今回は「製剤」をテーマにして、
最近多くなってきた「徐放錠」
について紹介します。
その中でも、抗うつ薬として
初の徐放錠として発売された
パキシル”CR”錠を取り上げます。
CR錠って何なの?というと、
controlled releaseの略称で、
制御された薬物放出という意味です。
簡単に言うと、
製剤的に工夫することで、
体内で都合のいいタイミングで
錠剤を溶かすことができるということです。
そして、「パキシル錠」をCR錠に
することで、副作用を軽減できる
というわけです。
他の記事でも取り上げましたが、
(⇒SSRI(抗うつ薬)で吐き気がでるの?)
パキシルには「悪心・嘔吐」という副作用があります。
SSRIは、セロトニンの再取り込み
を阻害して、消化管粘膜近傍細胞
のセロトニン濃度を増加させます。
高濃度のセロトニンが、
セロトニン受容体(5-HT3)を介して
嘔吐中枢が刺激されるため吐き気が生じます。
薬物の放出をゆっくりにすることで、
急激な効果の発現を抑えて
副作用も抑えられるというわけです。
実際はというと。。。
治療1週間目における
パキシル錠の悪心発現率が23%、
パキシルCR錠では14%となっています。
約半分の人で悪心は軽減される
という報告ですので、効果が同等で
あればCR錠の方が使いやすいのかもしれません。
◆パキシル錠10mg=パキシルCR錠12.5mg
注意すべきは、
CR錠になるとmg数が増えてる!
ってことなのです。
患者さんにも一度聞かれたこと
があって、薬の説明書をしっかり
見てる方は不安になるポイントなので注意です。
結論から言うと、
パキシル錠(速放錠)の10mgと
CR錠の12.5mgは治療上同等になります。
なぜCR錠にすると用量が増えるのか
というと、ゆっくり放出することで、
肝臓で代謝されやすくなったからです。
つまり、肝臓での初回通過効果
の影響を大きく受けやすくなり、
初回の肝代謝で消失する割合が増えるためです。
◆CR錠のメカニズムとは?
ここからはマニアックな方へ。
CRは錠剤をみると分かるのですが、
黄色と白色の上下2層になっています。
黄色層は浸食性バリア層、
白色層は親水性マトリックス薬物層
と呼ばれます。
実際に薬物が入っているのは、
白色の層で、マトリックス構造から
少しずつ薬物が染み出していくイメージです。
黄色の層には薬物は入っておらず
「薬物層の表面積を減らす」
という働きをもっています。
つまり、白色の層の上側を塞ぐことで、
そこからの薬物の放出を抑えられる
というわけですね。
さらに、パキシルCR錠の錠剤
は全体が腸溶性コーティングが
施されています。
こういったメカニズムにより
CR錠は胃を通過後、腸内で
緩やかに溶出するようになっています。
速放錠と比較して、5-HT3受容体
への急激な刺激が減少することで、
悪心・嘔吐の副作用が軽減されます。
以上、パキシル錠の徐放製剤
についてご紹介しました!
最近では、口腔内崩壊錠など
「実際に飲むこと」を考慮した
製剤開発も盛んになってきています。
薬は創って終わりではなく、
実際に病気の人が正しく飲めて、
健康を維持するというのが目的です。
クスリ界の「ユーザビリティ」
も今後注目されていく分野ですね!
では!