歯肉増殖とは？原因となる薬・メカニズム・予防法は？

てんかんの患者さんからこんな訴えがあったときには注意です。

「最近、歯磨きのときに出血することがあるんだよね。」

そんな訴えがあったときには、「歯肉増殖」の副作用を疑ってみましょう。

こんな風に歯ぐきが腫れていませんか！？
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引用：wikipedia

一般的にはあまり馴染みのない副作用かもしれませんが、別名で歯肉肥厚、歯肉肥大、歯肉腫脹などと呼ばれることもあります。

今回は、この副作用について考えていきましょう！

どんな薬で起こる？

現在、多くの報告がある薬剤としては、フェニトン（抗てんかん薬）、シクロスポリン（免疫抑制剤）、カルシウム拮抗剤（主にニフェジピン）などがあります。

その中でもフェニトインは、古くから歯肉増殖の発現が知られていた薬です。頻度に関しては、薬剤や調査方法によってかなりバラツキがありますが、数％から数十％ともいわれています。

もちろん程度の差があると思いますが、思いのほか多くの方で起こっていて、実は気づいていないというケースもあるかもしれないので注意が必要です。

これらの薬は、構造が似ているかといえばそんなことはないですし、薬効についてもバラバラです。

しかし、結果的に似たような臨床像を示すことから、何らかの共通の作用があるのかもしれません。

そのメカニズムは？

歯肉増殖の具体的な症状としては、歯間乳頭部を中止に歯肉が増殖していき、歯牙を覆うように厚くなっていきます。

これらの増殖した歯肉は、通常ピンク色で硬く、炎症は起こしていませんが、中高年者では炎症を併発して赤く腫れていることも少なくありません。

また、歯肉増殖によって、歯周ポケットが形成されるため、出血しやすくなったり、強い口臭の原因になったりすることがあります。

よって、歯肉増殖が認められた場合には休薬することが原則になります。

試験の結果

病理学的にこの部分を調べてみると、増殖した歯肉の結合組織において、繊維芽細胞の増殖とコラーゲン量の増加が確認されています。

また、歯肉由来の繊維芽細胞を用いたin vitro（実験室での試験）では、フェニトン、ニフェジピン、シクロスポリンを添加すると

・繊維芽細胞の増殖

・コラーゲン産生の亢進

・コラーゲン分解酵素であるコラゲナーゼの活性低下

が起こることが確認されています。

これらの調査結果から、薬剤性の歯肉増殖には結合組織のコラーゲンが関与していると考えられています。

また、少し面白い報告として、ニフェジピンの濃度を調べてみると、歯肉溝の濃度が血中濃度よりも高くなっていたという報告もあるようです。

もしかすると、これらの薬は体内分布が特徴的であり、歯肉への集積性が他の薬剤よりも高いのかもしれません。

ということは、歯肉以外にも似ている組織で同じような組織増殖が起こっている可能性はあるかも・・・？

歯周病でもともと炎症を起こしたところに所見がみられる・・・

ということは・・・

炎症部位ではpHが酸性に傾いている？炎症に関わる免疫細胞？血流増加？・・・そういった条件がそろって特定の薬剤が歯ぐきに集積して、歯肉増殖を起こすのだろうか・・・！？（ココ妄想です＾＾；）

予防はできるか？

歯肉増殖が起こった人を調べてみると、薬の投与以前から歯周疾患があったという指摘があります。

また、歯がない部分には歯肉増殖がみられないことから、予防や治療としてプラークの除去が有効と考えられました。

実際に、ブラッシング指導やスケーリング（歯石の除去）といったプラークコントロールによって、Ca拮抗薬による歯肉増殖を軽減して、服用を継続できた例も報告されています。

なので、すぐにできる対応としては歯と歯茎の境目を中心に、しっかりと歯磨きをして口腔を清潔に保ってもらうということが大切ですね。

ビタミンCが効く？

ブラッシングに加えて、歯肉増殖の予防・改善のためにビタミンCが処方されることがあるようです。

これはin vitro試験で、フェニトインによる歯肉繊維芽細胞の増殖をアスコルビン酸が抑制したという報告に基づいているようです。（ただ、臨床的に証明されているというわけではないようです。）

ただ一方で、ビタミンCはコラーゲンの産生に関わっていて、ビタミンＣ欠乏患者に投与すると、結合組織でコラーゲン産生を増加させて、歯肉出血を改善します。

とすれば、コラーゲンを増やすという意味では作用がしっくりきませんが、実際には使われることもあるようなので知っておくとよいかもです。

それでは、今回はこのあたりで＾＾

最後までお読みいただきありがとうございました！