カルシウム拮抗薬(Ca拮抗薬)の違いと使い分けをわかりやすく解説!

s-Cainhi

血管を拡張し、血圧を下げるカルシウム拮抗薬(Ca拮抗薬)。

今や高血圧の薬物治療における主力選手です。もはや、Ca拮抗薬なくして降圧治療は語れません。

その作用機序はシンプルですが、種類は非常に多様ですよね。

薬剤師であれば、それぞれの薬のイメージはなんとなくできるかもしれません。例えば、心臓に選択性があるものだったり、不整脈に効くものだったり、血圧を下げる力の強いものだったり。

でも、いざ詳しく説明しろと言われると、意外に難しい・・・。

学生のころには、Ca拮抗薬という大きなくくりで習うため、詳しく勉強する機会がありません。細かいところは働くようになってから学ぶしかありません。

ということで、今回は「Ca拮抗薬の違いと使い分け」をテーマにお話したいと思います!

目次

Ca拮抗薬の作用機序を復習!

Ca拮抗薬が働く筋肉は、主に2つあります。「血管平滑筋」と「心筋」です。まず前提として、これらの筋肉が収縮するには細胞外からのCaイオンの流入が必要です。

Caイオンの流入は、それぞれの細胞膜に存在する電位依存性Caチャネルを介して行われます。このチャネルに結合して、その働きを阻害するのが「Ca拮抗薬」でした。

電位依存性Caチャネルには、複数の「型」が存在しており、その違いがCa拮抗薬の多様性と効果の違いをもたらしているのです。

Caチャネルの3つの「型」とは?

Ca拮抗薬の作用を考えるときに、絶対に押さえておきたい型が3つ存在します。まずはそれぞれの型の特徴をみていきましょう!

L型Caチャネル

「L型」には、活性化する時間が長い(Long lasting)、大きな (Large) コンダクタンス(電気の流れやすさ)という意味があります。

Ca拮抗薬の「降圧作用」の正体となるのが、このL型Caチャネルです。

そして、臨床で使われているすべてのCa拮抗薬は、程度の差はありますがL型Caチャネルに対する親和性をもっています。

では、何がそれぞれの作用の違いを生むのかというと、「結合部位」の違いです。

「結合部位」もこれまた3つ知られています。N(nifedipin)部位、D(diltiazem)部位、V(verapamil)部位があります。

【N(nifedipin)部位】

ジヒドロピリジン系(語尾にジピンがつくもの)が結合する部位です。血管拡張作用に強く関与しており、N部位に結合する薬は、強い降圧効果を示します。

しかし、一方で心筋への作用はほとんどなく、陰性の変力作用や抗不整脈作用は発揮しません。

【D(diltiazem)部位】

ベンゾチアゼピン系(ジルチアゼム等)が結合する部位です。この部位に結合すると心臓の血管にも作用するため、狭心症にも効果を発揮します。

一方で、降圧作用はあまり高くないため、降圧目的に使用するには少し力不足な場合があります。

【V(verapamil)部位】

フェニルアルキルアミン系(ベラパミル等)が結合する部位です。この部位に結合するCa拮抗薬は、圧倒的に心臓への作用が強いのが特徴です。

L型Caチャネルは、固有心筋(心臓収縮に関わる心筋)の収縮過程だけでなく、洞結節など特殊心筋(ペースコントロールに関わる心筋)の活動電位にも関わっています。

※ペースメーカー部分では、後に説明するT型も強くからんでいます。

つまり、Ca拮抗薬は血管の拡張だけでなく、心拍数のコントロールにも影響を与えるのです。

心臓への親和性の高いペラパミルは、心房細動、心房粗動といった不整脈のレートコントロールやPSVT(発作性上室頻拍)の停止に用いられます。

T型Caチャネル

「T型」には、活性化する時間が短い=一過的: Transient、小さい (Tiny) コンダクタンスという意味があります。

幼若期の心筋細胞や洞房結節細胞、血管平滑筋などに存在し、静止電位の浅い組織で自動能や収縮に関与すると考えられています。

これは、他のCaチャネルよりも活性化の電位領域が深いことに起因します(-60~-20mVで活性化、L型は-30~+10mV)。

つまり、静止電位が浅いところ(洞房結節など)で活性化できる=自動能に寄与できると考えることができます。

従来のカルシウム拮抗薬では遮断されないなど、L型カルシウムチャネルとは異なる性質を有しています。

近年、T型Caチャネルが心肥大や心筋症などの病態時にその分布や性質が変化することも明らかになり、新しい治療ターゲットとして注目されています。

T型Caチャネルは血管収縮にも寄与し、特に腎臓では輸入・輸出細動脈の収縮に関わっているため、T型を遮断すること腎保護効果も期待されます。

N型Caチャネル

「N型」には、L型ではないCaチャネル (Non-L) 、神経細胞に発現する (Neuronal)という意味があります。

例えば、L型Caチャネルの遮断により血管を拡張して降圧すると、その反動で交感神経が活性化します。

すると、「心拍数の増加」や「心収縮力の増加」を起こすケースがあります。N型Caチャネルは交感神経終末に存在しており、その発生に関わっているとされています。

N型Caチャネルを遮断すると、交感神経終末からのノルアドレナリン(NA)の分泌が抑制されます。

つまり、交感神経の亢進に伴う血管収縮の抑制、心収縮力や心拍数の増加を軽減できるわけです。(=ストレス性の高血圧にも効果が期待される)。

以上が、Caチャネルの「型」の簡単なまとめになります。では、それぞれの薬の違いや特徴について具体的にみていきましょう!

Ca拮抗薬の種類と特徴

①ジヒドロピリジン系

ニフェジピン(アダラート)

第1世代。L型に作用します。血管選択性高く,降圧作用強いのが特徴です。冠攣縮も予防効果も認められ、血圧が高めの異形狭心症にも用いられます。

ニフェジピンは作用発現が非常に早く、心拍数の上昇が認められることがあり、その使用頻度は一時少なくなっていました。

しかし現在では、製剤工夫によりL錠(T1/2 : 3.7h)やCR錠(24時間で2峰性の体内動態)が登場したため、再び使用頻度は多くなっています。

ベニジピン(コニール)

第2世代。L,T,N型に作用します。降圧作用はやや穏やかとされていますが、冠攣縮の予防効果に関しては他剤よりも有効とされています。

また、T型に作用することから腎保護作用も期待されます。

高血圧合併の早期から中等度CKD患者において、尿中アルブミン減少、尿中アルドステロン値低下、尿中Na/K比低下が優位であるいう報告があります。

腎機能が低下している患者に対して、今後積極的に使用されていく可能性がある薬剤です。

ニカルジピン(ペルジピン)

第2世代。L型に作用します。経口薬の降圧作用は緩やかであり、副作用は相対的に少ないのが特徴です。

ニカルジピンには注射剤が存在するのが大きなポイントです。血管選択性が高く、キレがよく調節しやすいため、脳外科領域で使用されることが多い薬です。

心外術中術後,大動脈瘤、脳血管疾患の急性期などに使用されています。

シルニジピン(アテレック)

第2世代。L,N型に作用します。輸出細動脈拡張による腎保護作用と心拍数を抑える効果が注目された薬剤です。

現在、シルニジピンの作用について多くの検討がされており、インスリン抵抗性の改善、尿酸低下作用、尿中アルブミン減少作用など多くの「付加的効果」が報告されています。

単純な降圧効果ではやや劣る印象ですが、今後活躍の場が広がっていくCa拮抗剤の一つです。

アムロジピン(ノルバスク)

第3世代。現在の降圧治療の主力です。L型に作用します。非常に半減期が長く1日1回の服用で十分な降圧効果が得られるのが特徴です(T1/2:39h)。

他剤と比較して有効性が低いという報告もありますが、高い安全性と圧倒的な臨床成績により、ARBとの合剤の成分としても積極的に採用されています。

他剤よりも顔面紅潮や頭痛、頻脈、浮腫などの副作用が少ないことが特徴です。また、グレープフルーツや併用薬による相互作用も少ないことも選ばれる一つの利点となっています。

アゼルニジピン(カルブロック)

第3世代。L,T型に作用します。降圧作用が緩徐であり、心拍数への影響が少ないのが特徴です。したがって、顔面潮紅や頭痛、反射性頻脈などの副作用を起こしにくい薬です。

臓器保護作用や抗炎症作用も注目されており、酸化ストレスやAGE(終末糖化産物)の低下も報告されており、今後のシェア拡大が予想されます。

②ベンゾチアゼピン系

ジルチアゼム(ヘルベッサー)

L型CaチャネルのD部位に作用します。冠動脈の拡張作用が強く,血圧をあまり下げないので、正常血圧の狭心症によく用いられます。

また、冠血管だけでなく心筋にも作用して洞性興奮,房室伝導をブロックします。つまり、高血圧で頻脈傾向の患者に効果的といえます。

ジルチアゼムは、血管と心臓への作用バランスがよく、ニフェジピンとベラパミルの中間の働きがあるとイメージするとよいでしょう。

③フェニルアルキルアミン系

ワソラン(ベラパミル)

L型CaチャネルのV部位に作用します。心臓選択性が高く、降圧目的では使用しません。基本的には抗不整脈薬として使用します。

ジルチアゼム同様、洞性興奮,房室伝導をブロックすることで、発作性上室性頻拍をよくコントロールできます。

ベラパミルはCYP3Aで代謝されるとともに、P糖タンパクの基質でもあります。よって、併用薬との相互作用が問題となるケースがあります。

併用事例が考えられるプラザキサ®との併用により、抗凝固作用が増強するため特に注意が必要です。

腎臓にあるCaチャネルにも注目!

実は、Ca拮抗薬のターゲットなるCaチャネルは心臓や血管だけでなく、腎臓にも存在しており、腎臓病の状態に関わっていることがわかってきました。

CKDCa
図のように、腎の細動脈には3つの型(L,T、N)のCaチャネルが存在しています。注目すべきは、L型は輸入細動脈に多く、T型とN型は輸入・輸出どちらにも発現しているということです。

つまり、L型のみ遮断してしまうと、輸入細動脈が拡張して血液の流入が多くなります。一方で、輸出細動脈の径が変わらないため糸球体内圧が高まってしまいます。=腎臓に負担がかかります。

よって、T型やN型のCaチャネルも遮断できるCa拮抗薬に注目が集まっているわけですね!

例えば、慢性腎臓病(CKD)では、交感神経の亢進による輸出細動脈収縮も糸球体高血圧の原因となり腎障害の進行を促進しています。

輸出細動脈にはL型Caチャネルが存在しないために、L型Ca拮抗薬ではこの病態を改善することはできず、むしろ悪化させてしまうことも予測されます。

一方、シルニジピンなどはN型Caチャネルの阻害により腎交感神経活動を抑制し、輸出細動脈拡張による糸球体内圧低下を生じ、尿蛋白を減少させると報告されています。

また、糖尿病による神経障害のあるケースでは、交感神経支配が低下しているため(下側のイラスト)、L/N型よりもL/T型の薬剤の方が有効という報告もあります。

このように今後の降圧治療は、単純な「降圧」ではなく、臓器のCaチャネルの分布をも考慮した薬剤選択がさらに注目されていくと考えられます。

以上、Ca拮抗薬についてまとめてみました!参考になれば幸いです。

図:Therapeutic Research.2010;31(9):1271-1277、http://blog.goo.ne.jp/stroke_buster/

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コメント

  1. ヘルベッサーR100とプロノンを処方されている副作用か咽頭部はれて痰が1日出、
    また口内炎と口渇が続き別の病院ではシェグレン症候群と診断されたが医師が交代になりシェグレン症候群は否定され診察は打ち切られました。
    今日受診している病院ではバルサルタンとアムルジンを追加処方していただいているが症状は改善していない。不整脈と高血圧のどちらにも副作用のない薬の組み合わせはないものか専門の先生に教えて頂きたい。

    • しゅがあ より:

      >関 様

      結論から申し上げますと、副作用のない薬というのはありません。

      薬の飲み合わせ(相互作用といいます)に関しては、本来の薬効よりも強くなったり、弱くなったりという組み合わせが存在します。

      この分野に関しては薬剤師が医師よりも詳しい分野ですが、実際にはまだまだ発展途中の領域になります。

      ご質問にありましたバルサルタンとアムロジンの組み合わせについては、現在のガイドラインにおいては有効的とされている処方です。血圧を効果的に下げるために選ばれるARB+Ca拮抗薬の組み合わせであり、副作用に関連する相互作用も問題はありません。

      現在の医療では、口内炎や口渇については、薬の副作用なのか、疾患によるものかは判断できないのが現状です。目の前にいらっしゃる医師の判断がすべて、ということになります。

      私が医師ならば、緊急性の高い高血圧でなければ降圧薬を一度やめて経過をみて、そのあたりを判断したいところですが(でないと少なくとも検証できない)、実際にはなかなか難しいかと思います。

      私から具体的な指示は申し上げることはできませんが、ご自身の健康にかかわることですので、納得ができないのであれば、ぜひセカンド・オピニオンを有効に利用されたほうがよろしいかと思います。

  2. 脳外科看護師 より:

    コメント失礼します
    脳外科病棟勤務の看護師です
    今回薬剤の勉強会を開催しなければいけなくなり血圧コントロールで持続静注する薬剤選択で塩酸ジルチアゼムとニカルジピンの患者に対しての使い分け・適応患者判断基準が分からず教えていただきたいです
    よろしくお願いします

    • しゅがあ より:

      脳外科看護師 様

      コメントありがとうございます。

      基本的にはジルチアゼムではほとんど目標とする降圧は得られないようです。
      ただ頻脈を伴う場合には心臓に作用しやすいため、使用されることがあるようです。

      緊急時の血圧コントロールにはやはりニカルジピンとのことです。

      こちら、ドクターが解説された記事です。
      非常に分かりやすくまとまっていますので、ご期待に沿う内容だと思います。
      参考にしてみてください!

      http://app.m-cocolog.jp/t/typecast/612675/517349/70492987

      • 脳外科看護師 より:

        お返事ぁりがとうございます(^o^)参考にさせていただきます