患者からの電話より
「今日もらった錠剤、
吐気があるとき1回1個って書いてあるよね?
1錠10mgなんだけど、飲めない時に使ってって出た座薬は60mgなんだよね。これって量間違ってない?」
確かに、
こんな問い合わせがきたら
一瞬フリーズしてしまいそうです。
このような素朴な疑問って
意外に見過ごされがちですが、
専門以外の人からの質問って勉強になったりします。
では、この理由について
みていきましょう!
まず、基本的には「坐剤」のほうが
肝臓での代謝(初回通過効果)を
受けにくいので少量で効くと考えがちです。
実際、アセトアミノフェンやジクロフェナク
ナトリウムなどでは、経口剤と坐剤って
用量はほぼ同じで、坐剤の方が素早く効くイメージです。
ナウゼリン坐剤では
次のように記載されています。
60mg坐剤
⇒「成人にドンペリドンとして1回60mgを1日2回直腸内に投与する。」
10mg・30mg坐剤
⇒「3歳未満の場合、通常ドンペリドンとして1回10mgを1日2~3回直腸内に投与する。3歳以上の場合、1回30mgを1日2~3回直腸内に投与する。」
これは実は臨床試験の結果から
得られたもので、意外にざっくりとした
用量指定しかないんですね。
で、なぜ経口剤と坐剤で用量の差が
あるのか、というと、その作用機序に
よるものと考えられています。
ドンペリドンは、化学受容器引金帯
=CTZと作用して、嘔気嘔吐を抑える
とともに、末梢のドパミンD2受容体にも作用します。
胃壁内の神経叢にもD2受容体が存在し、
胃の副交換神経節において抑制的に
働いています。
ドパミンってどちらかというと
「攻撃性」「覚醒」のイメージの物質なので、
交感神経的に働いていますよね。
なので、攻撃するときは交感神経!
という法則に従って、ドパミンにより
胃の運動は抑制されているわけです。
(攻撃時は消化管はお休み状態になります・・・zZZ)
一方で、ドンペリドンはそのD2受容体の
遮断薬なので、AChの分泌を促進させ、
胃と十二指腸の運動は亢進するわけです。
経口剤の場合は、消化管を通るため、
この効果の恩恵を大きく受けることが
できるので、少量で効果を発揮できるわけです。
ドンペリドンは中枢性の制吐作用が
強いとされていますが、経口剤では
中枢と末梢の両面から効果を発揮するというわけです。
それが、経口剤の方が坐剤よりも
少量で「制吐作用」を得られる理由と
されています。
では、以上です。
最後までありがとうございました!
参考:薬剤師会誌