日本皮膚科学会が作成した「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン」ではADはこう定義されています。
「憎悪・寛解を繰り返す、痒みを伴う湿疹を主病変をする疾患であり、患者の多くはアトピー素因をもつ」
。。。ってどういうこと?
分かりやすくいうと、「とても痒い湿疹ができて、よくなったと思ったらまた悪くなったりを繰り返す病気。」ということです。
「アトピー素因」って何かっていうと、
患者本人や家族が、「喘息」、「アレルギー性鼻炎」、「結膜炎」、「アトピー性皮膚炎(AD)」などの疾患にかかっている、もしくはIgE抗体をつくりやすい体質のことです。
ここでまた、IgE抗体という聞きなれない言葉が出てきましたが、アレルギー症状に関与する抗体です。花粉症や蕁麻疹などもこの抗体が体のなかで異常に作られることで起こります。
AD患者の皮膚の特徴は、
正常な皮膚であれば角質細胞の隙間を埋めているセラミド(角質細胞間脂質)や角質細胞内の天然保湿因子が減少し、バリア機能が低下していることです。
つまり、皮膚がスカスカになって乾燥しているということです。
このためにダニや花粉などの抗原や紫外線などの刺激を受けやすいうえに、表皮内の水分が蒸散しやすい状態となっています。
さらに、バリア機能が低下した状態では痒みを感じる知覚神経が表皮まで伸び、わずかな刺激でも痒みを感じやすくなります。
痒いから患者は角質層を掻き壊し、さらにバリア機能が悪化する。。。
まさに悪循環です。
では、どうやって治療するのか?について説明します。
治療はズバリ3本柱です。
・薬物療法
・悪化因子への対策
・スキンケア
今回は特に「薬物療法」について解説します。
薬物療法の基本は、
1. ステロイド外用薬、タクロリムス軟膏の外用
⇒炎症を抑えて皮疹を改善
2. 抗ヒスタミン薬の内服
⇒悪循環の原因となる痒みを抑える
3. 同時に保湿剤を外用
⇒皮膚のバリア機能を守る
特にAD治療では、症状の程度や部位に合った強さのステロイド外用薬の選択し、十分に塗布して完全に炎症を抑えることが重要です。
専門医の先生方は、ADの炎症を火事に例えることがあります。
「ボヤ程度ならバケツ一杯の水で火を消し止めることができても、大火災ともなれば消防車による一斉放水で鎮火する必要があります。」
AD治療では、この「水」に対応するのがステロイド外用薬なのです。
そして、物語はこう続きます。
「ステロイド外用薬をこわごわと少量ずつ使っていると炎症を完全に鎮火できず、ボヤをくすぶったまま放っておくことになります。そうすると、寝ている間もくすぶり続ける痒みによって少しずつ皮膚を掻き壊してしまい、炭火であぶるように炎症が続き、やがて皮膚が厚く赤黒くなってしまうのです。」
アトピービジネスの業者などは、皮膚がこうした状態になるのはステロイド外用薬を使ったせいだなどと宣伝することがありますが、それは全くの誤解なのです。
専門医の医師のもと、必要な時期にステロイド外用薬などにより適切な治療を行わないことにより逆に、慢性的な炎症が続いて皮膚の状態は悪化していくのです。
この記事を見て、少しでもアトピー性治療に関する誤解を解いていただけたら幸いです。
患者さんの早い段階での適切な治療ときれいな肌を手に入れられることを祈っています!