EBM×キーワード
ディオバン騒動など、最近は特に
EBMについて考えるよい機会に恵まれる。
漢方や民間療法など数百年、数千年の
スパンで築きあげられてきた治療法に対して、
短い期間で検証される新しい治療法や治療薬。
今の医療では大規模な臨床試験と
それに基づくデータ解析は必須のものと言っていい。
今回の騒動ははじめ、
データを自分なりにいかに解釈・判断し、
使っていくのかということが求められる時代だ。
今回は、論文や臨床データを見る際に
役立つキーワードについてまとめたい。
1.PECO
論文や臨床試験の「目的」と「結果」
を整理するためのフォーマット。
下記の頭文字をとったものである。
P:Patient(どんな患者に)
E:Exposure(どんな治療、検査をして)
C:Comparison(何と比較して)
O:Outcome(どんなアウトカムの変化があるか)
何を目的として試験なのか、
どんな条件のもと比較したのか、
そしてどんな結果が得られたのか?
これをはっきりさせて理解しないと
そこから正しい知識や見解は得られない。
2.ランダム化比較試験(RCT)
現在、治療効果を検討するために
最も妥当性が高いとされている研究方法のこと。
対象者をランダムに割り付けることで、
年齢や生活環境、重症度などの背景因子が
偏りなく分けられる。
これにより、治療効果を公平に検討することが可能になる。
詳しく記事を書いているので気になる方は参考までに。
⇒https://next-pharmacist.net/archives/915
3.メタ解析(メタアナリシス)
同じ治療法・予防法、検査法、危険因子
などを検討したいくつかの研究について、
それぞれの結果をひとつの指標で統合した研究のこと。
多数の試験結果を合算して分析したものであるため、
RCTのメタ解析の結果は、治療効果を検討する上で
特に重要となる指標である。
4.相対危険(度)
治療効果を検討するためのひとつの指標で、
治療群でのイベント(副作用など)発生の割合を、
対照群のイベント発生の割合で割ったもの。
つまり相対危険が、
1より小さければ「有益」、
1より大きくなれば「有害」である。
例えば、相対危険が0.8という場合、
治療群では対照群に比べてイベント発生が
20%少ないという意味になる。
後ろ向き研究(過去のデータを遡った研究)
の場合は、オッズ比というのが指標になる。
(治療群:イベント有/イベント無)÷(対照群:イベント有/イベント無)
5.95%信頼区間
これがよく統計で使われるキーワード。
ある研究結果をもとに、
実際にその治療を実施した場合の値が95%の確立で
そこに収まると類推される範囲のこと。
逆に5%の確率で、
この範囲に入らないことがあるということでもある。
相対危険度0.68 [95%信頼区間:0.55~0.80]
という表記があった場合、
平均値が0.68で、治療効果を少なく見積もった場合0.80、
大きく見積もった場合0.55と評価できる。
この範囲がすごく大きい場合は、
それだけ治療効果がばらつく恐れがあるということ
なので注意が必要になる。
以上、簡単なキーワードについてまとめた。
結果だけをみると、「優位な効果が認められた」
という場合も、こういった指標を詳しくみてみると、
あれ?ってことが実は多いかもしれない。
結局のところ、データを解釈する人が
どのような価値観や判断基準で解釈するかに
試験データの意味は委ねられている。
自分でしっかりと理解して、
判断できる力を身につけたいものである。
参考:日経DI 2013.6