相互作用の本をちらっとめくっていたら、おもしろい話があったのでご紹介したいなと思います。
テーマは「キサンチンオキシダーゼ(XOD)」です!めちゃ詳しい説明は⇒http://pdbj.org/mom/117
最近、というか結構前だけれど、フェブリク(フェブキソスタット)が承認され、また新たなXOD阻害薬としてウリアデック(トピロキソスタット)が追加になったのでちょうどよい時期かなぁと。
では、いつもどおり楽しんでいきましょう!
目次
キサンチンオキシダーゼとは
XODはそもそも何かといえば、「プリン体」を代謝する酵素でしたね。
プリン体(プリン骨格)をもつ物質っていうのは、体内にもあるし、薬として使用されるものにもプリン骨格をもつものは結構あります。
XODはそれらの薬を含むプリン体たちを「酸化」することで、不活性化していく酵素です。
特に、尿酸値が上がってしまう痛風に関していえば、ヒポキサンチン⇒キサンチン⇒尿酸の2段階の過程を担っている酵素で、非常に重要なキーとなる酵素です。
高尿酸血症のザイロリック(アロプリノール:プリン骨格あり)とフェブリク、ウリアデック(非プリン骨格)は、XODを阻害し、最終産物の尿酸の生成を抑えることで、痛風の悪化を抑える薬でした。
XOD阻害薬と併用するとだめな薬は?
プリン骨格は、体内だけでなく薬にも含まれています。
つまり、XOD阻害薬を併用することで、下記の薬は分解を抑えられて効果が増強してしまうことが予想されます。
喘息治療薬:キサンチン系薬(テオドール:テオフィリン)
抗白血病薬:チオプリン系薬(ロイケリン:メルカプトプリン水和物)
免疫抑制剤:アザチオプリン:アザニン、イムラン
HIV感染治療薬:ヴァイデックスECカプセル:ジダノシンカプセル
XOD阻害薬とチオプリン系薬との併用
フェブキソスタットとメルカプトプリンを併用すると、メルカプトプリンの濃度が上昇して、骨髄抑制のリスクが上昇するため併用は禁忌となっています。
アロプリノールとチオプリン系薬の併用時には、チオプリン系薬の用量を1/3~1/4に減量することになっています。
一方、フェブキソスタットは減量の目安が明確でなく、禁忌になっています。(こういうところでまだアロプリノールの使い道はまだあるのかも・・・?)
XOD阻害薬と鉄剤との併用には注意?
XODのもうひとつの働きに、体内の鉄イオンの移動があります。
XODは肝臓の鉄貯蔵タンパク質であるフェリチン-Fe(Ⅲ)複合体の鉄を還元してFe(Ⅱ)に変換することで、鉄をフェリチンから遊離させる作用もあります。
つまり、肝臓の鉄を血中に流れるようにして、肝臓内の鉄分を調整しているということですね。
この働きをXOD阻害薬は抑えてしまうわけですから、鉄剤や高濃度の鉄含有食品(Fe含有ウエハースなど)を併用してしまうと、肝での鉄蓄積過剰になってしまう恐れがあるというわけです。
有機化学でみるXOD阻害薬
せっかくなので、薬学の専門である有機化学の眼からXOD阻害薬を解剖していきましょう!
XODは基質(相手:プリン体薬など)を酸化するときに、もちろん自分は還元されます。つまり、このとき酸化型(Mo6+)から還元型(Mo4+)に変化します。(酸化数が減ったときには還元・・・なつかしい!)
代謝された基質(酸化をうけた)が基質結合部位から離れると、再び酸化型に変わり、新たな基質を代謝するという流れになります。
実は、アロプリノールとフェブキソスタットの違いはここにも由来します。
XODの型に注目せよ!
プリン骨格を有するアロプリノールは、XODによって活性代謝物であるオキシプリノールとなります。オキシプリノールは、還元型XODの活性中心部位に共有結合して、XODの阻害効果を示します。いわゆる「自殺基質」として働くわけです。
一方で、酸化型のXODでは共有結合をつくれないため、その効果を失ってしまいます。
ゆえに、アロプリノールを臨床的に十分な効果を得るためには、アロプリノールと還元型XODとの結合を体内で維持するために1日数回の服用が必要になるのです。
一方、プリン環をもたないフェブキソスタットは「両刀」です。酸化型と還元型両方のXODの活性中心に強力に結合して、強い阻害作用を示します。
このときの結合は、イオン結合、水素結合、π-π相互作用など複合的なものとされています。(ピンとこないものがあれば復習ですね!)
これによりフェブキソスタットは1日1回投与となり、アロプリノールに比べて少ない投与回数と投与量で有効性が維持できるんです。
フェブキソスタットは副作用も少ない!?
フェブキソスタットの優等生ぶりはまだまだ続きます。非プリン骨格というのが、ジワジワ効いていくるらしいのです。
プリン代謝酵素というのは、XODだけでなく他にもあるんですね。例えば、グアニンデアミナーゼ、プリンヌクレオチドホスホリラーゼ、サルベージ酵素などがあります。
それぞれがどんな役割をしていたか、は各自復習で(笑
と、これらの酵素たちへの阻害作用は認められないため、重篤な副作用も少ないといわれているのです。
例えば、腎不全、肝障害、血管炎、皮膚炎などがアロプリノールではまれに生じるのですが、これらの副作用も起きにくいのです。優秀ですね~。
とはいえ、アロプリノールも長きにわたり活躍してきた薬ですから、安心感という意味ではまだまだ使われる機会はあると思います。
それぞれの特徴を抑えてフォローできるとよいですね。
余談:テオドールを飲んだら痛風になるの?
ここで素朴な疑問が。カフェインとかテオフィリンって、キサンチン系でプリン骨格があるのです。
で・・・調べてみると・・・
これらのプリン骨格には、それぞれ2.3か所にメチル基が入っています。(だからメチルキサンチン系薬ともいわれる)
そして、メチルキサンチン系薬の代謝産物には1-メチル尿酸や2-メチル尿酸などがありますが、これらは尿酸そのものではありません。
つまり、結果的には問題ない!ってことらしいです。
メチル尿酸は、高尿酸血症や痛風の誘因とはならないため、コーヒーや紅茶、緑茶などに含まれるカフェインによって痛風が起こる心配はないと考えてよいそうです。
一方で、喘息でテオフィリン製剤を使っている人はどうなのかというと、実は尿酸値が上昇している場合が多いそうなのです。
なんでか・・・?
テオフィリンが体内のプリン体の分解を促進する作用があるらしく、それが原因ではないかと考えられてます。具体的な機序については、まだはっきりとしていないようです。もし新情報があったら教えくれると助かります!
では、今回はこのあたりで。
キサンチン関連のところを復習するきっかけになれば幸いです。
ではまた!
頼りになる参考図書
コメント
初めまして。ふーたといいます。
1ヶ月前の記事にコメントしてしまい申し訳有りません。
キサンチンオキシダーゼの話大変勉強になりました。フェブリクが1日1回でいいところ、テオドールと痛風のところ勉強不足で知らなかったのですが大変勉強になりました。
はじめましてで不躾ではありますが、今度テオドールとザイロリックとフェブリクの関係についてブログを書く予定なのですがこちらのブログのリンクを貼らせていただけないでしょうか?
コメント欄への書き込みで申し訳有りません。不適切でしたらお手数ですが削除してください。
ふーたさんへ
はじめまして!
いつの記事にでもコメントをいただけると嬉しいですよ!
リンクはお好きにしていただいてかまいません^^
もしよかったら、ふーたさんのブログもご紹介していだければ遊びにいきますので教えてください!きっと僕も勉強になると思いますので^^
ありがとうございます!!アップは来週になるかと思いますが…申し訳ないです…
あ、私のはここまで深く考えられたものではないので参考になるかどうか…
ブログの引用に間違いがありましたらご指摘ください。
ブログはhttp://wruskniph.blog.fc2.comです。よろしくお願い致します。
いえいえ~、楽しみにしておきます!
すっきりしていて見やすいブログですね~^^
これからたまにお邪魔しますので、ぜひ今後とも交流できればと思います!
宜しくお願い致します!
こちらこそ!!よろしくお願いします!!