とっても面白い話だったのでシェアしときます!
エボラ出血熱がリベリアで大変な猛威をふるっていますが(少しはコントロールできたのかな?)、その時に書いた記事を思い出しました。
ウイルスにしても、細菌にしても世界中で問題になっているのは「耐性化」なのです。
で、今回のBonnie Basslerさんの発表はこれまでの視点とは少し違った角度から「抗菌薬」について考えています。
時間ない方のため、概略をまとめておきますね!
はじめは光るバクテリア
でも、ちょっと英語分かる方であれば、そんなに難しくないのでチャレンジしてみてください。スライドもあるので何となく分かるはずです^^
はじめの方は、Vibrio fischeriっていう光る細菌の研究についてのお話でした。
簡単に流れを追っていきますね。
その細菌はいつも光っているわけじゃなくて、ある程度まとまった数が集まったときに一斉に光りだすということが起こったらしいのです。
そこから、なんで1匹だと光らないのに、仲間が増えたら光りだすんだろう?どうやってそんなことしているのだろう・・?と考えたそうなのです。
で、いろいろ実験して分かったことが、「こいつらお互いコミュニケーションしてるぞ?なん・だと?」ということ。
もちろん細菌どうしが「ちーっす」「最近どうよ?細菌だけにね」なんて会話しているはずはありません。いや、しているのかもしれませんが(笑
では、どうやって会話しているのかというと、ひとつの「分子」を使っているらしいのです。
細菌からホルモンの役割をする分子を分泌して、周りにばらまいておき、細菌表面に発現している受容体でそれらを互いにキャッチして会話しているようなのです。
で、この分子。もちろん同じ種類の細菌であれば、同じ構造の分子を共有しているわけ(⇒intraspecies communication)ですが、異なる細菌どうし(⇒interspecies communication)はどうなのよ?っていう研究もしたそうです。
そしたらすごいことに、違う種族とのコミュニケーションもできるようにちゃんと受容体が用意されていたそうなのです。人間でいえば、デフォで英語しゃべれます的な感じですかね。細菌さんハイスペックだ!
そういうわけで、細菌は同じ種族どうしで会話しているし、実は他の種族の細菌とも会話しているのだということが明らかになったわけです。
そうすることで「共生」が可能になっているし、自分の立ち位置というのも把握できるんですね。
人間もそうですね。周りを見渡したり、会話することで自分というものを考えているし、どういう位置にいるのかを知ることができるのです。
新しい抗菌薬の可能性が!?
察しの良い方であれば、この流れで思いつくのが「抗菌薬」への応用です。
同種間で会話するための分子は、その種に特異的なので、その分子の性質を応用すれば抗菌スペクトルの狭い抗菌薬をつくることができます。
逆に異種間で会話するための分子は、細菌の間で共通して認識するものなので、これをターゲットにすれば抗菌スペクトルの広い抗菌薬をつくることができます。
分子そのものが細菌の増殖を抑えたりすればそのまま薬になってもいいですし、ターゲッティングという意味で応用してもいいかなって思います。
とにかくこれまでの抗菌薬にはない新しい領域なので、今後大注目になるでしょう。
実際にBonnieさんの実験では、多剤耐性菌をマウスに感染させて、この新しい分子を使ってみたそうです。もちろんこれまでの抗菌薬は効果がないので、このマウスは救えません。
放置すると感染マウスはいずれ死んでしまうのですが、この新しい分子を使うと生き延びたそうなのです。
うまく細菌の動きを調整できれば、以前僕が書いた「ウイルス・細菌との共生」っていうことも可能になるのかな?って思うのです。
もしかしたら開発される日もそう遠くはないのかもしれないですね。
「殺すのではなく、ともに生きる」って何か素敵やん。
HIVとかも現状では同じような治療になっているわけですし、真の目的は何か?を考えれば、細菌やウイルスを根絶やしにすることではないですよね。
感染症ってたまたま人との相性が悪くて、病気を引き起こしますけど、無数に共生している微生物のなかの一つであって、寿命が終わるまで共生できれば何の問題もないはずです。
やられる!って思ったら、細菌だって耐性化やなんやらしてしまうのは自然の摂理ですもん。
そういう観点から、今回のプレゼンはすごくインパクトがあるのかなって思うんです。
では、また!