薬学部6年の桂馬です。
先日の薬剤師国家試験を受験された方はお疲れさまでした。
今回は、第103回薬剤師国家試験の受験レポを書きたいと思います。
来年度以降、受験される方の参考になれば幸いです。
少々長文になりますが、お付き合いください。
※2日目に関しては、ほとんど感想になっています
目次
【試験開始まで】
2月の頭ごろに受験票が届き、会場が決定しました。人によっては宿が必須となりますが、薬剤師国家試験受験者であっという間に埋まるので、気を付けてください。
会場はほぼ決まっているので、不安な方は早めに予約してしまうのも手だと思います。
前々日、前日は難しい勉強はせず、「ヤクシ」というアプリで問題演習だけしていました。
そして当日。忘れ物の確認をして、自宅を6時ごろ出発。集合は例年8時50分ですが、1時間の余裕を持ちました。
電車の中で行った勉強は、苦手なD2アゴニストの確認だけです。膨大な範囲なので、青本を開くようなことはしませんでした。
むしろ、頭が真っ白になったときの対処や(ポケットに入れたお守りに手を当てることにしました)、作戦(迷ったら選択肢は変えない、あっさり解く)を考えていました。
一見勉強をしていないようですが、後で助けられることになります。
さて、無事試験会場に到着すると、教室内は同じ大学の学生が結構いました。
知り合いもいて、「案外定期試験と雰囲気は変わらないなぁ」などと思っていました。
ここでも参考書は目を通す程度で、必死の暗記はしていません。
8:50分になると注意が始まります。
注意については試験会場によって違うところがあるようなので、気を付けてください。
【1日目開始!】
~必須~
まずは必須から。目標は75点ですが、70点確保できればいいと思ってスタート。
物化生に苦手意識はないので素直に頭から解きはじめたものの、9問目でフリーズする。
あれ? 亜鉛って何価だったっけ……。
完全に正常な思考ではない……。たしかに2価だとわかってるはずなのに、心の底で「ひょっとして1価だった?」などと謎の考えが生まれる。
たしかダニエル電池って、両方とも2eだよなぁ……と、謎の力技で不安を抑え込みなんとか2価を選んだものの、先行きが不安になる。
案の定、正常な思考ではなく、リウマチが男性の方が多い選択肢に気づけず、意味不明な病態を作り出していました。
ちなみに、必須の時間は、何度もマークミスを確認しています。
普通に確認→普通に確認→5の倍数の問題だけ確認→下から確認を繰り返しました。
ほかのところは挽回もありますが、必須だけは足切りがあるので……。
~理論1~
目標30/60。ここは耐える時間だと言い聞かせてからスタート。
個人的に、理論1をどう乗り切るかが、薬剤師国家試験のキモだと思います。
はじまってみれば案の定物理が難しい。ぜんぜんわからんし、ほぼ捨てだった相図が出題され、比較的自信のあった機器分析がぜんぜんない。
抵抗して化学に進むものの、国試様は手を緩めてはくれず、化学合成の収率を上げる問題が出てきて焦る。
それでも、有機化学は得意なのでねじ伏せていたら、今度は15問しか解いていないのに1時間を過ぎているという別の危機が出現。
ここで一度落ち着いて、衛生・法規に移りました。
一番マズイのは時間不足で衛生・法規で簡単な問題を落とすこと。
みんなができる問題の大量失点だけは絶対に避けなくてはならないので、決断を下しました。
不安は残るものの、生物で実験考察が多いことにも助けられ、適当にマークすることはなく試験終了。
周囲の反応も「難しい」という反応でホッとする。
~理論2~
目標25/45。さっきの理論1に自信がないので取り返したいが、選択肢が嫌らしく、何度も不安に駆られる。
「テルミサルタンはアンギオテンシンⅡを阻害してアルドステロン分泌を抑制し、利尿作用を示す」
……。確かに書いてあることは間違いない。レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系の阻害がARBの本質だ。
けど、利尿まで起こすのだろうか?
解説に、「ARBはアルドステロン分泌を抑制するが、利尿作用はほとんどない」と書かれても不思議ではない。
不安しかないが、ほかに選べる選択肢がないので、なんとか選択する。
薬剤はいつも通り。
病態は……、うん、無理。少しでも選択肢を削って、確率をあげる。
【1日目夜】
正直、不思議な手ごたえだった。
ぜんぜん出来ている気はしないのだが、なんだかんだ言って点数がとれているのが薬剤師国家試験の特徴だとも思っている。
同じような手ごたえでも、模試で225点近く取ったこともあった。
薬剤師国家試験の特徴として、「できる問題は瞬殺、わからない問題を悩んでいる時間が長い」というものがある。
そのため、「なんか悩んでばっかりだなぁ」という印象になりやすい。
試験時間の長さ、医療系資格試験では低い合格率も相まって、ネガティブな印象はさらに深まってしまう。
1日目夜の心境は、「きっとどうにかなってると思うけど、不安で仕方がない」だった。
結局、このままじゃ寝不足で明日に支障が出ると思い、自己採点をしましたが……。
かなり危ない賭けだったと思います。
【2日目の戦い】
前日の夜は、実務の要点集を軽く見た程度。体力勝負なので、睡眠優先です。
2日目は、全体で50問落とす程度にとどめることが目標。基本的に目標は平均点を参考で決めてます。
~実務1~
例年稼ぎやすい実務が、今年は難しい。
トリカブトの症状を忘れていて、かなり絶望する。
簡単に取らせてくれる問題は、ほとんどない。
~実務2~
稼ぎどころだが、薬理は「前問で答えた薬の作用機序は?」というパターンが多いので、雪崩式に間違える可能性もある。
が、裏を返せば1問目がわからなくても次の問題を考えれば解けるパターンもある。
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関節リウマチでメトトレキサート服用中に口内炎がひどくなったときに投与する薬は?
1.ホリナート
2.トファシチニブ
3.デキサメタゾン
4.エポエチンアルファ
5.タクロリムス
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そもそもトファシチニブってなに? エポエチンαは腎性貧血……。
ホリナートも葉酸系だったと思うけど、正確に覚えてない。
ところが、次の作用機序を選ぶ問題で、ヤヌスキナーゼの阻害をしたり、赤血球への分化阻害など、口内炎と関係ない記述がたくさんある。
訴えているのは口内炎だけなので、リウマチのコントロールは特に問題ない。
使えそうなのは衛生で葉酸不足で口内炎って習ったし、このタイプの薬くらい。
よし、ホリナートにしよう。
という感じで選んでばかりでした。
あと、わざわざ今年インターフェロン・リバビリンを出したのは、明らかにハーボニーを警戒している受験生の裏を取ってやろうという心意気を感じました。
~実務3~
R-CHOPがこのゾーンだけで2題出題される。
ずっと思っていたが、過去問から無理矢理ひねった問題が多い。
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69才女性、皮膚科処方箋 四肢に湿疹
Rp.1
ベタメタゾン・d-クロルフェニラミン配合錠
1回1錠 (1日2錠) 朝夕食後 5日分
Rp.2
エビナスチン20mg
1回1錠(1日1錠) 夕食後 14日分
Rp.3
リンデロンV 5g
1回適量 1日2回 朝夕 四肢の患部に
お薬手帳にラタノプロスト点眼
疑義照会すべき処方はどれ?
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緑内障と書かず、お薬手帳にラタノプロストと書いてきた。
それはいいのだが……。
そもそも閉塞性と開放性、どっちの緑内障なのかわからない。もし開放性なら、Rp.1は問題ない。
問題はRp.3。四肢に湿疹が出てて、5gで足りるのか……?
そもそも、Rp.1は本当に5日分なの?
などなどと、いろいろな不安がよぎる。
結局Rp.1とRp.3を選ぶが、答えはRp.1だけでいいらしい。
【自己採点を終えて】
自己採点を終えて、230点は取れていました。それなので、マークミスなどがない限りは問題ないと思います。
1日目夜のところでも書きましたが、とにかく不安に襲われるテストでした。
2日目は問題をそのまま書いていますが、解いている間は不安で仕方ありません。
その1問で、もう1年苦しい国試勉強をしなくてはならない可能性があるからです。
ただ、不安になるのは仕方ないとも思っていました。
今までの6年間の苦労があり、1年に1回しかない人生のかかったテストです。
不安にならない方が不思議なのです。
だから試験中も「あぁ、不安なんだなぁ」と思っていました。
不安を否定しても、どうしようもありません。
それなので、不安を受け入れるようにしていました。
もし、来年以降、薬剤師国家試験を受ける方に今アドバイスするとしたら、
「今から勉強始めたとしても、絶対当日は不安になる」
ということです。
断言できます。
あとは、
「まとめノートは極力作らない」
くらいですね。
私も少し作りましたが、作っただけでぜんぜん開きませんでした。
まとめノートを作りたいという方は、今のうちに6年生の先輩に頼んで薬ゼミの要点集をもらっておくといいと思います。
抜群にまとまりがよく、ほどほどに隙間もあるので書き込みもしやすいからです。
これから薬剤師国家試験勉強を始める方、
やってもやっても途方もなく感じるテストですが、試験本番345問中120問も落とせるテストです。
平均点を取れば確実に合格できるテストなので、自分のペースで落ち着いて勉強していけば問題ありません。
無理することもなく、サボることもなく、頑張ってください。
管理人から
長きにわたる受験勉強、また長時間にわたる国家試験、ほんとうにお疲れ様でした。
非常に臨場感のあるレポだったと思います(笑
皆さんも経験したことがあると思いますが、試験中に今まで当たり前に覚えていたことや考えていたことが突然分からなくなることがあります。
同じ字をず~~っとみていると、その形が変に思えてくるアレですね。
それが発端となり、不安や焦りにどんどん襲われるということがあります。
これに対する対策としては、記憶に「複数の鍵」をもっておくことだと思います。
1つのことに対して、複数の覚え方や関連をつくっておくということです。
ゴロでも論理的な導き方でもいいですし、1つのアプローチで不安になったときにもう一方の覚え方でアプローチしなおすってことですね。
こうすると、本番でパニックになったときでも「確実な記憶」として頼りにすることができます。
国家試験は選択性です。確実に分かる選択肢を少しでも多くつくっておくことで正解率を高めることができるわけですね。
こういう積み重ねが「合格」への近道だと思っています。
また、レポの最後にあったように「まとめノートはつくるな!!」というのがありましたね。
これは以前に私が書いた記事でも強く訴えていますが、試験では「記憶」のみ評価されるのあって、それまでの「努力」については評価されません。
どれだけ綺麗で分かりやすいノートをつくろうが、1点の足しにならないんです。
それよりも参考書に書いてある事実にプラスしたり関連付けるなりして、できるだけ多くの知識を書き込んで汚くしていったらいいんです。
もちろん人それぞれのスタイルがあると思いますが、自信がない人は先輩の言うことを聞いておいたほうが回り道しなくてすみますよ(笑
あとは貪欲にひたすら問題を解きまくって、生きた「使える知識」を身につけていく練習をしてくださいね。
イメージどおりの結果だった方も、思うように結果が出なかった方も、ひとまずお疲れ様でした^^
一息ついて、それぞれの未来に向かってまた羽ばたいていってください!
コメント
桂馬様、国家試験お疲れ様でした。
来年受けることになってしまった私としては、これほど臨場感あるレポはないと思います。今年は難しかったようですし、60パーセント以上の問題数も229問しかないという危険な状態だったようです。教科ごとの繋がりを意識した勉強法がこれまで以上に大事になっていくことを確信しました。私も、問題を解いてそれを人に説明する力が本当にあるかどうかまでをしっかり認識しないといけないのだと感じました。方眼ノートでの勉強の仕方をしっかり認識したうえでの勉強を行っていくことも大事ですが、問題を解き、そこから見えることをよく考えたうえで、これから勉強することが大事であると思います。では。
猫好き様
食べ物の相互作用→納豆・クロレラ・グレープフルーツジュースのように、とにかく丸暗記をしていただけの学生には、しんどいテストだったと思います。
暗記は当然大切(暗記要素の強い薬理・法規は相変わらず平均点も高い)で、過去問がベースにあるのは揺るぎのない事実ですが、きっちり稼ぎたい科目では、深い理解も大切になってきています。月並みな言葉ですが、広い科目をこなすための効率・暗記と、得意科目をつくるための思考・理解のバランスが求められている印象です。
まだまだ先は長いですが、頑張ってください。