スタチン系薬剤の横紋筋融解症はなぜ起こる?【メカニズム】

スタチン×横紋筋融解症

スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)
といったら、「横紋筋融解症」というのは
薬剤師の間ではなぜか強調されます。

発生頻度は「ごくまれ」とされていますが、
それっぽい症状や所見にあたることは
思ったよりあるなあという印象です。

よく使われる症状の表現は、
・手足が重いような筋肉痛
・赤っぽい尿
といったものが挙げられます。

ただ副作用がなぜ起こるの?というのは、
横紋筋融解症に限らず知らないこと
が多く、なかなか説明できません。

今回は現在考えられているメカニズム
について少し詳しく説明していきたいと
思います。

横紋筋融解症では、
「骨格筋=横紋筋」の細胞が
融解・壊死することにより筋肉の痛みや脱力を生じます。

筋細胞は、他の細胞と同じく、
コレステロールなどの脂質と蛋白質で構成
される「細胞膜」と、主に蛋白質からなる「細胞質」でできています。

筋細胞はCaイオンの刺激により、
「ATP」をエネルギーとして使用して、
収縮と弛緩を繰り返します。

ATPはNADHやユビキノンといった
補酵素の力をかりて酵素によって合成されます。

ここで、スタチン系薬がどのような作用
をしているのでしょうか?
以下のような説明があります。

①スタチンによって筋細胞の細胞膜の
コレステロールが低下し、細胞膜が不安定化する。

②スタチンは、メバロン酸からコレステロール
の合成を妨げると同時にユビキノンの合成も妨げる。
   ↓ ↓ ↓
ユビキノンは筋細胞でATP産生の補酵素として働いて
いるので、エネルギー産生に影響がでて横紋筋融解症を誘発する。

(関連記事:https://next-pharmacist.net/archives/345

細胞膜のコレステロール低下も
ユビキノンの合成阻害も、スタチンの
「薬理作用」そのものによるものと考えられます。

つまり、一つの考え方としては
薬の効きすぎによるものと考えられますし、
もともとの個々の筋肉の余力的なものとも考えられます。

一方で、薬理作用以外にも、
アレルギー性を示唆するデータや
薬物毒性を示唆するデータもあるようです。

結論としては、断定はできませんが
薬の「副作用がなぜ起こるのか?」
という視点は薬剤師としてもっておきたいところです。

また、トピックがあれば紹介したいと思います。
では!

参考:どんぐり式 薬局副作用学のススメ 「まず疑え」から始めよ (日経DI薬剤師「心得」帳)

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