こんにちは。
今回のテーマは
「抗精神病薬」です。
特に、「定型」と「非定型」の
特徴とその違いについて
取り上げていきます。
統合失調症やうつ病の薬。
たくさん種類はあるけど、
違いがよく分からない・・・
いろんな受容体がでてきて
どれがどれだか・・・
こんがってしまう!
そんな方のために
解説してみましたので
興味のある方はどうぞ!
目次
何はともあれ、まずは分類から!
抗精神病薬は、
大きく2種類に分けられていて、
作用の違いから特徴づけらます。
①第一世代(定型)抗精神病薬
(フェノチアジン系、ブチロフェノン系、ベンズアミド系)
②非定型抗精神病薬
さらに、非定型は作用機序の違い
から次のように細かく分けられます。
・MARTA
⇒多元受容体標的化抗精神病薬
オランザピン(ジプレキサ)
クエチアピン(セロクエル)
・SDA
⇒セロトニン-ドパミン アンタゴニスト
リスペリドン(リスパダール)
ペロスピロン(ルーラン)
・DSS
⇒ドパミンシステム スタビライザー
アリピプラゾール(エビリファイ)
・DSA
⇒ドパミン-セロトニン アンタゴニスト
ブロナンセリン(ロナセン)
・クロザピン(クロザリル)
⇒治療抵抗性統合失調症治療薬
新しい非定型のメリットとは!?
非定型抗精神病薬には
「定型」にはないメリットがあります。
ポイントは下記の5つです。
①陽性症状だけでなく、陰性症状にも効果あり!
・陽性症状とは?
幻覚、妄想、興奮、昏迷などの急性期症状
⇒覚え方は「ないものがある(ように見える・聞こえる)のが陽性症状!」
・陰性症状とは?
自閉、無関心、無表情、思考貧困、意欲欠如
⇒覚え方は「本来はあるものがないのが陰性症状!」
②認知症に対する効果がある。
③副作用が少ない
定型で起きやすい副作用が起きにくい!
例えば?
・錐体外路症状(薬剤性パーキンソニズム)
・遅発性ジスキネジア(長期服用による口周辺部などの不随意運動)
・抗コリン症状(口渇、便秘、眼のかすみ)
④プロラクチン値を上昇させない。
⇒下垂体のD2受容体阻害が強いと起こる。
⑤治療抵抗性統合失調症にも有効な場合あり!
なぜ定型と非定型の効果の差がでるの?
では、なぜこのような
「効果の差」がでるのでしょうか?
まず、イメージを掴むため
少しだけ脳の構造から
順にみていきましょう。
(http://www.mental-navi.net)
抗精神病薬が作用する
ドパミン神経系には、
図のような経路が存在しています。
これらのどこに働くのか?
でおおよその効果が分かる、
というわけです。
①の中脳辺縁系という部分。
ここがいゆわる「精神病」の中心
となる陽性症状に影響するところです。
中脳辺縁系の過剰なドパミン
を抑えることができれば、
幻覚や妄想、興奮などが落ち着くわけですね。
次に②中脳皮質系という部分。
中心部分から、大脳皮質にまで
伸びていく神経系です。
ここが陰性症状に関わる部分です。
中脳皮質系のドパミンを抑えると
陰性症状が悪化したり、認知機能の低下を起こしたりします。
つまり、中脳皮質系のドパミン
はあまり抑えずに、中脳辺縁系の
ほうを選択的に抑えた方が都合がいいのです。
非定型のD2遮断作用は、
中脳辺縁系に選択性があるために
陰性症状がでているケースにも使用しやすいわけです。
③の黒質線条体系は有名ですね。
パーキンソン病でキモになる部分です。
ここのドパミンが減ることでパーキンソン症状が起こります。
抗精神病薬においても、
この部分のドパミンを遮断することで
錐体外路症状(パーキンソニズム、アカシジア、ジストニア)
が引き起こるのです。
④の下垂体漏斗系については
あまりなじみがないかもしれません。
ですが、特に女性は直接的な影響があります。
結果だけをいうと、この部分の
ドパミンを抑えることで、
高プロラクチン血症が起こります。
もし、詳しく知りたいという方は、
こちらを参照してください!分かりやすく書いてありますよ^^
①~④までの神経系について
簡単にみてきましたが、
統合失調患者では、
①と②の経路が過活動している状態にあります。
一方で、③、④の経路は正常に
行われていることがほとんどです。
しかしながら、抗精神病薬は
①と②の部分だけに都合よく作用させる、
というわけにはいきません。
ですから、どうしても
「副作用」が起こってしまうわけですね。
「定型」と「非定型」の違い
では、もうちょっと具体的に
各薬の違いについてみていきましょう。
まず、定型抗精神病薬も
頻度こそ少なくなったものの
まだまだ現役で使われています。
定型抗精神病薬は、
強力なD2遮断作用をもっており、
強い陽性症状をコントロールするために必要だからです。
しかし、繰り返しになりますが
①~④のすべての領域を非選択的に
強く阻害してしまうのが問題なのです。
具体的には、
陰性症状や錐体外路症状が発現したり、
認知機能低下やプロラクチン値上昇といったことが起こります。
一方、非定型抗精神病薬は、
決定的に異なるところがあって、
セロトニン受容体にも作用するということです。
5-HT2A受容体にも阻害するのです。
一般に、非定型については
D2受容体よりも5-HT2A受容体を
強く阻害します。
5-HT2A受容体には
おもしろい特徴があって、
治療において都合よく働いてくれます。
例えば、黒質線条体系では、
5-HT2A受容体はドパミン遊離を抑制しています。
つまり、HT2A受容体を阻害してやると、
ドパミンはこの部分においては増えます。
⇒錐体外路症状は起きにくい!
また、5-HT2A受容体は
中脳辺縁系には分布していないため
その部分のドパミンを増やさずに済みます。
かつ、非定型抗精神病薬は
D2遮断作用もあるために、
陽性症状にも効果を発揮するわけです。
なんとも理論的には
理想的なふるまいをしてくれる
わけですが、現場はそううまくもいかないんですが(笑
あとは、非定型にもデメリットがあります。
特に、MARTAでは様々な受容体に
作用するのが逆に欠点となっています。
体重増加、糖尿病、脂質異常症など
が特に問題視されていて、
軽視できない状況にあります。
(これについては機会があればまた今度!)
同じ患者であっても、
症状は刻々と変化していきます。
陽性症状と陰性症状の切り替わり、
副作用が強くでてしまったり、
代謝系への影響がでたりと様々です。
その経過に合わせて、
それぞれの特徴にあった薬を
選ぶ必要があるわけです。
今の症状だけをみて、
新たな薬を追加していっては
どうなるか?イメージしてみましょう。
落ち着かなくて
興奮状態だから
その症状を抑える薬をだしましょう。
今度はちょっと
落ち込んできたの?
では、気分をあげる薬を追加しましょう。
またちょっと
落ち着きがなくなったから、
定型でも飲ませてみるか・・・
えっ?寝れないの?
じゃあ睡眠薬も追加してあげましょう。
血糖値も高くなったきたの!?
じゃあ糖尿病の薬も出しましょうね・・・
あっ、コレステロールも・・・
また追加しないと・・・
えっ?胃の調子も悪いの?
じゃあドグマチールを・・・
巷の精神科で流行りの
山のような処方はなぜ起こってしまうのか?
という原因が分かってきたでしょうか。
このスパイラルに陥ったら
抜けるのは難しいです。
薬を減らして調子よくなった
という人も実際によくみかけます。
(薬を減らすということが、
なぜかほとんど行われないので、
増えていく人が多いですが・・・)
あっ、
また例によって長くなってしまいました(笑
今日はこのあたりで。
最後まで
お読みいただきありがとうございました!
コメント
すごく分かりやすく説明ありがとうございました。ここの記事に行き着いたので、少しよらせて頂いた猫好きです。久しぶりです。
特に第二世代と言われている非定型抗精神薬の多くは、ドパミンとセロトニンの分泌を上手く調整することで、陽性症状だけではなく陰性症状にも効果があります。しかし、いろんな受容体に作用することが原因になってしまい、副作用として、糖尿病、脂質異常症、などの疾患になってしまうのだということも、復習になりました。
ここで、少し私から疑問点なのですが、非定型抗精神薬における、モニタリングすべき症状はどのようなものがあるのでしょうか。ドパミン・セロトニンの調節に起因する症状かなと推測しますが、どういうものがあるのか、わからないので、教えて頂きたいと思います。お願いします。