本日、ケアマネと薬剤師による地域サミットに参加してきた。
そこでの議論から生まれた「地域が幸せになるお薬手帳の使い方」を忘れないうちに書き留めておこうと思う。
お薬手帳のことなんて、耳にタコができるくらい聞いているよっていう先生方も多いと思うがちょっと待ってほしい。
本当に、お薬手帳を”生かせているか”?死んだツールになっていないだろうか?
ぜひ、この拙い記事を読んでもう一度考えてみてほしい。
目次
アメリカのお薬手帳はどうなっているか?
先日、参加したセミナーではアメリカの薬局業界について話を聴くことができた。
そこで感じたのは、アメリカは徹底的に「合理的」な国だということだ。
まずアメリカでは、処方せんが9割以上電子化されているそうだ。
医療機関から、医療ネットワークサーバーを介して患者が希望する薬局にデータが直接転送される仕組みだ。
その患者の「すべて」の服用薬のデータがサーバーに蓄積され、相互作用や重複処方などはものの数秒でチェックされ、問題が検出されれば処方元に即座にフィードバックされるしくみになっている。
私は、以前から医療の安全確保には、医療従事者のコミュニケーション能力云々に頼るのではなく、「システム化」が前提だと考えていたから、アメリカの状況を聞いて非常に感銘を受けた。
一方、日本でもちょうど先日に電子処方せんの法整備がすでに整ったところらしい。
しかしながら、そのガイドラインをみるに、また現場の知名度を知るに、まだまだ実現しそうにない。
今後も、当分の間は「人」に頼りきったある種危うい医療が行われていくだろう。
ただ不満ばかり言っていても仕方がない。
今あるソースをいかにして最大限利用していくかを考えることも重要だ。
そして、今日の地域サミットで1つのアイデアが浮かんだので、こうやって記事を書くことににした。
紙媒体のお薬手帳も捨てたもんじゃない!?
紙とデータ。
最近の世界の流れでは、すべての情報が紙から電子データに移行しつつある。
分かりやすいところでいえば、マンガや小説はKindleに移行しつつあるし、奈良のとある有名進学校では、その日の板書が個人のタブレットに送信されて授業を行うらしい。
こうすることで、板書を単に写すという無駄をなくし、先生の講義から得た必要な情報をもれなく書き込む余裕が生まれ、さらに3年間分のデータがたった数mmの暑さのタブレットに保存され、いつでも参照できるというわけだ。
少し話は逸れたが、電子化がもたらすインパクトは非常に大きい。
重要な契約書類などは紙媒体で取り交わされることがいまだに多いが、日常的で使う「情報」はすべてが電子化される方向にあるといっていい。
電子化されれば、かさばることはないし、情報の呼び出しも一瞬で可能だし、必要があれば加工したり、そのデータを利用して新たなシステムを作ることもできる。
形のない電子データは、消えたら一瞬で失われるという不安をもつ人もいるだろうが、クラウドを利用した適切なバックアップ管理をすれば、燃えたり水没すれば使えなくなる紙媒体よりも強固なものとなる。
もはや、紙媒体は単なる資源の無駄遣いと言わざるを得なくなってきた。
だが、お薬手帳の主流はまだまだ「紙」だ。
では紙のお薬手帳は本当に使えないのだろうか?
そのひとつの答えを今日垣間見ることができたのだ。
電子世代と紙世代の狭間に
おそらく、今の若者が高齢者になるときにはお薬手帳を含め、ほぼすべてのモノが「電子化」しているはずだ。
それは、高齢者を含めて「国民みんな」がそれを使えるようになるからだ。
現状、急速な進化を遂げた電子化は、ある一定の世代を置き去りにしてしまっている。
人が時代に合わせればよいと言われればそれまでなのだが、現状が紙と電子の狭間にある以上、それをうまく利用していくほかない。
お薬手帳もその過渡期にある一つの例だと思うが、紙の手帳のよさはズバリ「とっつきやすさ」だろう。
もっと具体的にいえば、字が書ければ「誰でも書き込める」のだ。
この事実は当たり前のようで、ほぼ認識されていないというのが、今回の大きな発見だった。
そして、薬剤師自身も実践している人はきっと少ないはずだ。
お薬手帳で飲み合わせや重複処方を回避できる、というのは当然であるが、これがコミュニケーションツール(交換日記的ツール)になることは盲点だった。
意欲のある薬剤師のなかには、薄々気がついていた人、またはすでに実践している人は多いかもしれないが、薬剤師以外の職種の人にはほとんど認知されていない。
今日のサミットに参加していたケアマネ、介護士の方々は口をそろえて「手帳には書き込んではいけないと思っていました!」と言っていた。
これは、おそらく全国的にも同じ状況だろう。
思わぬところにツールは転がっているものだ。
そういえば、先日、とある方のお薬手帳をみて、他薬局の薬剤師が書き込んだ申し送りを参考にして、患者に確認し手帳に書き込んでレスポンスをしたことを思い出した。
そのときには、薬局間でこういうコミュニケーションがもっとできれば、よい情報共有ができるな、という印象はもっていた。
しかし、なにも薬剤師どうしだけでなくていいのだ。
患者、家族、ケアマネ、介護士、看護師、医師、薬剤師がお薬手帳に書き込んでいけば、とりあえずの共有プラットホームができあがるではないか。
互いに電話や訪問はなかなか敷居が高いし、まとまった時間も取れないというケースも多いだろう。
この方法なら各々の言葉で、疑問点・心配事・伝達事項を非常に円滑に共有できるではないか。(もちろん緊急を要する場合には直接会話は必要であることを書き添えておく。)
将来的には、アメリカのようにすべての患者情報を一括管理、保存して、いつでもすぐに参照できる体制にしていくべきだと思う。
が、おそらく実現までに数十年はかかると予想されるし、それまでの繋ぎとしては十分なアイデアではないかと思う。
今回のポイントは、「お薬手帳への書き込み」を他の職種にも周知させることと、なんといっても薬剤師が自ら実践していく点にある。
具体的な伝達内容については、普段から問題意識を抱えている方であれば、各々のシチュエーションで応用ができるかと思う。
もし、こういった発想がこれまでなかったという方は、ぜひ行動を起こすきっかけにしていただき、よりよい医療の実現につなげていただければ、これ以上嬉しいことはない。
最後までお読みいただきありがとうございました。