第9回からは、
ちょっと実践的な内容に
入っていきたいと思います。
「使える薬物動態学」
というテーマでやっていきます。
ご興味ある方はどうぞ!
今回は薬物動態学でいうところの
「線形」「非線形」という考え方
について説明していきます。
ちょっとやる気になったので、
図を書いてみました↓
簡単ですが、「線形」とは
図に書いてあるまんまの
意味を指します。
つまり、線形薬物と言われたら
投与量と血中濃度が比例する薬物
のことを言います。
投与量と2倍にしたら、
血中濃度も2倍になるっていう
当たり前の挙動をする薬物のことです。
でも、この現象の根底にあるのでは、
薬物が1次速度で消失するという考え方です。
分からない人は⇒第1回へ
で、ほとんどの薬物は
この「線形薬物」に属します。
だからこそ、
薬物動態学という学問が存在しうるのです。
そして、例外ともいえるのが
「非線形」の挙動を示す薬物です。
図で示した通り2通りあります。
①上昇型非線形薬物
②頭打ち型非線形薬物
これらがなぜ起こるのか説明していきます。
①の上昇型がなぜ起こるかというと
「代謝」が飽和するからです。
薬物量が代謝能力を超えて
しまった結果、代謝能力が限界に
達してしまい、1次速度による代謝ができなくなります。
いわゆる
「キャパ越え」の状態です。
ある一定の投与量を超えると
血中濃度が急激に上がりやすくなる
薬物のことを言います。
例えば、アプリンジンという薬物では、
25mg投与時:Cmax 0.05 μg/mL
50mg投与時:Cmax 0.1 μg/mL
100mg投与時:Cmax 0.5μg/mL
というデータが報告されています。
投与量が50mgを超えると、
代謝しきれなくなり、
血中濃度は5倍にもなっています。
実は、ミカルディス(テルミサルタン)も
このタイプの薬剤に属しています。
40mgを超えると非線形ゾーンに入ってきます。
ミカルディスに肝代謝(胆汁排泄型)
なので、肝障害患者などでは、
さらにカーブは急激に上昇します。
ウルソを併用していたり
していたら。。。
注意が必要ですね!
このように、投与量に対して
からだのもつ代謝能力が低い
薬物が上昇型非線形の動態を示します。
次に②の「頭打ち型非線形」
についてです。
これはちょっとイメージしづらいと思います。
投与量を多くしていったのに、
血中濃度が上がらないって
どういうこと?って思うはずです。
1つ例に出すと、
「バルプロ酸」という薬物が
このタイプに属します。
ポイントは「蛋白結合率」です。
バルプロ酸はアルブミン結合率が
90%以上という特性があります。
つまり、血中に存在する薬物の
ほとんどがアルブミンと結合しています。
逆に言うと遊離型薬物は組織に移行します。
血液中のパルプロ酸濃度が
高まってくると、蛋白に結合できない
遊離型のバルプロ酸分子が増えていきます。
椅子取りゲームみたいなものですね。
参加する人が増えれば、当然ですが
座れない人の割合は高くなっていきます。
で、この結合できない遊離型の
バルプロ酸は血中から組織に
移動してしまいます。
すると、投与量と血中濃度の
比例関係は崩れ、グラフは下に
曲がっていきます。
ここで!
注意しなければならないのは、
あくまで血中濃度が頭打ちになるだけです。
組織にはがっつりと蓄積しています。
ということは副作用がでやすくなります!
なので、パルプロ酸を増量する際は
慎重に進める必要があるわけですね。
大まかな流れは以上になります。
基本的には線形動態ですが、
一部の薬や高い投与量では非線形となることもあります。
こういう観点から、
効果予測や副作用のリスク
などを考えていくこともできます。
以上、「線形」「非線形」とは?
という話でした。
ありがとうございました!