引用:http://www.seirogan.co.jp/medical/stress.html
ラモセトロン(イリボー)は、
「ストレス-セロトニン説」に基づいて開発された
おもしろい薬だという話があったのでシェアします。
◆「ストレス-セロトニン説」とは?
過敏性腸症候群(IBS)の原因として
考えれている仮説の一つです。
セロトニンといえば気分などに関わる
脳内の神経伝達物質とイメージしがちですが、
体内の約90%のセロトニンは消化管に存在します。
消化管のセロトニンは、
蠕動運動や粘膜上皮細胞からの水分分泌の誘発、
便意や腹痛などの内臓感覚を調節しています。
<ストレスとセロトニンのメカニズム>
心理的などのストレス刺激
↓
脳の視床下部のなかの室傍核から
CRF(副腎皮質刺激ホルモン放出因子)が分泌
↓
CRFが脳幹から遠心性に伸びる副交感神経
(腸の平滑筋運動を制御)を刺激
ここにセロトニンが関与しているとされる。
↓
下部消化器の運動が誘発
※消化管にはセロトニン5HT3受容体が分布
していて、セロトニンの結合により知覚過敏による腹痛、
消化管の蠕動運動や水分分泌が亢進し下痢が引き起こる。
これが脳から消化器への経路ですね。
次に、消化器から脳にもどる経路についてです。
上記の機序などで腸管が伸展する
↓
腸粘膜のクロム親和性細胞(EC細胞)が刺激されて、
そこからセロトニンが分泌される。
↓
求心性神経終末のセロトニン5HT3受容体と結合し、
大腸痛覚系を通じて痛みの信号を脳に伝達。
↓
腹痛として認識する。
以上の一連のメカニズムを
「脳腸相関」とも呼びます。
◆ラモセトロン「イリボー」の効果とは?
2008年に発売されたIBS治療薬で、
5HT3受容体拮抗薬に分類されます。
まず一つめの作用として、脳から流れてきた
信号を腸管内の水際で食い止めることで、
消化管の蠕動運動・水分分泌を抑制します。
これにより、下痢型のIBSを改善します。
2つ目の作用は、腸管の5HT3受容体を
阻害することで、痛みの信号が脳にもどるのを
抑制することができます。
この2つの作用により、
「便通」と「腹痛」を改善してくれる
お得な薬というわけです。
ちなみに、このラモセトロンという成分は
「ナゼア」という商品名で、
制吐薬として先に使われていました。
その後に、IBS治療に適した用量が検討され、
IBS治療薬に転用されたのでした。
制吐薬として使う場合は、
ラモセトロン塩酸塩として0.1mgを1日1回経口服用する。
年齢、症状により適宜増減。
IBS治療薬として使う場合は、
成人男性はラモセトロン塩酸塩として5μgを1日1回経口服用する。
症状により適宜増減するが、1日最高服用量は10μgまでとする
つまり制吐目的で使う場合の
1/20の量でIBSには効果があるということですね。
ちなみに、イリボーは治験で男性にのみ
有効性が認められたために、適応は
「男性の下痢性IBS」となっています。
薬理が分かるからこそ、
新たな使用方法も生まれるという
良い例かなと思う内容でした。