解熱鎮痛薬(NSAIDs)を食後に服用する意味は?

「痛み止めは胃に負担が
   かからないように食後に服用してくださいね。」

という指導されることが多いです。

でも、こういう何となく当たり前と思っている
ことが実はしっかり説明できないってこと、
結構あると思います。

今回は、この話題についてちょっとだけ
専門的に考えてみたので興味があればどうぞ。

まず、「痛み止め」って何かということですが、
ほとんどは「NSAIDs」=非ステロイド性抗炎症薬
のことを指していると思います。

そして「胃に負担」というのは、
NSAIDsのもつプロスタグランジン(PG)
の阻害作用によるものを指します。

PGは胃粘膜保護作用、胃酸分泌抑制作用
などの作用を有しています。

よって、NSAIDsのPG合成阻害により
胃におけるPG量が低下すると、
胃粘膜保護作用の抑制、胃酸分泌の亢進などが起こり、
胃腸障害の原因となるわけです。

この作用が主な作用だとするならば、
食後の意味ってさほどないわけです。

なぜなら、PG阻害作用による胃腸障害は、
NSAIDsが一旦腸から吸収された後で、
血液を循環して起こす副作用だからです。

食後だろうが、空腹時だろうが、
このメカニズムならリスクは変わりません。

そして、ちょっと調べてみました。
他に食後に飲むという根拠はないだろうか?と。

ひとつ、それっぽい理由があったので、
紹介します。

NSAIDsって構造的に
酸性と塩基性に分けられます。

塩基性のものは少ししかなく、
・塩酸チアラミド( ソランタール)
・塩酸チノリジン(ノンフラミン)
・エピリゾール(メブロン)
・エモルファゾン(ペントイル)
くらいしかありません。

つまり、ほとんどが酸性の構造をしています。
ここで、化学の知識をつかうと少しだけ納得のいく
メカニズムがあります。

胃内のpH(酸性度)は常に一定ではなく、
食事や時間によってその酸性度が変化します。

食前の空腹時にはpH1~1.5という
食酢よりも強い酸性度を示します。
食事をとるとpHは4~5になりますが、
次第にpHは低くなり、食後2~3時間でまた空腹時程度のpHに戻ります。

さて、NSAIDsはどのような影響を受けるのでしょうか?
酸性NSAIDsは胃内の酸(H+=プロトン)によって、
非イオン型分子になります。つまり脂溶性が高まります。

胃粘膜の細胞膜は脂質からできているので、
脂溶性の高まったNSAIDs(薬物)は
細胞膜を容易に通過するようになります。

細胞内に入るとpHが上昇するため、
再びH+を放出してイオン型、
水溶性に変化して細胞内に蓄積します。

この蓄積したNSAIDsが浸透圧の変化など
何らかの細胞への影響を受けることによって、
細胞機能を障害する可能性があると考えられています。

このような機序によって、
胃粘膜関門が破壊され、H+の逆拡散が起こり、
その結果としてびらんや出血などの胃粘膜障害が生じるのです。

とまあ、ちょっと強引のような気もしますが、
このような説もありましたので紹介しました。

でも、この機序は単純な浸透圧の問題なので、
NSAIDs以外の薬でも十分に起こりうる問題です。

逆に塩基性の薬であれば、
胃内pHが低い(酸性が高い空腹時)
の方が都合がいいということになります。

このメカニズムによる影響が
いったいどのくらい寄与しているのか、
という情報はみつけられませんでした。

結構、患者さんにとって
「食後」でなければならないって
煩わしく思えることってありますよね。

もし、医師や薬剤師から指示を受ければ
「食後」で飲まなけばいけないと思うでしょう。

ただ、実際に本当に影響があるのか?
生活を制限してまで注意する必要があるのか?

これはグレープフルーツジュースやお茶での
服用などもそうですね。

専門家の言葉は、自分が思っている以上に
相手に影響を与えることってあります。

自分の知識や言葉に根拠があるのか
ついて考え、不必要な心配や制限を与えないように
考えていくことも必要だと思います。

以上、「常識を一度は疑え!」という観点から
書いてみました。
参考になれば幸いです。

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コメント

  1. ハル より:

    ありがとうございます
    とても参考になりました

    • しゅがあ より:

      ハルさんへ
      コメントありがとうございます^^
      そういってもらえると励みになります。
      今後もよろしくお願いします!

  2. やま より:

    吸収後どのくらいの量が胃へ移行し、胃のPGを阻害するか?
    それに比べ、胃についた時点の薬の濃度≒投与量と圧倒的に濃度が濃いです。

    食後は胃内薬物濃度を低下させるためと私は思います。

    • しゅがあ より:

      やまさん、コメントありがとうございます。

      確かに空腹時服用では、胃内容物での希釈がないので薬物濃度は高くなるかもしれません。
      ただ胃粘膜は本来、薬の吸収部位ではないはずなのでその濃度の影響を受けるのか?という疑問があります。
      また錠剤がどこで溶解するかという要素も絡んできそうです。。。

      新たな視点からのご指摘ありがとうございました!

  3. 匿名 より:

    上記の記載では、腸管より吸収された薬だけがCOX-1を阻害するように書かれていますが、胃粘膜より吸収された薬も胃粘膜に存在するCOX-1を阻害するのではないでしょうか?というかそう思っていました。
    ゆえに食後の投与はPHを傾けることや、胃粘膜への接触面積を減し胃粘膜からの吸収を減らすという意味で重要だと思っていました。
    胃粘膜からの吸収された薬は、副作用発現にほぼ意味がないということは、ロキソプロフェンのプロドラック化も無意味ってことになってしまいますよね?

    • しゅがあ より:

      コメントをいただきありがとうございます^^
      ご指摘の内容に関しては、全く異論はありません。
      化学的、薬理学的にもその通りと思います。胃粘膜での吸収性と直接的なCOX阻害に関しては、私自身知識不足なもので肯定・否定はできません。
      あと、例えばロキソプロフェンなら空腹時でもいいのでは?なんていう疑問もでてきます笑
      ただ記事内において問題提起として挙げたのが、その”理論上”の効果がどの程度寄与するのか?ということが疑問なわけです。勉強不足ですね。。。^^;
      ほとんどの薬が「食後」で処方されていますが、臨床試験時では空腹時となっている薬剤も多数ありますよね。
      患者さんは”服用時点”というのを、予想以上に気にしていると実感して話題に挙げてみました。
      ご指摘ありがとうございました。

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