抗血栓薬×止血薬
処方
・カルナクリン錠50IU 3錠
・プレタール錠50 3錠
・アドナ錠30mg 3錠
1日3回 毎食後 14日分
この処方をぱっとみたとき、
経験の浅いときは「?」でした。
血を止めたいの?
血流をよくしたいの?
どっちなんだい!って思うわけです。
ちなみにこの処方はどんな疾患に
使われたのでしょうか?
答えは眼底出血です。
その中でも「網膜静脈閉塞症」
を原因とした眼底出血です。
網膜静脈閉塞症には2種類あって、
・網膜静脈分岐閉塞症
・網膜中心静脈閉塞症
があります。
<網膜静脈分岐閉塞症>
動脈との交差部位に静脈閉塞が起きた疾患。
・網膜は非常に薄い組織なので、
動脈と静脈の交差部位は血管壁の外膜を
共有している。
↓
・網膜の動脈硬化により血管壁の肥厚を
生じると、静脈側にも狭窄が生じ、
静脈血がうっ滞する。
↓
・結果、眼底出血や網膜浮腫が起き、
視野の欠損を生じる。
<網膜中心静脈閉塞症>
・血圧の急激な変動や血管の炎症により、
網膜中心静脈の根元の部位に閉塞が起きた病態。
・出血が眼底全体に広がり、
視野欠損が広範囲になることが多い。
どちらのタイプでも。。。
・出血を放置すると、血管壁が脆弱な
新生血管が網膜内の生じる
↓
・増殖網膜症や硝子体出血が起き、
視力障害がさらに進行する。
この病態のメカニズムから、
最初に示した処方内容を考えます。
<カルナクリン(カリジノゲナ-ゼ)>
酵素作用によりキニンを遊離させ、
PGE2、PGI2の産生を促進することで、
血管を拡張し、血流を改善する。
↓
網膜静脈の血行改善を目的に使います。
最初に血管詰まりを改善するわけです。
<プレタール(シロスタゾール)>
cAMPホスホジエステラーゼを阻害し、
血小板凝集を抑制する。
つまり、網膜静脈に血小板血栓が
形成されるのを防ぐわけです。
↓
血栓ができ、静脈の閉塞するのを防ぎます。
<アドナ(カルバゾクロムスルホン酸Na)>
血小板数やPT(プロトロンビン時間)
には影響を与えず、毛細血管壁を強化し、
透過性を低下させることにより止血効果を示す。
↓
血液凝固能には影響しないので、
血栓を原因とする出血に対して処方されます。
これらの3剤を合わせることで、
出血を抑えつつ、原因である網膜静脈
の閉塞を防ぐという意図があるわけです。
以上、簡単な説明でした、
出血を止めるだけ対症療法だけを
考えると、この処方の意図は見えてきません。
眼底出血を起こす原因は何なのか?
を踏まえたうえで練られた処方ですね。
薬の説明書だけの「効果」をみると
一見矛盾する処方ですが、
中身を知るとなるほどな~と思うお話でした。
以上、なじみのない方のお助けに
なれば幸いです^^
~今日の名言~
「人から言われてやった練習は努力とは言わない。」
出典:MAJOR