【第11回】薬はいつ効くのか?~半減期と投与間隔の関係に迫る~

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「この薬ってどのくらいで効果でるんですか?」
こういう質問は素朴でいて、けっこう深いです。
第11回は、薬を効きはじめを薬物動態学的に考えられるか?
そこに迫ります!

まず、問題はシンプルに。
薬は消化管から体内に吸収されて、
血流に乗って標的部位に届いて効果を発揮します。
これはすべての薬に共通することです。

頭痛薬であれば頭部の炎症部位に、
不整脈薬であれば心臓に、
頻尿の薬であれば膀胱に、
といったように。

もちろん一部の薬は消化管内で
直接的に効果を発揮するものもあります。
しかしほとんどの薬は、必ず血流に乗って各臓器に届けられます。
つまり、ひとつの指標として薬の血中濃度に注目します。

そう考えたときに、
じゃあ「いつ、効くの?」というわけです。
「今でしょ!」と答えたいところですが(笑。

その指標になるものが欲しいのです。
そのヒントが「tmax」「半減期」「服用間隔」です。

まず単発で薬を飲んだときを考えます。
血中に薬が最も多く存在するという意味で、
最も効果が高くなるのは、tmax(最高血中濃度到達時間)付近と考えることができます。

薬理学的な細かいことを言えば、
SSRIのように本来の効果がでるまで
時間のかかるものもあり、一概に言えないのが難しいところです^^;

しかし、一般的には、
薬を飲んでから<tmax>時間経ったときに
最大の効果が得られるので、その頃を目安に効果をみてください、ということでいいかと思います。

そして、問題となるのは
定期的に継続して服用する薬の場合です。
定期受診で処方される薬は、
基本的には繰り返し飲みつづける薬です。
そういった薬はどうなのか?ということについてです。

第一に重要なのが「半減期」です。
1日何回飲むのかを決める際に、
この半減期を反映している場合が多いです。

半減期が短いものは1日3回、
長いものは1日1回というようにですね。

例えば、痛み止めのロキソニン。
半減期は1時間ちょっとです。
用法は1日3回ですね。

一方、頻尿に使われるベシケアは、
半減期は40時間程度です。
用法は1日1回です。

これをみたとき、どのように考えますか?
単純に半減期が短いから1日3回、
長いから1日1回でしょ?というのは少し芸がありません。

ちょっと視点を変えて、
この2つの薬の真の効き始めはいつなのか、
ということを考えていきましょう。

これを考えるときには、
「定常状態」という概念が必要になります。

半減期の長い薬を飲むと
徐々に前回分が身体に溜まっていき、
最高血中濃度が上がっていきます。

しかしながら、
代謝速度は血中濃度に依存する!
という原理原則がありました。
⇒もっと詳しい記事はこちら!

つまり、あるレベルまで
血中濃度が上がっていくと、
投与量と排泄(代謝)量が等しくなるときがきます。
(はじめは投与量の方が上回るので、前回投与分が溜まっていく)

これが定常状態です。
薬を繰り返し飲んだとき、
血中濃度が一定になる状態のことですね。
そして、その時こそ本来の薬の効果がでている状態ということになります。

実は、
すべての薬が定常状態に
なるわけではありません。

結論からいうと、
ロキソニン=定常状態がない
ベシケア=定常状態がある
となります。

なぜなのか?
その答えを示す考え方がこちら!
半減期の5倍
ここは、あえて特大で表示しておきます!

この考え方は、
薬物動態学の権威である
Ritschel教授が主張したものです。

「投与間隔がt1/2の3倍以内であれば、
t1/2の5倍の時間にわたって連続投与をすると、
薬物血中濃度は定常状態に達する」

さらに
簡単にすると・・・
半減期を3倍して
投与間隔を超えていれば定常あり!!
ということですね。

この理由については、
数学的に説明できるのかもしれませんが、
膨大なデータによる経験的なもの、らしいです。
かなり有名な法則で、おおよそ実際に即していると言われています。

これに基づいて考えるとすごくシンプルです。
ロキソニンは1日3回服用なので、
投与間隔を6時間とすると
投与間隔 ÷ t1/2 ≒5となるので、定常状態には達しません。

これはつまり、
1回目の服用から最大の効果を得られるということです。
逆にいえば、繰り返しても効果が強くなることはありません。

一方、ベシケアはというと、
1日1回服用なので、投与間隔は24時間です。
投与間隔 ÷ t1/2 ≒0.6となります。
つまり、第一条件はクリアです。

いつ定常状態に達するかというと、
t1/2(40時間) × 5 = 200時間 ≒8.3日
つまり本当の効果がでるま約1週間はかかるのです。

飲み始めて1週間以上経って、
初めてその効果を判定すべき薬というわけです。
副作用についても定常状態に達してから確認すべきです。

こう考えるといままで何気なく言っていた
「5,6時間は間隔をあけてくださいね。」
「続けて飲むようにしてくださいね。」
といった言葉の重みは、全く変わってくる気がします。

こういう視点で
薬の「効きはじめ」を考えると、
けっこうおもしろいと思います。

そして、計算もしやすいので
「実践ですぐに使う」ことができます。

薬物動態学って
理論としてはおもしろいけど、
実際に使うとなると、ハードルが高いなと感じることが多いかと思います。

もちろんTDMを行っている病院等では
すごく有用で必須の学問なのですが、
日常レベルで使うことができればいいな~と思います。

せっかく大学で
苦労して(笑)習うので、
実践で活かせれば嬉しいですよね!

ちょっと長くなりましたが、
今回はこのあたりで。
では、最後までありがとうございました!

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コメント

  1. 通りすがり より:

    一方、ベシケアはというと、
    1日1回服用なので、投与間隔は24時間です。
    投与間隔 ÷ t1/2 ≒1.7となります。

    24hr/40hr=0.6ですかね?

    • しゅがあ より:

      ご指摘いただきありがとうございます!
      そのとおりですね^^;
      分子分母が逆になっていました。
      訂正しましたm(_ _)m

  2. 理数オンチ勉強中! より:

    分かりやすくてとても勉強になります。本当にありがとうございます!

    質問なのですが、例えばザイザルは
    半減期 8時間
    投与間隔 24時間
    とすると、3なので通常であれば定常状態が無い薬剤です。
    しかし、腎障害がある患者さんが飲むと
    半減期 25時間に伸びることがあり、(投与量を減らすとか、そもそも飲んではいけないことは差し引いて)その場合は
    24÷25=0.96
    腎障害等で半減期が伸びると、反復投与で定常状態になるのでしょうか?
    (初回投与でMAXの薬効を得たあと、反復投与すると定常状態となり、薬効の増強or副作用の発現が起こるのでしょうか?)

  3. […] メーカーのデータとNext Pharmacist.netを参考に考えてみると… […]

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