吸入薬の正しい順番とは?

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喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)をはじめ、多くの呼吸器疾患には「吸入薬」による治療がスタンダードになってきました。

そんな中で、2種類以上の吸入薬を併用するというケースも少なくありません。

今回は、そんな時にでてくる疑問「どっちの吸入薬を先に使った方がいいのか?」ということについて考えてみたいと思います。

目次

「β刺激薬が先」は嘘!?

以前(というか今でも言われることがありますが)、ステロイドとβ刺激薬の吸入薬を使っている場合には、「βが先」という話をどこかで聞いたことがあるかもしれません。

なぜか?

β刺激薬は、気管支にあるβ2受容体に作用して、気管支の径を拡張する作用をもちます。

これは交感神経の興奮作用によって引き起こる現象と同じですね。

※自律神経についてもういっかい復習したいときはこちら

気管支が拡張するということは、空気の流れがよくなるということですから、その次に吸い込む吸入薬のパウダーが奥まで入っていきやすいですよね、という理屈なのです。

まあ、これについてはイメージがしやすいですから「そうだよね。じゃあβ刺激薬が先がいいかも」と納得してしまいます。

別に間違いじゃ、ないんです。

でも、意味があるか?と言われればちょっと怪しいのです。

そんなにすぐに気管支が拡張するか?

例えば、発作時に使うメプチンなどの短時間作用性吸入β2刺激薬(SABA:Short Acting β2 Agonist)であれば、数分で効果が出現して、ある程度上記の効果が期待できるかもしれません。

しかし、一方でセレベントのような遅効性の長時間作用性吸入β2刺激薬(LABA:Long Acting β2 Agonist)の場合には、最大の効果発現までは1.5時間程度はかかるといわれています。

つまり、セレベントを先に吸入したとして、間髪入れずに2個目の吸入をしてしまっては、まず意味がないといえるでしょう。

・・・と安易に考えてしまうのも、実はちょっと片手落ちで、

逆にセレベントの作用時間は12時間以上ともいわれているので、毎日継続していれば「そもそも気管支が拡張している状態」にあるわけです。

つまり、結論としてはどっちが先でも効果は変わらないということになるのです。

おまけ:うがいの裏ワザ

ステロイド薬が配合された吸入薬を使ったあとには「うがい」をしろと言われます。

ちょっと調べてみると、うがいの効果範囲についてはいくつか意見が分かれています。ただ、一般的には口腔内感染や嗄声(声がかれる)などの副作用を防ぐためにも、うがいは推奨されています。

具体的には「10秒程度(がらがら5秒・くちゅくちゅ5秒)を2回やる」だそうです。

しかし、実生活においては、こんな本格的なうがいができないこともあることでしょう。そんなときには「唾液を3回テュッシュに吐き出す」でもよいそうです。

これにより、うがいをした場合には2/3程度の効果が期待できるだとか。

患者さんのなかには「うがいができないから、吸入しない」という人もいるようなので、そういう人には耳よりな情報だと思います。(そもそも1回程度うがいを忘れても副作用はでないとは思いますが。。。)

まとめ

今回の結論としては「吸入薬の順序を気にするよりは、まずは吸入の手技がきっちりとできているかを確認する」ということが大切だということです。

もっとも最近は、β刺激+ステロイドなど「複数の成分を配合した吸入剤」が主流になってきているので、順番を考える機会も少なくなっていきているかもしれませんね。

吸入器(デバイス)もロタディスク、ディスカス、タービュヘイラー、レスピマットなどなどいろんな種類が開発されてきています。

どれがいいのか、というのは患者さんの好みの問題も大きいですが、シンプルなものはやはりいいと感じています。教える側も毎日使う側も。

「シンプル操作+誤吸入防止+力いらず」がキーワード。

そして、「いかに弱い吸入力でもしっかりと吸いこめるようにデザインするか?」が重要ですね。このあたりは製薬会社が、しのぎを削って開発しているところだと思います。

Appleとデバイスを共同開発してみてはどうだろう・・・?

こういった製薬以外の他業界との共同開発も今後はおもしろいかもしれません。これは、我ながら良いアイディアかも!?

まあ、そんな話は置いておいて(笑

今回の吸入薬みたいな、ある種の思い込みというか、理論先行というか、そういうことって結構あるのではないかなって思うんですよね。

特に薬剤師って理論好きな人多いと思うんです。そういう人は(僕も含めて)、往々にして視点が狭くなりやすい傾向にあります。

しかしながら、十分に注意しておかないと、その方向性が現実(臨床)から離れてしまっていることってあると思うんです。

だからこそ、何事に対しても一度冷静になって「本当にそうだろうか?」という姿勢をもつことがとても大切だなぁと思います。

では、ちょっとまとまったところで今回のお話はおしまいです^^

それでは、また。

参考:日経DIクイズ5

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