週刊現代の「医者に出されても飲み続けてはいけない薬」を飲むべきか、飲まざるべきか?

今朝出勤してまもなく、とある方からお電話があった。

昨日、アトルバスタチンというコレステロールを抑える薬をお渡しした方からだ。

「今朝の新聞で、昨日もらったアトルバスタチンっていう薬が飲んではいけない薬って書いてあったんだけど、本当に大丈夫なの!!?」

最近になって、テレビや新聞などで薬へのネガティブ戦略が活発になってきた。

そういったキャンペーンは、もちろんすべてが嘘という話ではないのだけれど、無責任だ、ということも忘れてはいけない。

そして、条件反射のようにすぐに反応してしまった人というのは、よくよくその背後にある思惑について冷静に考えてみることも大切だ。

薬を大々的に否定した目を引くタイトル→本の売上を狙っている

薬の副作用を激しく強調→副作用のない健康食品を売り込む

こういった発言者の思惑にまで気を配れるか?

そして、自分がそれらの誘導にまんまと乗っていないか?

これを冷静に考えてみてほしい。

そのうえで、最終的には自分で判断する必要があるわけだ。

薬を飲むべきか、飲まざるべきか?

sentaku

これについては、私の考えははっきりしていて、

「飲まないに越したことはない。」

これに尽きる。

薬がすべて異物である以上、必要がないなら体に一粒たりとも入れたくはない。

もちろんサプリメントや健康食品といった「からだの栄養」としての意味を持つものであれば、使い方は難しいがうまく利用すればよいと思う。

だが「医薬品」とよばれるもののほとんどは「栄養」としての意味はもたないから、それは「異物」にほかならない。

だが、実際にはこの異物である「薬」は、世界で年間約100兆円分使用されている。

錠数に換算したらもはや想像もできない。

これほどの薬が、なぜ処方されているのか?

私は、薬の消費は大きく2パターンに分けられると思っている。

飲むか、飲まされるか

この2つだ。

「飲む」というのは、自覚症状がある患者で、頭が痛い、眠れない、下痢がひどい、など何らかの症状に苦しんでいるパターン。

「飲まされる」というのは、体はいたって健康だが、血圧が高いだとか血糖値が高いだとかで、知らないうちに薬を飲まされているパターン。

当然、「飲む」からはじまって「再発しないように飲みなさい」と医者から言われ「飲まさせる」に移行するケースも少なくない。

ともかく、こうやって「薬」は消費されていくわけだ。

で、現代ビジネスの記事では各々の薬に関する「ある事実」をとりあげて批判されていて、何も考えずに読んでいくと、それっぽい思考になっていく。

当然、そういう一面もあるのは確かで、それに賛同するのならば、自己責任でそれに従えばよい。

しかし、ただの週刊誌の1ページだけをみて判断するのはあまりにも安易だということも知っておいてほしい。

そして、いま薬をなぜ飲んでいるのか?ということをもう一度思い返してほしい。

そうすると、「なぜ自分が薬を飲んでいるのか?」という根本的なことについて、思いのほか明確に答えられない、ということにきっと多くの人が気づくはずだ。

こういう記事は、それを考えるきっかけにしてもらえれば非常に有用だ。

結果として、いま飲んでいる薬を飲み続けることなっても、はたまた、危険なものだと判断して飲むのをやめることになったとしてもだ。

私が心から願っているのは、「薬は飲まされるものではなく、自ら飲むものである」ということを多く人に気づいてほしい、ということだ。

でないと、こういう情報に振り回されて、不安な日々を過ごすか、だまされて高額な商品を買ってしまったりするわけだ。

ぜひ、自分の身体と健康に主体的になってほしい。

薬剤師としての私のアドバイス

もし、あなたが、本が読めて、人の話が聞けて、物事を考えることができる健康な人間ならば、アンテナをいろいろな方向に傾けて情報を得てほしい。

医者から処方された薬が、本当に必要だったかどうか?、というのは結果論でしかないから、事前に正解はわからないということを知っておいてほしい。

病気を予防できるのかもしれないし、副作用が起きたり、何か他の病気を引き起こしたりする可能性もある。

少なくとも薬を飲む前には、処方医や薬剤師に聞くなりして、納得したうえで飲むようにしてほしい。そして、効かない薬ははっきりと「効かない」と伝えてほしい。

察しのよい人は気づいているだろうが、医療業界にも「本音」と「建前」がある。もちろん個々の思い込みや現場によるだろうから、一概にはいうことができない。

信頼を構築していない段階では、本当の情報は得られないことも多い。

詰まる所「人を観る眼」と「自ら思考する力」を養うことが、自分の健康を守るということにつながる。

それらの能力をもたない人が、すべて不幸になるということではないけれど、主体的に自分の人生と向き合いたいというのであれば、それは必須の能力だ。

目の前にある薬を飲むべきか、飲まざるべきか?

これは、あなたの人生の生き方そのものといっても過言ではないと私は思う。

P.S.

最初の質問をするときには、知り合い、または家族にいる薬剤師や医師にすること。

でないと、「飲まされる」ケースがほとんどです。

もちろんそれが、よいか、悪いか、答えはないですけれど。

スポンサーリンク

コメント

  1. 猫好き より:

    薬を飲まずに済めばそれこそが幸せと言えます。
    しかし、高齢や基礎疾患を抱えることになってしまうと、そうも言っておれんことです。
    新聞や雑誌に医薬品のリスクを必要以上に煽っていることが多く見受けられますが、そのように煽った後、患者さんに恐怖を植え付けることで、服薬を止めてしまい、最悪の場合、死に至った場合、どのように賠償責任を果たしていくのかと感じてしまいます。
    多くの場合、専門家の監修を受けずに、調べたことをそのまま書いているのではないかと感じてしまうことが往々にしてあると感じます。
    薬剤師や医師といった、医療関係者に不審に思って聞いてくる患者さんに対してなら、
    丁寧な説明を行うことが可能になり、不安を取り除くことにつながりますが、ほとんどの人は、そこに書いてあることを真に受けて、服薬を中止しかねない危険性があるといえるでしょう。
    自分の手で健康を掴むためにはどうするべきなのか…そこをしっかり考えたうえで、きちんと情報収集し、専門家の力を借りつつ、自分なりに吟味する力をつけていかれることを将来、医療系に進む者から、切に願います。

    • しゅがあ より:

      よく考えられていて素晴らしいですね。

      >新聞や雑誌に医薬品のリスクを必要以上に煽っていることが多く見受けられます

      そうですね。一部の副作用を取り上げて、それがさも全てであるように見せるのは間違った手法だと私も思います。

      ただ、副作用に関しては、もし自分自身に降りかかったら、万が一であっても重大な事態になりうること、というのは周知すべきと思います。

      また、薬の効果についても治療必要数(NNT)など分かりやすい指標を用いて、実際にどくらいの恩恵が薬を飲むことによって得られるのか、という説明はすべきと考えています。

      たいしてメリットない人に対して、通院させるために薬を処方するのはナンセンスと思いますので(苦笑

      もちろん医療ビジネス的には…、という観点もありますが。

      まあでも、そこは正々堂々「医療」しましょうよ、と思うわけですね。

      最終的には患者さんが賢くなるしかない、と半ばあきらめています。

      賢くなったうえで、誰を信頼するのか?は各々の判断に任されると思います。

      「資格」に関わらず、有用で正しいことを主張している人というのは世の中にたくさんおられますので。