ノバスティスファーマHPより
今回のテーマは、
「ステロイド外用剤」の混合は注意!
というお話をしたいと思います。
皮膚科の処方では、
複数の軟膏やクリームの混合して使うということが
一般的にも広く行われています。
でも、ちょっと待ってください!
「混ぜた方が効果が高まるだろう」
「混ぜてしまったほうが患者さんも楽だろう」
そんな思いが裏目にでるかもしれません。
そうならないためにも、
今回のテーマを少しだけ知っておくと全く視点が変わるかもしれません。
手短ですが、どうぞ!
現状において、外用剤を混ぜるという行為には、
いろいろな意見やデータがあるため、
医師によってこだわりも様々なことが多いようです。
今回は、特に処方されることの多い
ステロイド剤について学んだことがあったのでシェアしていきます。
薬剤師っぽく構造式から攻めますよ(笑!
まず、特に注意すべきは下のような構造をもつステロイドです!
注目してほしいのは、〇をつけた2か所の部分です。
17位のエステル基と21位の水酸基があること、それとエステルがひとつしかない「モノエステルタイプ」のステロイドであるということです。
商品名を紹介しておきます。
◆デキサメタゾン吉草酸エステル
⇒ボアラ、ザルックス(軟膏・クリーム)
◆ベタメタゾン吉草酸エステル
⇒リンデロン、ベトネベート(軟膏・クリーム)
◆ヒドロコルチゾン酪酸エステル
⇒ロコイド(軟膏・クリーム)
これらのステロイドは、塩基性(アルカリ)に弱く、pHが高い外用剤と混合してしまうとエステルが加水分解するため、含量が低下してしまいます。
つまり、他の軟膏やクリームと混合して使用していると、数週間後には効果がガタ落ち!ということも十分にあり得るので注意が必要です。
ロコイドを例にして含量の低下をみていきましょう!
下記の外用剤と混合し、2週間経過したときの含量です。
・ケラチナミンクリーム・・・82.4%
・パスタロンソフト軟膏・・・60.0%
・ヒルドイドクリーム・・・86.1%
・ザーネ軟膏・・・40.9%
・レスタミンクリーム・・・2.9%
(鳥居薬品株式会社 調べ)
このデータ見たときは正直驚きでした。
2.9%って。。。ほぼ効かない!?
確かに調べてみると、混合後のpHが7.5~8程度に傾く場合には含量低下が著しいようです。
IFなどにも記載があるので興味のある方は調べてみてください!
2週間程度であれば、使用される期間としては一般的ですし、レスタミンとの混合などはありうる組み合わせと思います。
でも、実際には見た目には分からずとも、これほどのスピードで含量が低下していくものなのですね。
逆に、アンテベート(ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル)などのジエステルタイプのステロイドの場合は混合して4週間後も90%以上の含量を維持しているため、混合には適していると言えます。
一方で、同じ皮膚科で使用されることの多い、活性型ビタミンD3製剤(オキサロールなど)は、「酸に弱い」という性質があるため、ステロイド外用剤などと混ぜると効果が落ちることが報告されています。
以上、構造式により物性を予想できるおもしろい事例かなと思い紹介してみました。
実際の現場においても十分使える実践的な知識ですので、外用剤の混合する際に頭の片隅に入れておくといいかもしれません。
どうせ薬を使うのであれば、
「最少量で最大限の効果」を目指したいですから。
最後にまとめの言葉で終わります。
~外用剤の混ぜには注意しろ!~
コメント
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