ペニシリンアレルギーの人にセフェム系は使えるか?【交差反応】

前からちょっと疑問に思っていた交差反応の話題。

ペニシリンとセフェムのアレルギーについてのお話です。両者は、構造も作用機序も似通っていて、アレルギーが起こったらどちらにも反応しそうなイメージです。

また、セフェム同士の交差反応はどうなのか?今回は、そのあたりを確認していきましょう!

基本的な構造式

では、まずそれぞれの抗菌薬の構造式から確認していきましょう。

penicilin
<ペニシリン系の構造式>

sfem
<セフェム系の構造式>

真ん中の4員環構造が「β-ラクタム環」といわれており、ペニシリン系はそれに5員環、セフェム系は6員環がくっついています。

それぞれの側鎖(R)を変えることで、抗菌スペクトルや体内動態を変えていろいろな種類のものを開発しているわけです。

薬剤アレルギー

薬剤アレルギーを考える上で、「構造」は非常に重要な視点になります。なぜなら、免疫細胞はそれぞれの薬剤の立体的な特徴を判別して反応するからです。

そして、これらの交差反応を考えたときには「側鎖」が大きく影響します。系統が異なっても、側鎖が似ていると交差反応のリスクが高まるといわれています。

両者の側鎖(アミド部分(第7位))が類似しているものは下記の通りになります。

ペニシリン系 左のペニシリン系と側鎖が類似するもの
ペニシリンG セファロチン
アモキシシリン、アンピシリン セファクロル、セファレキシン、セファドロキシル、セファトリジン

例えば、ペニシリンGに対してアレルギーをもつ患者がいたとしたら、側鎖の違うセファクロルなどを使えばリスクが低くなるということですね。

ちなみにアメリカの小児科学会では、「ペニシリンアレルギーの小児に対して、共通の側鎖をもたないセフェム系の投与は可能」ということになっているので参考までに。

セフェム系同士はどうなのか?

セフェム系と一言でいっても第1から第4世代まで、その数はたくさんあります。例えば、一つのセフェムでアレルギーが起こった患者に対しては、他のセフェムは使えないのでしょうか?

これもアメリカではOKということになっていて、側鎖の異なるセフェムであれば投与可能といわれています。

一方で、日本の添付文書では基本的にセフェムの種類に関わらず、アレルギーの既往があれば「禁忌」となっているため投与は難しい状況にあります。

参考までにですが、側鎖が似ていて交差反応の可能性のあるグループを記載しておきますので、それぞれ確認してもらうとおもしろいと思います。

類似する第7位側鎖をもつグループ セフォタキシム、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフポドキシム、セフピロム、セフェピム、セフテラム
類似する第3位側鎖をもつグループ セファドロキシル、セファレキシン
セフタジジム、セフスロジン
セフメタゾール、セフォペラゾン
セフジニル、セフィキシム
セフチブテン、セフチゾキシム

カルバペネム系は?

あと似ている構造といったら、カルバペネム系の抗菌薬がありますよね?

karuba

ペニシリンの5員環に二重結合をぶっこんだような構造になっています。

では、カルバペネムはどうなのかというと、実はデータがそんなに多くないようです。(アレルギーという性質上、検証試験はなかなかできないので、仕方ないところはありますよね・・・)

ただ、最近になってそれほど交差反応が高いわけではなく、ペニシリンアレルギーと申告があった患者さんのうち、メロぺネム(またはイミペネム‐シラスタチン)の投与でアレルギーが起きたのは6~10%ぐらいだという報告もあるようです。

側鎖の違いということもあると思いますが、骨格が似ていても必発するというわけではなさそうです。(このあたりの予測は難しいですね!)

カルバペネムは、耐性菌に対して最終兵器的に使われることもあるので、ペニシリンやセフェムでアレルギーがでた患者に使用できるかもしれないというのは、治療上有用な可能性です。

もし、代替薬がない場合には、皮膚検査やgraded challengeを考慮して、リスクコントロールして使用検討もできるということです。

graded challengeとは?

側鎖の類似性の少ない別の薬を選び、標準投与量の100分の1から投与を始めて、1時間ごとに次は10分の1、と増量し、最終的に全量を投与して反応をみるテスト。

薬剤アレルギーは頻度こそ少ないですが、起こってしまえば生死にかかわるやっかいな副作用の一つです。

100%の予測は不可能ですが、構造から概ね予測できることも少なくありません。薬の構造式や代謝による構造変化などは、薬学の専門なのでこういったところもフォローできるといいかなあと思います。

以上、最後までお読みいただきありがとうございました。

では、また!

参考:日経メディカル:【臨床講座】非専門医のためのリウマチ・アレルギー診療Update

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