地味だけど、
薬剤師の生きる道のひとつであろう、
製剤分野からの話題です。
「おくすり飲めたね」が熱い!
ということと、マクロライドの製剤工夫を
絡めて考えていこうかなと思います。
まず、マクロライドは超・苦いわけです。
クラリスロマイシンの粉砕をしていると、
マスクをしているのに、口がにが!っとなるくらい苦いのです。
(空気中に漂った粉がマスクの中に入り込む
⇒鼻や口から入る・・・)
こんなものを子どもどうやって飲ませるのか?
(大人での耐えられん苦さですが!)
製剤屋さんは日々頑張っているのです。
クラリスロマイシン製剤を例にすると、
以下引用>
その粒子は、原薬をpH5以下で溶解する胃溶性高分子を配合したワックスで包み込んでいるので、pH6.8 程度の口の中では溶けないで、胃に到達して胃酸で溶けるように設計されています。口の中で粒子が濡れると、周囲の環境をアルカリ(pH 約10)にするような物質が加えてあるため薬物が溶けにくくなるのです。さらに粒子の一番外側を甘味料成分で包んでいます。
こんな精密な工夫は施されているのです。
これ、ほんとすごい技術ですよね。
あと人の味覚は嗅覚の影響を
ものすごく受けることが知られています。
鼻詰まっていたら、味しませんよね?
意外にフレーバーというのも
奥が深い分野ではありますよね。
脱線しそうなので、もとにもどします!
「おくすり飲めたね」は
服薬補ゼリーで、薬をまぜて飲ませると
うまくいく場合があるよ!ということで発売されている商品です。
ここで注目したいのが「味」です。
チョコ味、果物味(ブドウ、ピーチ、イチゴ味)
があります。
どれがいいでしょうか。
好みで決めますか?^^
それでは記事になりませんので、
別の角度から!
実はpHが違うのです。
チョコ~7.0⇒中性
果物味⇒3,7⇒けっこう酸性!?
つまり。。。
果物味とクラリスロマイシン製剤
をまぜるとどうなるのか?
本来は胃で溶けるようにコーティング
されているのに、それがゼリーによって
剥がれてしまい、主成分が口の中で溶けだします。
さらに、塩基性物質のクラリスロマイシン
そのものの溶解度上昇してしまうから、
という理由もあります。
結論、果物味はマクロライドには使えん!
ということです。
だまってチョコ一択でいいんじゃないの?
ということでおちつきました。
しかし、中性であるぶん保存性は弱く、
賞味期限:果物味が7日間、チョコが3日間
となっているので、短命であるという欠点も。。。
太く短く生きるチョコが個人的には
好きですが(笑
ちなみに、混ぜてはいけないものは?
スポーツ飲料、リンゴジュース、ピーチジュース
など酸性のジュース、ヨーグルト
⇒果物味と同じ理由
逆に苦味抑制効果があるとされているものは?
・牛乳やコーヒー牛乳、ココア
⇒成分中の油分が苦味の受容体がある味蕾(みらい)
をマスキングするためと考えられている。
・アイスクリーム
⇒それ自身の甘さに加えて、
冷たさで苦味の受容体を麻痺させて
苦味の閾値を変えることによるためと考えられている。
こういうのを科学的に説明できると
専門家っぽい?というか、
マジになってもいい分野かなと思うのです。
軽視されやすいところではあるけど、
薬を使う人にとっては、すごく切実な問題ですからね。
というか、どれだけいい薬も
飲めなかったら、何の意味もないですからね。
比較試験とか、もう台無しです。
こっち方面を極めていけると、
ニーズに応えられるのかなぁ
と思ったり。
P.S.
この間、同僚と後輩と一緒に薬の味見会やりました^^
漢方とか結構おもしろかったですよ。
ぜひ、やってみるとおもしろいと思いますよ!
コメント
余計なことかもしれませんが…
東和薬品のクラリスロマイシンの小児用DSはかなり味が良いです!
本当にマクロライド!?と思ったほど飲みやすく出来ています。