継続は力なり。
前回に引き続き、猫好きさんが「漢方の選び方」について勉強されたみたいなので、それをまとめてもらいました。
漢方といえば、いわゆる患者の状態=「証」を決めることがもっとも重要とされますが、素人には非常に難しい部分でもあります。
ですので、今回のように「ある兆候」に注目しながら、漢方の選び方に慣れ親しんでいくというのも一つの方法かなと私は感じています。
今回は「汗と漢方の選択」というテーマで、漢方を選ぶ際の一つの足がかりとしてみてもらえると役立つのではないかなと思います。
では、早速ですが今回の記事をどうぞ^^
汗と漢方の見立て
改めて、猫好きです。
前回につづき、漢方処方を証を踏まえた上での漢方処方の使い道についてみていきます。
もしこういう患者さんが薬局に来られたらどうだろう。
患者の訴え:発汗と悪寒がする(さむけもある)。熱がある。汗もいやほどかく。
これらの症状から想像できることは、風邪の初期であるということだ。
こういった場合、自然発汗があるため、無理に体から汗をかかせることは必要ないということになる。こういった状態には、桂枝湯があっている。
ここで重要になのは、自然発汗があるかどうかである。
発汗がないという場合は、葛根湯や小青竜湯といった漢方処方を考える。
汗と漢方の選択に関してわかりやすい図を引用する。
(漢・方・優・美より出典)
このように、自然発汗があるかないかによって、使われる漢方処方はがらりと変ってしまうのがわかる。
一つ補足すると、発汗や悪寒というのは、体が寒がっているという状態を意味する。
「え、風邪で熱が出ているということは、体が熱いということではないの?」と疑問をもたれるかもしれない。
しかし、漢方で「熱、寒」は単純に体温を指しているわけではないから注意が必要だ。
発汗と悪寒がないが、喉の痛みがある場合はどうであろうか。
こういう場合、銀翹散(ギンキョウサン)を使用するとよい。
リンク:【銀翹散(ギンギョウサン)とは?】インフルエンザにも効く!?葛根湯との違いは?優秀な漢方薬を徹底解剖します!
風邪の中期~後期に、喉の調子が今一つである場合は、麦門冬湯の使用を勧めてみてはどうだろうか。
みなさんも体験したことがあるかもしれないが、寒いときには、温かい何かがほしくなるものである。漢方にも体を温める方法がある。
もし、体が寒いために冷えて腹痛が起きている場合は、柴胡桂枝湯の使用が検討される。
抗がん剤と漢方薬の意外な組み合わせ
半夏瀉心湯という漢方薬を耳にしたことがあるだろうか?
消化器系疾患に広く使用されているが、実は、抗がん剤の副作用である激烈な下痢を改善することが知られている。
半夏瀉心湯は、抗がん剤である「イリノテカン」との併用が認められている。
少し難しい話にはなるが、その効果の一部メカニズムがわかっている。
イリノテカンは肝臓で代謝され、SN-38へと分解され、全身を回る。回った後、肝臓でグルクロン酸抱合を受けて、不活性化する。
しかし、腸肝循環といって腸と肝臓を行ったり来たりするときに、腸内細菌がβ-グルクロニダーゼという酵素を使い、不活性化したものを活性化させ、元のSN-38に戻してしまう。
これが再度大腸の粘膜を傷つけることにより、激烈な下痢が起こってしまう。半夏瀉心湯に含まれるフラボノイド誘導体は、腸内細菌のβ-グルクロニダーゼを阻害することで、イリノテカンの作用を壊すことなく、下痢の改善を期待できるというわけだ。
以前、サイトで紹介した記事はこちら
→イリノテカンの下痢は下剤で防ぐ!?
このように、漢方処方が癌の治療において効果を発揮し、抗がん剤の副作用の改善に使われるなど、臨床応用が近年盛んに行われている。
次回からは、実際の処方せんから、どのように考えていくことができるかを考えてみたいと思います。
今日はここまでです。最後まで読んでいただきありがとうございました。