ペニシリン系抗菌薬の分類と使い分け

抗菌薬シリーズ第1弾!

やっぱり最初は抗菌薬の原点ともいえる「ペニシリン系」です。できるかぎり、分かりやすくまとめていきたいと思います。

ペニシリン系の合言葉は「グラム陽性菌に!好気も嫌気も」です。

ここでは、詳細というよりも大まかなイメージをつかんでもらえばいいかなと思います。

抗菌薬には開発された順により世代というものがありますが、ペニシリン系はその成分と働きから主に4つに分類できます。

この記事では、それぞれの違いと特徴について把握していきましょう!

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ペニシリン系の4つの分類とは

①古典的ペニシリン

:ベンジルペニシリン(ペニシリンG)

②ペニシリナーゼ抵抗性ペニシリン

:日本未承認

③広域ペニシリン

:アンピリシン(ビクシリン®)、アモキシシリン(サワシリン®)

+ βラクタマーゼ阻害薬が入っているもの

:アンピシリン・スルバクタム(ユナシン®-S)

アモキシシリン・クラブラン酸(オーグメンチン®、クラバモックス®)

④緑膿菌に有効なペニシリン

:ピペラシリン(ペントリシン®)

+βラクタマーゼ阻害薬が入っているもの

:ピペラシリン・タゾバクタム(ゾシン®)

大きく分けてこのように分類されます。

ペニシリン系の基本的な使い方

ペニシリン系は「時間依存型」の抗菌薬です。

詳しくはこちらの記事参照:分かりやすい抗菌薬のPK/PD理論

つまり、MIC(最小発育阻止濃度)といわれる、抗菌作用を発揮するための最低の血中濃度をいかに長く保てるか、が重要な抗菌薬です。

よって、臨床効果を高めるには、1回の投与量を増やすのではなく、投与回数を増やすことが大切になります。

また、ペニシリン系はグラム陽性球菌に対してはPAEを有しますが、グラム陰性菌には有しません。

PAE:一定時間抗菌薬を作用させると、抗菌薬を除いた後も細菌の再増殖が抑えられる現象

主に腎排泄の薬剤ですが、胆汁中にも排泄されるため胆道感染症にも使用できます。マイコプラズマ、クラミジア、リケッチア、真菌、ウイルス、原虫には効果ありません。

ペニシリン系の大まかな違い

古典的ペニシリン(ベンジルペニシリン)

ベンジルペニシリンは、グラム陽性菌に有効であり、連鎖球菌、肺炎球菌、腸球菌に現在でも有効です。

しかし、欠点としてペニシリナーゼ(β-ラクタマーゼの1種)によって分解されてしまうため、ペニシリナーゼ産生ブドウ球菌には無効です。

たとえば、黄色ブドウ球菌は皮膚感染症や感染性心膜炎などを原因菌であり、臨床現場を苦しめています。

こういった菌に対してはペニシリナーゼ抵抗性ペニシリンの適応になりますが、残念ながら日本では未承認なのです。

βラクタマーゼのすごく分かりやすい図
lactamase
(引用:http://molecules.a.la9.jp/penichilin.html)

広域ペニシリン

アンピシリンとアモキシシリンがこの広域ペニシリンに分類されており、大腸菌、サルモネラ、赤痢菌などにも効果がある、ということになっています。

「なっています」というのは、実際には効果がないからです!なぜなら、広域ペニシリンもこれらのグラム陰性菌が産生するペニシリナーゼによる分解を受けてしまうからです。

ということで、現状ではアンピシリンは半減期の長く使いやすいため、ベンジルペニシリンの代用として使用されています。

βラクタマーゼ阻害薬の登場!

こんな状況をなんとかしなければ・・・。そこで、登場したのがβラクタマーゼ阻害薬です。

スルバクタムやクラブラン酸といった成分ですね。これらを広域ペニシリンに加えたことで、ペニシリナーゼに対抗できるようになったのです。

ユナシン®-Sやオーグメンチン®、クラバモックス®の登場により、ペニシリナーゼを産生する黄色ブドウ球菌やグラム陰性桿菌にも効果を発揮するようになったのです。

緑膿菌に有効なペニシリン

最後に「緑膿菌」に対抗できるペニシリンです。これには、ピペラシリン(ペントリシン®)があります。

緑膿菌に大変有効なので、好中球減少時の発熱がみられたときなど、血液内科でよく使用される抗菌薬です。

ピペラシリンもペニシリナーゼによって分解されるので、嫌気性菌には使用できませんでした。

しかし、βラクタマーゼ阻害薬のタゾバクタムを配合したゾシン®の発売により、問題が解消し、副腔内膿瘍など様々な場面に使えるようになりました。

ペニシリン系の詳細な特徴

ここからは、各薬剤の細かな特徴を箇条書きに挙げていきます。

ベンジルペニシリン(ペニシリンG)

・ペニシリナーゼに不安定のため、大半が耐性化している黄色ブドウ球菌には使えない。

・ペニシリナーゼ産生菌がみられない下記の菌群には、現在も強い感受性を示す。
⇒肺炎球菌、A群溶血性連鎖球菌・嫌気性連鎖球菌(ペプトストレプトコッカス属)などの連鎖球菌、髄膜炎菌

・臨床的に用いられる感染症
⇒肺炎球菌による肺炎、連鎖球菌による感染性心内膜炎、髄膜炎菌による髄膜炎、スピロヘータによるレプトスピラ病

・このほか、腸球菌感染症、梅毒、アクチノミセス症、リステリア症、クロストリジウム症などに用いられる。

広域ペニシリン

アンピリシン(ビクシリン®)、アモキシシリン(サワシリン®)

・抗菌スペクトルがグラム陰性桿菌にまで拡大されたが、ペニシリナーゼに不安定のため、単体では実質的にグラム陰性桿菌には使用できない。

・グラム陰性桿菌では、プロテウス・ミラビリスにしか効果がない。

・よって、基本的には古典的ペニシリンと同じ活性となるが、血中半減期が長いために臨床では選択されることが多い。

・アンピシリンは髄液への移行が良好なので、乳児や高齢者でリステリア症が疑われるときなどに他剤と併用される。

・腸球菌に対する感受性は、現存の抗菌薬でアンピリシンが最も優れているため、腸球菌による感染性心内膜炎に対してはゲンタマイシンとの併用で用いられる。

・アモキシシリンは腸管からの吸収がアンピシリンよりも良好であり、内服薬ではアモキシシリンが選択される。
(内服後の血中濃度はアモキシシリンの方が2倍以上になると報告あり)

・伝染性単核症の患者には禁忌
⇒ EBウイルスによる伝染性単核症であった場合に、使用すると高頻度(90%以上)にひどい皮疹がおきるため

広域ペニシリン+ βラクタマーゼ阻害薬

アンピシリン・スルバクタム(ユナシン®-S)、アモキシシリン・クラブラン酸(オーグメンチン®、クラバモックス®)

・βラクタマーゼ阻害薬を配合することで、ペニシリナーゼ産生菌を含む様々な細菌に効果を示すようになった。

・広域ペニシリンに耐性化した大腸菌、肺炎桿菌、インフルエンザ菌、黄色ブドウ球菌、プロテウス・ブルガーリス、モラクセラ・カタラーリスにも効果あり。

・嫌気性菌であるバクテロイデス・フラジリスにも効果が期待できる。

・アモキシシリンとクラブラン酸の配合率は、オーグメンチン®が2:1、クラバモックス®が14:1。クラバモックスは下痢の原因となるクラブラン酸を減らし、アモキシシリンの配合量を多くしている(らしい)。

・伝染性単核症の患者には禁忌

ピペラシリン(ペントリシン®)

・緑膿菌だけでなく、腸内細菌(大腸菌など)にも抗菌スペクトルをもつ。

・ペニシリン系なので、腸球菌や連鎖球菌にも効果あり。

・伝染性単核症の患者には禁忌。筋注用製剤にはリドカインまたはアニリド系局所麻酔剤が含まれているので、それら成分の過敏症に注意する。

ピペラシリン+タゾバクタム(ゾシン®)

・ピペラシリン:タゾバクタム(βラクタマーゼ阻害薬)=8:1で配合した薬剤。

・ペニシリナーゼを産生してピペラシリン耐性となったメチシリン感受性黄色ブドウ球菌、グラム陰性桿菌、嫌気性菌(バクテロイデス・フラジリス)にも効果が期待できる。

・伝染性単核症の患者には禁忌


以上、ペニシリン系抗菌薬の基礎部分についての復習でした。

参考になれば幸いです!

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