妊娠周期×薬
ひとくちに妊娠と薬の関係といっても、
妊娠がどの段階にあるか、によって薬の胎児に与える影響は変わってきます。
今回の記事では、
どの妊娠周期で薬を飲むとよくないのか?
薬を飲むとどうなるのか?について説明したいと思います。
☆妊娠成立~ 妊娠 1 カ月前後☆
最終月経の初日から14 日前後で
排卵(卵巣から卵子がとび出す)が起こります。
この時にタイミングよく精子と出会う(受精する)と、
受精卵は、分裂を開始しながら子宮へと移動し、着床します。
この着床がうまくいくことで妊娠が成立したことになるのです。
この時期、つまり受精から 2 週間(妊娠 4 週目の中頃)ぐらいまでは、
「All or None の法則」
が働く時期といわれています。
この時期には受精卵(胎児のもとになる卵)は
非常にさかんに細胞分裂を繰り返しています。
この時期に薬物を服用して、
万が一大きな影響が受精卵に与えられたとしたら、
受精卵は死んでしまう(All=完全に妊娠が失敗する)ので、
妊娠とは気付かずに過ごしてしまうことになります。
一方、薬による影響が小さなものだったしたら、
分裂している他の細胞が代償してくれるため、
全く影響のない(None)正常の発育ができるとされています。
つまり、どういうこと。。。?
⇒この時期(妊娠4週くらいまで)に薬を飲んでも、
結果的に生まれてくる胎児には影響はないということです。
ただ、生まれるはずだった命が知らぬ間になくなっていたということはありえるわけです。
☆妊娠 2 カ月前後 ☆
この妊娠2カ月の時期を絶対過敏期(ぜったいかびんき)と呼びます。
この時期は胎児の形がつくられる重要な期間です。
胎芽から様々な器官のもとになる部分が作られ、ヒトの形をした胎児となっていきます。
したがって、最も影響を受けやすい時期と言えるのです。
胎児への薬の影響として
最もイメージしやすい「奇形」が生じるのがこの時期なのです。
一般的に月経予定日に月経が来ないことに気付き、
ちょうどこの時期に産婦人科を受診する場合が多いでしょう。
実は、妊娠に気づいた頃には、最も過敏な時期に入っているということを覚えておきましょう。
☆ 妊娠 3 カ月から 4 カ月前後☆
妊娠 3 カ月に入ると、だいたいの器官は完成してきます。
主に、男女の外性器の分化や口蓋が完成する時期でもあります。
妊娠 4 カ月に入ると男女の区別が可能になります。
したがって、絶対過敏期よりは危険性が低くなるので、
相対過敏期(そうたいかびんき)といいますがまだまだ油断はできない時期です。
☆妊娠 5 カ月から分娩まで ☆
この時期には、
ほぼ器官の形成は終了しているため、
いわゆる奇形はみられません。
しかし、ワーファリン(抗凝固薬)、ACE 阻害剤(降圧薬)、
プロスタグランディン製剤で形態的異常を起こす危険があるため注意が必要です。
この時期に特に問題となるのは、
「胎児毒性」といって胎児の発育が低下したり、
羊水が減少したり、胎児死亡が起こることがあります。
分娩直前になると、
非ステロイド性解熱鎮痛消炎薬(NSAIDs)で
胎児の動脈管収縮(胎児の血液循環に異常が起き、
死亡に至るケースもある)などを起こすことがあります。
また、抗精神病薬や抗てんかん薬を
母親が服用していたことにより
新生児に離脱症候群が見られることがあります。
それぞれの詳しい症状や内容については
この記事では触れませんが、大まかな妊娠周期の分け方と胎児への影響について説明しました。まとめると以下のようになります。
・妊娠1か月まで~結果的に生まれてくる赤ちゃんに薬の影響が残ることはない。
・妊娠2か月前後~妊娠に気づくときが、最もあぶない時期。薬による奇形などの危険が最も高くなる時期でもある。
・妊娠3か月から4か月前後~たいだいの器官がつくられ、危険性は比較的さがるけど胎児はまだまだ発達途中の時期。
・妊娠5か月から分娩まで~奇形の心配はほとんどなくなるが、薬によっては注意。母親の飲んだ薬は胎児にも影響するので毒性などには注意が必要。
”何かあって、あとで後悔するよりも、
我慢できるものならば我慢することを選ぶ”
というのも一つの選択肢かと思います。
いずれにしても
妊娠を希望する女性や妊婦の方の薬の服用に関しては
細心の注意が必要ですね。