こんにちは、第3回です。
今回は、ある症状や検査値の異常に対して
それが「薬による副作用」だとなぜ言えるのか?
という話です。
薬を飲んでいる間に
たまたま具合が悪くなったり、
検査値が変動したっていう可能性もあるわけです。
そういう時に薬による副作用だと
判断する手段はあるのかということですね。
「いや、よくないことが起こったんだから、
その薬を使わなければいいだけでしょ?」
と考えるかもしれませんが、そう単純ではないはずです。
薬は医師が「必要」と判断して使っているわけですし、
もし疑わしい薬をすべて使えないとすると
治療の幅がどんどん狭まっていくわけです。
なので、副作用の原因と考えられる
薬をある程度特定していく必要があります。
そのときの方法論と思考法についての
話が今回の内容です。
まず、当たり前のことですが
薬を飲んでから副作用と思われる症状が
起こったということが大切です。
これを「時間的因果関係」といいます。
つまり、服薬開始から服用中止の間に有害症状が
発現するということがキーポイントです。
そして、その薬剤を中止して
症状は改善したのか?しないのか?
ということを観察します。
これが「薬剤投与中止による改善」という項目です。
一方、副作用と思われる症状が、
持病の悪化によるものではないか?
という観点も必要です。
薬を飲み始めたタイミングと
症状の悪化がマッチしてしまった場合ですね。
これが「既存症状悪化の可能性」という項目です。
最後に、原因と疑っている薬を
もう一度投与したときに、再度副作用が
起こったか?という確認です。
実際には、被疑薬をもう一度患者に
投与するということはないかもしれませんが、
過去の使用歴などを遡って調べることはできます。
これが、「薬剤再投与の影響」という項目です。
以上をまとめると、
「時間的因果関係」
「薬剤投与中止による改善」
「薬剤再投与の影響」
これらの項目に当てはまり、
「既存症状悪化の可能性」が考えにくい場合、
その薬は副作用の原因になっている可能性が高いということです。
この方法論は米国食品医薬品局(FDA)
が提案しているアルゴリズムでFDA解析と
呼ばれています。
このような手順・思考で被疑薬を探し、
さらに原因薬を特定するために次のような
試験法があります。
☆TDMなどの薬物動態学的検討
もし検討している副作用が
「中毒性副作用」だった場合、
血中濃度が治療域から大きく外れている場合が考えられます。
☆白血球遊走試験(LMT)や薬物誘発リンパ球刺激試験(DLST)などのアレルゲン同定試験
患者が被疑薬に対してアレルギーを
もっていた場合はこの試験により特定することができます。
アレルギー体質だった場合には、
基本的に被疑薬の再投与はできません。
☆遺伝子多型検査
現在発展途上の領域ですが、
薬の代謝能力は個人によって大きく異なっている
ことが分かってきています。
その差は薬物代謝に関わる遺伝子の変異
に由来しています。
これらを検査によって同定することができます。
以上をまとめると、
何か副作用と思われる症状が起こった時、
FDA解析によって被疑薬を探した後、
上のような検査法で原因薬を特定していくという流れになります。
ただ、実際には、
一般的な副作用すべてに関して
大がかりな検査などは行われないのがほとんどです。
なので、考え方の大まかな流れと
そういう試験法があるんだなということを
知っておくことが大切です。