すごく興味深いテーマがあったので、
記事としてシェアしていきます。
「アスピリンジレンマ」という内容で記事を書きましたが、
アスピリンは投与量によって効果が逆転するという珍しい薬です。
<復習>
核をもたない血小板ではCOXの再合成は行われず、アスピリンによる抗血小板作用は不可逆的となる(←不可逆的というのが重要!)。したがって、抗血小板作用は血小板の寿命(7~10日間)持続する。これに対し、血管内皮細胞では、COXの再合成が行われるため、低用量であればアスピリンによる影響は少ない。
では、頭痛薬などで使われるバファリンA錠(アスピリン330mg配合)と抗血小板薬として使われる低用量アスピリン錠とを比較したとき、それらの効果はどうなのか?という話です。
いわゆる抗血小板薬として使われる
「低用量アスピリン」の用量はどのくらいなのか、
というと40~330mgとされており、けっこう幅があるようです。
また、アスピリンによるTXA2産生阻害作用は、
およそ10mg/日以上で現れるといわれています。
そして用量を増やしていったとき、効果が頭打ちになるプラトーに達するのは160mg/日です。
一方で、胃粘膜でのPG合成阻害作用により、胃潰瘍などの障害を起こすのは100mg/日以上で現れはじめるという報告もあります。
抗血小板薬として使用される低用量アスピリン(国内)は、
☆バファリン配合錠A81(アスピリン81mg配合)
☆バイアスピリン錠100mg
となっています。
どちらがいいかというのは、
はっきりとした見解はなく医師の好みで使用されているようです。
さらに、高用量で使用した場合はどうなるのか?
という臨床試験も行われているようです。
1.高用量群(500~1500mg)
2.中等量群(160~325mg)
3.低用量群(75~150mg)
これら3つの群に分けて、脳卒中や心筋梗塞、血管死といった心血管イベントの低減効果について調査したようなのですが、結果は有意差なし。
つまり、500mg/日以上という高用量でも、心血管イベントを防止するという意味で、ジレンマの影響なく抗血小板療法の効果は得られるということです。
もちろん、増やしたから効果が強まるものではないということでもあります。
で、あるならば少ないに越したことはないので、80~100mg/日程度で特に問題はないのかという結論に至りますね。
ということで、まとめます。
☆抗血小板薬としてアスピリンを用いるのであれば、100mg/日程度で使うのが効果・副作用の面から考えても合理的。
☆頭痛薬などで使用するアスピリン製剤(バファリンA)などでも、抗血小板作用があり、アスピリンジレンマは臨床上みられない。
なので、「頭痛薬(バファリンAなど)を飲んだからアスピリンジレンマが起こって血液がドロドロになる」とか、反対に「高い用量であれば、抗血小板作用が弱まるから安心」というものではないということですね。
量に関わらずアスピリンを使うことで、一定の血小板凝集を抑える効果は発揮され、用量を増やしていくと副作用は当然起こりやすくなる。
というシンプルなものであるということです。
これからデータが集まって変わることもあるかもしれませんが。
「理論」の視点と「臨床(現実)」の視点。
すごく重要だなと思います。
以上、ありがとうございました!
参考:日経DI 2014.3