在宅医療の「陰」と「陽」

zaitaku

最近になって「在宅医療」
という領域に少しずつですが
取り組む機会をいただくようになりました。

まだまだ経験も少なく、
思考も浅いかもしれませんが
今後の展望と問題点について考察し、シェアしたいと思います。
あくまで「イチ薬剤師」として。

まず「在宅医療」という言葉を
聞いたどのようなイメージをもつでしょうか?

確かに普段の薬局対応と比較すると
報告書や書類の作成など戸惑うことも
あるかもしれません。

ただ、実際に薬剤師が行うことは
普段の業務を大きな違いはありません。

患者との対応が「薬局」では
なく「患者の自宅」で行われるだけで、
必要な知識、やるべきことが大きく変わることはありません。

現在はマニュアルなども
整備されてきたため、当初よりも
やる気さえあれば開始できる状況になってきています。

私は働き始めてから、
割と身近に在宅業務があったので
そんなに難しいイメージはありませんでした。

しかし、経験がないと、
”敷居の高いもの”という認識がある
という話も耳にしますが、最初はだれでも経験ゼロです。

まずはなんでも「やってみる!」
という姿勢が大切で、クオリティや中身
はそこから積み上げていくものだと思います。

在宅業務には、
「医療保険」と「介護保険」
という違いはありますが「報酬」が発生します。

現状では1人につき500点。
つまり5000円となっています。
(施設など細かい点は省きます)

そして、今後は「在宅医療推進」
という国の方針に従って
この点数は増額となるそうです。

で、まあこの流れは、
今の医療を考えると必然ともいえる
状況でしょう。

病院では残念ながら
すべての”入院レベル”の患者の
面倒をみられなくなってきています。

今後は多くの人が
病院ではなく、慣れ親しんだ「家」で
最期を迎えるようになっていくでしょう。

それに伴って、
「家庭」である程度の医療を行う
「仕組み」というものが必要になるは当然です。

それを支えるのが
「在宅医療」というわけです。

基本的には医師が訪問診察し、
必要な薬を処方して、
それを薬局がお届けして管理します。

また看護士、介護士、ケアマネージャーなど
非常に多くに人の協力により初めて成り立つものです。

これが大まかな流れでして、
実際にやってみて。。。
という話をこれからしたいと思います。

まず、はじめの第一印象。
「非常に効率が悪い」
ということです。

これは客観視したときに
どうしても問題となってくる
ことと思います。

なぜこれほどまでに
効率が悪く感じてしまうだろうか?

少し考えてみますと、それは
現在の医療の効率性との対比
によるものと感じます。

こと、薬局について考えてみると
その異常な「効率性」に驚きます。

それぞれの店舗での差はあると
思いますが、一人の患者さん
に対してそのくらいの時間が使われているでしょう?

早ければ数分、
煩雑な一包化調剤で数十分という
ところでしょうか?

これは患者さんが来局して
薬を渡すまでの時間です。

では、在宅ではどうかということを
考えると。。。

・薬を調剤する時間
・出発の準備~患者宅まで移動
・報告書類作成
・その他、電話などのコミュニケーション

もちろん件数が多くなれば
効率性はある程度高まりますが、
一人に対して、少なくても数十分~数時間はかかります。

特に田舎で在宅を行おうとすると
移動だけで1時間単位でかかることも
しばしばです。

在宅中は
薬剤師が外出するため、
薬局内の業務負担は増加します。

そのため、必要に応じて
薬剤師を増員する必要があります。

薬局は医療機関ですが、
公共施設ではありません。
あくまで一般企業なのです。

このような現状を考えたとき、
はたして在宅業務を行うだけの
人員的にも、経費的にも
「余力」があるのかと言われると疑問です。

「必要とされること」と
「できること」とは違います。
両者のメリットが一致してこそ
物事は行われるのです。

この原理に従わなければ
それは「公共事業」です。
この側面に折り合いがつかなければ
環境整備は難しいのかなという気もしています。

と、ここまでは
ちょっとデメリットを強調した
内容になってしまいましたが、
ここからは在宅の「陽」の部分について。

まず、在宅は”おもしろい”です。
これまでの医療というのは、
病院、薬局という患者からみればアウェーな場所で
行われるものだったように思います。

薬局でいうと、
患者に薬を手渡した後は、
どのように飲んでいるかは分からないわけです。

確かに聞き取りは行いますが、
その内容が患者の普段の現状を
正確に表わしているかと言えば?。。。

在宅では、患者の「ホーム」に
お邪魔して、実際に薬をどう管理して
服用しているのか?が直接自分の目で見られます。

これが、
すごく大切な視点ではないかと思います。
薬を渡すことが目的ではないのです。

そして、
個々の患者の「生活感」というものが
すごくリアルに感じます。

患者の理解度であったり、
生活力であったり、
衛生状況だったり
立地的な状況だったり。。。

それらの情報が実際に自分の
目と耳と肌で感じます。

やはりそれらは薬局のカウンター
越しでは分からないことです。

そういった情報を踏まえて
どのように患者に対して
アプローチできるか?という新しい視点も見えてきます。

まだまだ薬剤師としても
具体的にどんなことができるのか?
は勉強していく必要があるなと感じています。

その視点から普段の業務を
行うことで、また違った対応に結びつく可能性も感じています。

そして、2つ目。
それは「コミュニケーション」です。

この意味は「患者」ではなく
「そのまわりの人」です。

最初に書きましたが、
在宅を行うには、医師、看護師、介護士、
薬剤師、ケアマネなど多くの医療者、
そして何より家族の人の協力も必須です。

つまり、彼らスタッフや家族との
コミュニケーションや面識は不可欠となってきます。

逆に言うと、
これがメリットです。

なかなか薬局の中だけで
働いていても多職種との交流は
拡がっていきません。

しかしながら在宅に取り組むと、
必然的に多くの方と協力せざるを得ない
状況になります。

こういった繋がりから、
よりよい治療へのヒントとなったり
ビジネスチャンスを得るきっかけとなることもあるでしょう。

つまり現状の在宅医療は
短期的な視点でみるのではなく、
そこから広がる可能性にかけるという意味合いも強く感じます。

今後、何か行動しなければ
医療業界もジリ貧となっていく
のは疑いようのないことと思うので、
「在宅医療」に取り組むのもひとつの道と思います。

もちろん医療人、薬剤師として、
自分の知識や経験を活かせる
場所になることも有意義なことです!

ちょっと長くなってしましたが、
今後間違いなく広がる「在宅医療」
について考えてみました!
では、ありがとうございました。

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コメント

  1. 確かに薬局は閉鎖的な側面が強く、在宅となると敷居が高くなりがちですしゼロからのスタートは不安です。もっと「陽」の部分に焦点を当てて新人研修や薬学教育に力を入れて欲しいですね。かと言ってむやみやたらの在宅も困りますがそのブレーキが今回の診療報酬改定なのでしょうか。それにしては行き過ぎな感がしますけどね。

    • しゅがあ より:

      コメントをいただきありがとうございます!
      確かに”興味はあるけど、できるか不安”という薬局は多いのかもしれません。実際に、在宅を行っている会社の中であっても、知識があるのは実際に在宅業務を行っている人達だけ、という場合も多いと思います。
      「研修・教育」の面でも、まだまだノウハウのある人の絶対数が少ないので時間がかかるかもしれません。
      なので、会社の壁を超えた繋がりをもっと増やしていかなければ。。。と思っていたりもします^^
      ご指摘の通り、形式ではなく、質・内容を伴った在宅業務を行わないと、また「不要」と言われてしまう可能性もあるので危険ですね。

  2. 猫好き より:

    在宅医療の陽と陰についての、記事を読ませて頂きました。
    在宅医療への移行は、そもそも国が、病院完結型から地域完結型(?)への布石として始まられたものと理解しています。が、在宅への移行率が低率であることをご存じですか。
    両者の利益の一致があって初めて理解され、開始される在宅医療ですが、地方での医師不足が顕著になっているこのご時世に、在宅医療において看取りがなされるのはかなり少ないと思います。私の父も医師をしておりますが、田舎における在宅への移行は厳しいという見方をもっています。これは、現実的に今はかなり是正されたと言われている田舎ですが医師がすぐには駆けつけられない場所もあること、家族の協力が得られないところが多いのが現実なんです。家族が患者のことを一番見ているしわかっているからこそ協力を取り付けるのは容易いことかもしれません。しかし、本当にどれだけの世帯が在宅医療を行いたいと思っているのでしょう。結局は医師が来れないからといって、
    救急車を呼び、仕方なく病院の医師の死亡診断を受け、事件性がないかの確認を取った後に帰されることになるのが現状です。ほとんどの場合、老衰による死亡であるといいます。病院の療養型病床が最後の砦になっている節が否定できない現状も踏まえると、
    在宅医療を考えるにしても、家族が患者を家に置いてやれないという現状もあると考えないといけないのではないでしょうか。私も将来は、在宅医療に貢献していきたいと思いますが、その前に、本当に患者さんとその家族が何人構成かとか、地域において全体を俯瞰する目を持つことが重要ではないかと思います。在宅医療を始める前段階の是正を根本から考えたうえで行うことが重要ではないでしょうか。

    • しゅがあ より:

      私自身、在宅医療そのものに関しては必要だという立場ですが、もっと包括的に見ないといけないだろうという思いはありますね。

      それには、「人間」「人生」というのものを大きな視点で見る必要があると思っています。

      簡単にいえば、薬物治療で延命することは本人や家族にとって望まれることか?というシビアな問題から、金銭面に関することまで幅広い問題について。

      また、「投薬・手術=医療」という現代医療の根本から考える必要があるわけですが、これはすごーく長くなる予感がするので、また今度ですかね(笑

      要は、「高い薬を飲ませる=人を助ける」という単純で凝り固まった思考を医師をはじめ医療人が見直すことが大切だよなと最近は思っています。

      高齢者に、何十種類も薬を飲ませて、ご飯も食べられないくらい飲ませて、延命している=これで私は人を助けている・・・
      ってほんとにそうなのかなぁと個人的には思います。

      こういう視点をもってしまう私は、現代医療にはつくづく向いてないな~って思います(笑

      正直、早く違う道があれば退きたい気持ちになっているのは、ここだけの話です^^;

  3. 猫好き より:

    コメントありがとうございます。
    なるほど…、私の考えに通じるところもありますね。
    少し補足しますが、地域全体を俯瞰する目を持つことが必要と記載させて頂きましたが、
    この地域全体というのは、地域の高齢者がどのように最期を迎えていきたいのかということを、きちんと認識して、行っていくうえで必要であると考えてのことです。
    本当に人としての尊厳ある暮らしを最期まで送らしてあげれるところは、まだまだ少数派ではないでしょか。無医村でも、医師が駆けつけながら、地域との関わりを通して、最期まで元気で逝ったという人もいるようですが、本当にこのあるべき姿で亡くなられてる方がどれだけいるのかとも疑問が残りますしね。しゅがあさんの気持ちよくわかります。医療イコール人助けは確かに正しいですが、それ以上に大事なのは、その人がその人らしく生きていく手伝いを行うのも医療の一つではないでしょうか。私も今後実習でそこのところを考えていくことの必要性を感じています。

    • しゅがあ より:

      猫好き さん

      私たちの視点も、あくまで世界の「一側面」であって偏見や私情が必ず含まれています。

      それを忘れて自分の主張ばかりしていたら、ただの自己中なだけですからね^^;

      ただ一方で、私利とは関係のないところから湧いてくる違和感や疑問というのは、おそらく何らか意味のあるものではないかと感じているのです。

      私自身もこういった発言や発信をしたところで、自分の得になることは正直ありません。(批判されることはあるかもしれませんが笑)
      いろんな思惑がある医療(社会)の流れになんとなーく乗っかって生きていくことだってできるのです。

      猫好きさんもこれから実習・社会にでていく中で、いろいろな世界の側面を見ていくことになると思います。素晴らしい部分も、そうでない部分も含めて。

      そのときにまたどういう想いをもったのか、正直な気持ちを聞かせてもらえると嬉しいです。

      私自身も、自分のできることを自分のステージで頑張っていきますので。

  4. 猫好き より:

    わかりました。実習によって医療の在り方を深く考えるきっかけになると思います。
    病院・薬局の実習を通して見えてくること(いい面・悪い面を含めて)がいろいろあると思います。その時、何かを気づきを得ることになると思いますし。
    しゅがあさんやいろんな人とのつながりを持ち、医療というものについてその側面をよく知ろうという思いをより強くもつきっかけを持てたことを嬉しく思います。
    どのように思ったかを、またの機会にでも、お伝えできるように実習において、積極的に医療現場の実情を知ろうという気持ちで頑張っていきたいと思います。