今回は、いただいた質問の回答と「薬をはじめることと止めること」というテーマを入れて記事にしていきたいなと思います。
ご質問もすごく熱心にいただいたので、私なりの意見をお伝えしていこうかなと思います。
まず注意していただきたいのは、あくまで参考に、ということです。
そして、どんな情報や人からの意見や助言においても何かを信じるしかないし、それの責任は常に自分にあるのだということを忘れないでください。
目の前のお医者さんや専門家、あるいはネットのとあるページに書いてある情報、どれが真実なのかは誰にも分かりません。
一般的に当てはまることであっても、それが必ずしも自分にも当てはまるかは分かりません。
特に医療という分野においては、個々の患者さんがもっともっと慎重になってほしいし、できるかぎりの勉強はしてほしいと思います。
(医師に処方されたから、なんの薬か分からないけど飲んでいます、なんてのは論外ですよ)
自分の健康に最も真剣になれるのは自分自身のはずですから。
そういうときに困らないように、考えられる頭を日頃から鍛えておくということも大切です。
悩んで最終的に自分の決断で決めたことというのは、どのような結果になろうとも自分のなかで納得のいくものになるのではないか、と思います。
前置きは、このくらいにして本題です。
目次
質問内容
今晩は。
初めまして。
突然ですが、教えていただきたいことがあり、コメントさせていただきます。この3月から、アンプラーグを朝晩各一錠服用しています。
脈波検査で、左側の抹消動脈の硬化が疑われ、処方されました。他にゼチーアを夕食後一錠飲んでいます。
ゼチーアはコレステロール値が170あり、昨年9月から服用しています。
(主治医は飲んでも飲まなくてもいい数値だとおっしゃっていましたが、30代で、痩せ型なのに、診ていただいてからの数年間、数値が変わらないので、家族性の可能性も考えて、処方されたようです)質問なのですが、アンプラーグを、術前の休薬ではなく、一定期間、減薬した後に、完全にやめてしまうことは可能でしょうか。
ゼチーアもゆくゆくは中止したいと思っています。適度にコレステロールはあったほうが良い、血管をつくるのに必要と聞いたことがあるからです。素人考えでしたらごめんなさい。
今、服薬しながら、食事のバランスと日々の運動に気をつけており、今後、出来れば、お薬に頼ることなく生活してゆきたいのです。
もちろん、血液検査、他必要な検査で、服薬の必要がない程度の結果が出ていることが条件です。
もし、バランスのよい食生活や適度な運動をもってしても、薬が必要性であれば、服薬するつもりでいます。
アンプラーグについては、服薬前に飲むことをためらっていました。一度飲み始めるとやめられない気がしたからです。
まだ生理もありますし、妊娠の可能性も今後ゼロとは言えないので、飲まなくていいお薬は避けたいのです。アンプラーグもそうなのかはわかりませんが、いわゆる血液をサラサラにするお薬は、休薬すると、血栓リスクがあがるとネットでみて怖くなりました。
いろいろ聞きたいことがあり、主治医に質問しましたが、今はとりあえず、一か月、これで様子を見させて欲しいとおっしゃいます。
また、軽い動脈硬化はあるけれど、コレステロールの薬はなくてもいいかも知れないというようなニュアンスでお話されていました。私としても、生活改善を3ヶ月ほどつづけてから、その先に、可能であれば、減薬→中止と段階をふみたいと思っていますので、かなり先々のことを考えての質問になりますが、御教示いただけると幸いです。
また別になりますが、婦人科で、女性ホルモン不足のため、エストラーナテープとプロベラ併用をすすめられています。
ゼチーアやアンプラーグを服用していることを伝え、血栓のリスクがあるなら、服用を避けたいけれど、治療として必要ならば、血液検査をして問題無ければ服用しますと伝えたところ、血栓リスクの検査をした結果で考えましょうと婦人科では言ってくださいました。女性ホルモン補充することで、動脈硬化やコレステロール異常に悪影響がでる可能性があるのでしょうか。いろいろ質問し過ぎてしまいましたが、お答えいただける範囲で教えていただければ、大変ありがたいです。
よろしくお願い申し上げます。
私の回答
ポイントに分けて意見をお伝えしようと思います。
>ゼチーアの服用について
先生自身が「飲んでも飲まなくてもいい」というのならなぜ処方するのか?疑問です。
Choが170(おそらくLDLだと思います)は、服用前の数値でしょうか?そして服用後にどうなったでしょうか?
まずはそこが重要かなと思います。
服用後もほとんど数値や症状に変化がみられなかった薬については中止すべきだと思います。
LDL値が170ということですが、これも数値だけをみては何とも言えないですが、日ごろの活動状態やHDL(他の検査値)とのバランスなどもあるかと思います。
個人的にですが、すごくリスクが高い人以外については基準値の140以下に抑える必要はないのではないかと思います。
>アンプラーグを止めることについて
脈波検査で、左側の抹消動脈の硬化が疑われ、ということは、あくまで脳梗塞などの予防で処方されたということだと思います。
こういう場合、一度始めた薬を止める理由がないのではないか、と私は思います。
例えば、再検査をして血管の狭窄部位が明らかになくなった、というようなケースでは中止もありうる、とは思います。
ですが、今回の服用をはじめた理由は「疑い」を前提にした「予防投与」です。
アンプラーグという薬は、飲んで効果がでている間だけ血栓の形成を抑えられます。止めてしまえば、2日程度でリスクは元通りになってしまいます。
もし、今が特別リスクが高い状態や緊急的な状態ではないとすれば、今後、普通に生活していてリスクが下がることはありません。ということは、一生飲みつづけるという予定でないなら、そもそも飲みはじめる必要はないと思います。
ちょっと分かりにくいでしょうか(汗
また、休薬するときが怖いということについては、私も同意見です。
薬の性質として、長く飲めば飲むほど「薬の効果への依存」というのが体内に生じます。(これはどんな薬であっても、です)
今回であれば、アンプラーグの血液サラサラ効果が発揮されている状態で、身体は今後「慣れていく」ことになります。
急に服用をやめたら血栓のリスクが服用前より高くなるのか?というのは一概には言えないですが、当然服用している状態から止めた瞬間というのはリスクが最も上がるのではないかと予想されます。
こういったことから、予防投与を開始するときには十分に考慮してほしい理由でもあります。
>生活改善をしてから減薬することについて
これはすばらしいことと思いますが、もし現状がそれほどリスクがないのなら、はじめから食事や運動療法でもよいのではないでしょうか?
薬は救急対応のときのみ使え!という先生もいらっしゃいます。もし、そういったお考えをおもちならば安易に薬は始めないほうがよいのではないでしょうか。
ただし、ここで注意していただきたいのは、生活改善でどのくらい予防できるかは未知数だということです。すごく効果がでるかもしれないし、逆効果になるかもしれません。
ここの責任を自ら負う覚悟があるのであれば、ぜひ勉強して取り組んでみてください。
治療薬については「一応は」一定の効果がでるという承認を得て使われています。(これもどこまで信じるか、ですが)
とはいえ、薬物治療なら誰かが責任をとってくれるのかといわれれば・・・。失われた健康は誰にも戻せないですし、副作用がでたとしても認められるケースは一部であるということも忘れないでください。
>女性ホルモン補充することで、動脈硬化やコレステロール異常に悪影響がでる可能性があるのでしょうか。
女性ホルモン製剤の血栓との関わりについては、最近記事を書いたのでご参考になれば幸いです。
影響があるかといわれれば、あると思います。
ただ質問者さんのリスクが具体的にどのくらい上がるのか?という質問にはお答えできません。
何を優先させるか、です。
症状を少し我慢すればよいだけなのか、放置すれば進行したり悪化してしまうものなのか、痛みがあって食事ができなかったり眠れなかったりしているのか、そういったすべての側面から判断されるべきです。
リスクとベネフィットを比べて・・・とよく言われますが、つまりはそういうことなのです。
まとめ
結局、結論がでていないじゃないか!という印象をお持ちかもしれませんが、私はこれが最も真摯なのではないかと思っています。
こうしたほうがいいよ!と自分の思い込みや偏った知識を前提にして回答する方も多い(特にネットの知恵袋など)ですが、そのほうが逆に信用できないです。
分からないことは分からないですし、どこまで調べても各個人が抱えている問題はオンリーワンです。なぜなら背景や環境が全く同じ人というのは、誰一人としていないからです。
では、どうやって結論を出したらよいのでしょうか?
自分が納得した上で、責任を人に押しつけず、何かを信じること、です。
私はよく勉強されることをオススメはしますが、ただ結果的にそれがよい方向にいくかどうか、は保証できません。
変な知識を身につけて、自己流で何かをやってこじらせる可能性だってあります。ですが、私は自分で納得したいので調べます。
おそらく、質問してくれた方もそういうお気持ちがあるのではないか、と思います。
ぜひよい選択をされて、よい方向に治療が進まれることをお祈りしております。
では、最後までお読みいただきありがとうございました!
P.S.
編集後記
患者さん1人1人が納得のいく薬物治療ができて、そこで世界各国のいろんな医療が勉強できて、それぞれの体質や好みにあった医療が選べて・・・
世界の医学、薬学、看護、介護、理学療法などが互いにケンカせず調和してお互いに補完しあっているような・・・
将来は、そんな医療施設の実現に携わりたいなぁ。
すべての領域がシームレスにつながって、そこにいる1人1人の求めるQOLを追求できるようなところ。
これは、きっと素敵だな。