今回は、今年から薬剤師になられた桂馬さんから、薬局実習に関する記事を投稿いただきました。
現場を実際にみて感じられたこと、実務を通して大切だと考えたことなど、率直に述べられていると思います。
OSCEや事前のイメージと異なった現場感覚など役に立つことが書かれていると思います。
ぜひ参考にしてみてください。
なお、ご本人から質問や相談にもぜひ乗りたいというお話をいただいているので、学校の勉強、国家試験、実習についてなど何でもききたいことがあればぜひコメントしてください。
私より新鮮、かつ臨場感のあるご意見がいただけると思います笑
では、本編にどうぞ!
〜〜ここから本編〜〜
この春から薬剤師となった桂馬です。
とは言っても、病院にも薬局にも就職していないので、ほとんど患者様に触れる機会はないのですが……。一応医療に関わる仕事はしています。
さて、今回のテーマは薬局実習についてです。
病院実習はカリキュラムがある程度組まれている場合が多いですが、薬局の実習では自分でテーマをもって実習に取り組んでいかないと、ピッキングをしているだけになりやすいです。
目次
【1.偉大な先輩薬剤師】
いきなり脱線しますが、私の身近には偉大な薬剤師の先輩がいます。別に特別権威があるというわけではありませんが、病院も薬局も経験して、薬剤師として高いスキルを持っています。
たとえば薬の期限。箱を触ってなんとなく湿っぽい気がしたから期限を確認したら、切れてた。
え? トブラマイシン点眼? めずらしい。在庫ないけど、これが出るってことは、よっぽど痒いんだろうなぁ。明日届けるじゃなくて、どうにか今日中に渡さないと。
なんかこの処方箋、臭うなぁ。絶対何かおかしい。あ、適用外治療が入ってるから、混合調剤になってるのか。
このような感じで、とにかく薬に強いのです。この方の口癖は、「変な処方箋は臭いがする」で、監査で間違いを見つけだすスキルは抜群でした。
【2.目指す薬剤師像は?】
薬学部5年生ともなれば、専門知識も少しずつ増え始め、就活の時期も近づいています。あなたはどのような薬剤師になりたいのでしょうか? 目指す薬剤師像をはっきりさせることも、実習でとても大切なことだと思います。
私は9月から薬局で実習をしていましたが、きちんと調剤をできる薬剤師になりたいと思っていました。
処方箋を見て、正しく処方意図を理解し、必要があれば疑義照会をして、正しく薬を薬袋に入れる。
調剤の時点で間違っていれば、どんなに優れた服薬指導も無意味です。処方意図を理解せず口先三寸で服薬指導をしていたら、ほとんど詐欺師と変わりません。
薬剤師は薬の専門家。まずは薬について正しい知識を持ち、正確な調剤をできることが、医療機関で薬剤師をする上で大切だと考え、実習に取り組んでいました。
【3.処方箋を読む】
特に意識していたことが、きちんと処方箋を読むことです。すこし例をあげてみましょう。
・マクロライド、ビオフェルミン
→どの科から出ているのか。マクロライドの投与量、期間は? 低容量短期間や、通常容量長期間になっていないか。ビオフェルミンは、きちんとRになっているか。
・ジルチアゼム(ヘルベッサー)
→おそらく心房細動。併用薬は? 抗凝固薬を使っているなら、出血傾向は見られていないか。
・ビソプロロール(メインテート)
→まず容量は? 0.625mgならば、心不全。ただし、増量しなくて大丈夫なのか確認しないといけない。他に心房細動の可能性もある。あるいは単純に高血圧に使っている可能性も。それらの複合の可能性も。薬歴を確認。
・リマプロスト(オパルモン)
→まず科を確認。脊柱管狭窄症を疑う。循環器なら血栓症も。
ほとんど、ノートから出してきました。考えていることは、
・病態に対して正しい処方なのか
・薬物の投与方法について、正しい処方なのか
ということです。
処方箋を読む→病態を考える→患者様に最適なのかを考える。このステップを繰り返すことは、薬局実習を無駄にしないためにも、絶対にやった方がいいと思います。患者様のためはもちろん、国試でも役立ちます。
ちなみに、意外と学生でも疑義のある処方箋は見つけられます。
・レボフロキサシン錠の投与日数が14日
・耳鼻科からテオフィリンが出ていた
・アンケートの文字が震えているのに眼軟膏が出ていた
このへんは、実際に実習中に私が見つけた疑義です。薬歴を確認したり、電話をかけたら問題ない場合も多いですが、それでもめげずに探していきましょう。
【4.服薬指導の注意点】
薬局実習に行く前に、服薬指導のスキルアップを目指している学生の方も多いと思います。ただし、手早く服薬指導を行うことが、優れた服薬指導になる場合もあるということは、知っておいてください。
たとえば、39℃の発熱をしている方に、5分間も立たせたまま服薬指導をすることは、本当にいいことでしょうか?
バスまであと5分。このバスを逃したら、次は30分待ち。処方はアダラートCR、クレストールのDo。OSCEのように5分もかけて服薬指導したら、患者様はどう思うでしょうか?
少なくとも私の考えでは、どちらも手早く服薬指導をした方がいいです。
薬物治療はあくまで手段であり、本当の目的は患者様健康を守ることであることを、忘れないでください。毎回同じ時間をかけて服薬指導をするのではなく、患者様に合わせて適切な時間で服薬指導をするのも、大切なスキルです。
毎回同じ時間で同じような服薬指導をするのであれば、紙や機械で十分です。
【5.まとめ】
長々と書いてきましたが、結局大切なことは、目的意識を持って薬局実習に臨むことです。
自分はどんな薬剤師になりたいのか? そのために何をしなくてはならいのか?
ただ実習をこなすだけでなく、自分の頭で考えながら実習をすることで、実りの多い実習にすることができると思います。
最初は失敗も多いと思いますが、一歩ずつ薬剤師としての階段を上がっていってください。
【※お知らせ】
つい最近まで薬学生をしていた身として、学生生活での疑問等があれば、桂馬の記事にコメントしていただければお答えします。お気軽にコメントしてください。