメカニズムによって亢進させるため、浮腫を起こしやすいことが判明しました。

実は、先に説明したメカニズムだけでは、
浮腫が起こる理由が完全には
説明できていなかったのです。

具体的には、遠位尿細管でのナトリウム輸送だけ
が亢進しても近位尿細管のナトリウム輸送は抑制
されるため浮腫が起きないことが多いということです。

ところがこの研究で、PPARγ自体が、
近位尿細管の輸送体に作用して
浮腫を起こす作用があるということが証明されたのです。

原因が異なれば、
対処も異なります。
浮腫の起きにくいPPARγ刺激薬も開発できるかも
しれません。

ちなみに、男性より女性の方が
PPARγの発現量が多く、
PPARγアゴニストの作用も強いという報告もあります。

それが、女性に浮腫が多いという
理由かもしれません。

細かいと言えば細かいのですが、
「なぜ起こるのか?」に近づけるって
すごいおもしろいと思うのです。

そこにある”現象”を表面だけとらえるのか?
”プロセス”を探求していくのでは、
導かれるアクションが異なることもしばしばです。

と、最後はまた話が逸れましたね。
結論だけを言うと、

★ピオグリタゾンはそれ自身の作用とインスリンの効果増強というダブル効果で身体にナトリウムを貯めるため、浮腫が起こりやすい。

★インスリンを併用すると、腎臓におけるインスリンのナトリウム再吸収効果を高めるので、浮腫のリスクは高まる。

★いずれにしても作用の起点はPPARγであり、女性では発現量と感受性の高さから浮腫が起こりやすくなっている。

ということです。
細かいことはさておき^^

では、今回は以上です。ありがとうございました!

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