ウルソの薬理・作用機序は?

s-Ursodeoxycholic_acid
今回はシンプルに「ウルソ(成分:ウルソデオキシコール酸)」の作用機序をまとめます。

いままですごくモヤモヤしていたんですが、ある程度すっきりと理解できたのでシェアします。

製造元の田辺三菱のHPでも詳しくみることができるので参考に。

では、いきましょう~!

目次

胆汁酸を理解せよ!

まずは、分かっているようで意外に分かっていなかった「胆汁酸」という物質についておさらいしなければなりません。

食事をすることにより、胆嚢に蓄えられた抱合胆汁酸は腸内に分泌され、食物脂肪の乳化を促進する。胆汁酸のその他の役割としては、体からコレステロールを排出すること、肝臓から異化生成物を胆汁分泌の際に排出すること、乳化した脂質と脂溶性ビタミンを腸内でミセル化して乳糜管系から吸収させること、界面活性剤として細菌の細胞膜を溶解する作用により小腸内や胆管での腸内細菌叢の形成を妨げること、などが上げられる。(wikipedia)

こんな感じで、その構造に由来する作用をしているわけです。

もちろん胆汁酸はただのイチ分子なので、トランスポーターや複雑な酵素のような働きをするわけではなく、単純な「物性学的」な振る舞いをするわけですね。

単純な話では、コレステロール由来のステロイド骨格(=疎水性)と水酸基や水溶性置換基(=水溶性)が、ちょうどいいバランスで分子内に存在しているからこそ可能な働きなのです。

そして、重要なのは一口に「胆汁酸」といっても、複数存在しているということです。それらのちょっとした構造の違いで、その「ふるまい」に大きな差がでるのです。

では、特徴的な胆汁酸について「親水性」の高い順から並べてみます。(-OH基の位置と存在比も表記)

・ウルソデオキシコール酸(UDCA)(-OH基:3α、7β):約1%

・コール酸(CA)(-OH基:3α、7α、12α):約49%

・ケノデオキシコール酸(CDCA)(-OH基:3α、7α):約24%

・デオキシコール酸(DCA)(-OH基:3α、12α):約25%

・リトコール酸(LCA)(-OH基:3α):約1%

このうち、医薬品として使用されている「ウルソ」は、まさにこの「UDCA(ウルソデオキシコール酸)」のことなのです。

つまり、ウルソを飲むということは、外部からUDCAを補給してあげている状態ということになります。

では、なぜUDCAを補給すると、あの噂の「肝庇護効果」が現れるのか、を理解していきましょう!

UDCAがなぜ肝臓を守るのか?

胆汁うっ滞とは

ウイルスや薬物、そしてアルコールなどにより肝機能が落ちてくると、通常は胆管を通って腸内へ滞りなく流れていた胆汁の流れが悪くなっていきます。

これを胆汁うっ滞といいます。ではなぜ胆汁がうっ滞するとよくないのでしょうか?

この答えのヒントが、上の「親水性(または疎水性)」という性質です。

胆汁酸の作用には、”界面活性剤として細菌の細胞膜を溶解する作用”というものがありましたね。これは、当然「細菌」だけに働くものではありません!

なぜなら、胆汁酸は「抗菌薬」のような優等生ではないからです。はじめに説明したように、単なる界面活性剤のようなイチ分子なのです。

つまり、大切な肝臓の細胞にも同様の作用を発揮してしまいます。不幸にも胆汁酸は、自らを産生してくれた肝細胞を障害してしまうのです。

もちろん健康体であれば、胆汁は滞りなくスムーズに流れているため、肝細胞へのダメージはそれほど気になりません。

しかし、何らかの原因で肝臓内に胆汁が溜まった状態になると、その毒性が無視できなくなり次第に「胆汁酸による肝障害」が生じてくるのです。

そして、この「戦闘力」の指標となるのが「疎水性」であり、疎水性が高いほど細胞障害性は高くなります。(単純に細胞膜への親和性が高まるからと考えてよいと思います。)

肝臓を守るには

つまり、どうすれば胆汁酸による肝障害を回避できるか?

方法は2通りあります。

・滞っている胆汁の流れを改善する(=利胆作用)

もしくは、

・なるべく毒性の低い=疎水性の低い胆汁酸の割合を多くする(=置換効果)

この2つの方法があるわけです。

そして、これらの条件をみたすのがウルソデキシコール酸(UDCA)のだったのです。

UDCAは、胆汁酸を胆管に輸送するトランスポーターの発現を促す作用があり、肝臓から出ていく胆汁量を増やす作用があります。これが、「利胆作用」といわれている正体です。

また、単純な話ですが、内因性のUDCAの割合は、もともと1%に満たないほどでしたから、外部からUDCAをどんどん追加してやることで、UDCAの割合は増えていきます。

つまり、毒性の強い疎水性胆汁酸の濃度を、相対的に薄めることができるわけです。なんと原始的!でも効果的!

以上、ウルソの作用機序のうち2つの重要な作用について説明しました。

この他にも、

・サイトカイン・ケモカイン産生抑制作用や肝臓への炎症細胞浸潤抑制作用

・胆石溶解作用

・消化吸収改善作用

などなど複数の作用が知られている、なんともありがたいお薬なのです。

P.S.
しかも、個人的にいいなと思うのは、UDCAという元々体内にある物質を薬にしているということです。

これだったら、アレルギーの心配は限りなく少ないですし、サプリメントや自然療法に近い感覚になるのではないでしょうか?

こういう薬理が分かると、ウルソの効果を発揮させるには、必然的に継続的な服用が必要ということも見えてきますよね。

あとは、肝機能が低下したそもそもの原因を多面的に捉えて、回復できるものに関してはそれを目指し、いずれは薬から離れる。

これができれば、理想の医学に近づく。そういう治療を目指したい。などと思う今日この頃。

ということで、最後までお読みいただきありがとうございました。では、また!

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