服薬指導の方法~薬剤師に必要なコミュニケーション能力とは?~

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ここ最近、記事更新されないねと同僚から叱咤をうけました(笑)

やる気をなくしていたわけではないのですが、いろんなことを考えているうちになかなか「記事」としてまとまったものを書けなかったんです。

でも、これを機に書いてみます^^

今回は、私自身の経験をもとに「服薬指導」や「人間関係」で悩む人たちの力に少しでも何かヒントになればうれしいなと思います。

とはいっても、まだまだ私自身も未熟中の未熟であって人に何かを教えられる身分ではありません!

実務実習中の薬学生、新人の薬剤師の方々の何らかの役に立てば幸いです。

目次

薬剤師は非常にハイレベルなコミュ力が必要

本題に入る前に、薬剤師という職業は「相当なコミュ力が必要だ」ということが、私自身すごく感じているところです。

ほかにもコミュニケーションが必要とされる職業はたくさんありますが、「薬局の薬剤師」は特にその力が必要とされる職業のひとつだと思います。

しかしながら、よく指摘されているように、コミュ力がなくてもなんとかなっちゃう職業でもあります(現状は)。

それがバッシングの対象になることもあるわけですが・・・。

ここでは、より高い次元で薬剤師という仕事をするために、という視点でみています。

まずは「薬剤師がなぜ難しいか?」、その理由をいくつか挙げてみましょう。

薬局に訪れる目的がない

これまで国の方針により「医薬分業」が進められてきました。

以前は、病院の会計と同時に薬を一緒にもらえたのに、ある日突然「処方せん」というなじみのない紙を渡され、薬は「調剤薬局」でもらうようにと言われたわけです。

それ以降、医薬分業の意義説明はほとんどないまま、いわゆる「門前薬局」は単なる薬をもらう場所になっていました。

つまり、本来そこにコミュニケーションの入る隙間はないのです。

医師から処方された薬が手に入れば、患者さんとしてはそれで何も問題ないのです。

そういうつもりで来局した患者さんにとって、名前を呼ばれてカウンターに向かって「今日はどうなされました?」は二度手間以外の何物でもありません。

病院で散々待たされて、薬局でも待たされて、やっと呼ばれて「今日はどうなさいました?」。。。これじゃあ、そりゃ不機嫌にもなります。

薬局を訪れた患者さんの予定には、薬剤師との会話は想定されていないのです。

(※だからこそ、コミュニケーションができない薬剤師もやっていけるという理由でもあります。)

これが大きな障壁のひとつ。

薬局の薬剤師は、まずはこの心理的障壁を乗り越えなければいけません。

この背景を理解しないで、自分都合でズケズケと切り込んでくる薬剤師は「うっとうしいヤツ」のレッテルを張られてしまうのです。

医師と患者の狭間に

いまの薬剤師には「最終的な権限」がほぼありません。

処方せんの内容に関して、勝手な修正はもちろん、分かりきったどうでもよい些細なミスや事務的なミスの訂正でさえも医師の許可が必要です。

つまり、多くの場面で自分の考えや判断で物事を進めることができません。

患者から何らかの相談されても、処方の内容にかかわることであれば、必ず医師の確認が必要になり、円滑なコミュニケーションやサービスが困難になる場面が多いのです。

例えば、食前に飲めない薬がある。それが仮に、薬学的に食後でも効果に問題ない薬であっても、法律上は勝手に「食後に飲んでもよい」と明言することはできないのです。

いちいち「医師に確認してみますね。」といって数分お時間をもらうことになるわけです。

(もちろん各現場では、そのあたりは上手にやっていることとは思いますが)

そんな状況での信頼の獲得と円滑なサービスは難しいといえるでしょう。

薬剤師は「医師と患者の板挟み」と表現されることもありますが、まさにそういった状況にあるわけです。

狭い職場環境

コミュニケーションが重要になるのは、対・患者さんだけではありません。

スタッフ間同士のコミュニケーションがこれまた非常に重要です。これができないと、円滑な患者対応どころではなくなってしまいます。

薬局という職場は、少なくて2人、多くても十数人という非常に狭いコミュニティーです。そして、1日中狭い空間で一緒に業務を行います。

薬局では、これらのスタッフどうしが円滑に協力できて初めてスムーズな業務が成し遂げられます。

一部のスタッフ間のディスコミュニケーションが、薬局全体の雰囲気を左右する非常にシビアな職場環境といってもよいでしょう。

退職理由としてかなりのシェアを占めるのが、この「人間関係」ということからも、この重要性が明確になっています。

このように、薬局薬剤師は、「外」と「内」どちら向きに対しても、高度なコミュニケーション能力が要求されるわけです。

よき服薬指導とは?

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それでは「よい服薬指導」とはいったいどういうものなのか?ということを考えていきます。

正解はない

いきなりこの結論をだすと、拍子抜けしてしまうかもしれません。

が、これがもっとも重要なマインドであって、正解があると思った時点で良好な薬局運営はできなくなるのです。

なぜなら、各々の正解は状況と立場によって変わってくるからです。すべての薬剤師にとって「万能の方法論」なんてものはありません。

当たり前の話ですが、これを理解できない人が多いために互いの衝突が起き、悩みも増えていきます。

正解は「視点」によって常に変わります。

・目の前にいる患者さんの視点でみるのか?

・患者さんの家族の視点でみるのか?

・長時間待合室で待っている患者の視点でみるのか?

・事務スタッフの視点でみるのか?

・店舗を任されている薬局長の視点でみるのか?

・エリアマネージャーの視点でみるのか?

・社長の視点でみるのか?

みんなそれぞれの立場や正解があって、どれかが絶対的な正解となりうるはずがありません。

強いて言えば、より多くの皆ができるだけ幸せになれる方法が「よりよい選択」だと言えそうです。

ですが、幸せポイントなるものがあるとして、上限が決まっている以上、何かを重視すれば何かが犠牲になるわけです。

となれば、自分の信念をどこにもっていくのか?が大切になるはずです。

言いかえるのなら、自らの行動指針をもつということです。

こういう話をすると「患者さん第一だ!」と張り切る方もきっといると思います。

もちろんそれは間違いではなく、当然大切なことだと思います。

ですが、目の前の一人の患者さんの希望を100%叶えるために必死になり、他の10名の患者さんの大事な時間を奪い、結果的に患者さんを逃がしてしまうことは絶対的な正解か?といえば、どうでしょうか?

これは、医師も同じであり、1日数時間という時間をいかにして何十名もの患者に配分していくか?という問題を常にもっているわけです。

そういう視点で自分の選択を鑑みたとき、それが絶対的なものでない、ということに気づくはずです。

もちろん、患者さんに重大な被害が及ぶ可能性があるケースでは、時間をかけてでもきっちり対応する必要はあるでしょう。

一方で、個人的な満足度に関わる部分であったり、薬歴充実のための聞き取りに時間を割いたり、世間話に際限なく付き合ったりということは、ある程度コントロールできる部分かと思います。

こういう「空気を読むバランス感覚」が非常に重要だと個人的には感じています。

これが多くの方から評価される「服薬指導」、コミュニケーション力において重要な視点だと思います。

テクニックを身につける

私自身は、テクニック論はではなく、自然にできるのがいいなぁとは思っているのですが、それができないから多くの人が悩むんですよね・・・苦笑

しかしながら、人とのコミュニケーションが何の苦も無くできる人というのはいるものでして。

本当にうらやましい限りですね(笑

そういう一部の才能のある方はさておき、普段からコミュニケーションで悩んでいる方の場合、放っておいたらよくなるものではありません。

どこかで意識して、実際に自らの行動を変えていく必要があります。

さっぱり分からないという方は、何かコミュニケーションに関する本を一つ買ってみて読むとヒントは得られるかと思います。

ほぼ重要な部分というのは共通していると思います。

しかし、読んだだけでは何の意味もなく、実際に次の日から何らかのアクションを起こしてみることが大切です。

毎日チャレンジする機会は与えられているわけですから、一つずつでも実践できるようになれば、毎日の成長を実感できるはずです。

ありがとうのパワー

私自身がひとつ大事にしていること、それは「ありがとう」を言葉で伝えるということです。

過剰なくらいのありがとう、がちょうどいいと思います(笑)

普段言わない人は、なかなか慣れるまで照れくさいかもしれませんが、これは非常に効果テキメンです。騙されたと思って一度やってみてください。

人間関係がうまくいっていないという人は、思っているよりはるかに自分の想いが相手に伝わっていないことが多いです。

他人にやってもらって当たり前だと思ってはいけないですよね。

ありがとうは「有り難い」が由来です。当たり前のことなんかひとつもないんです。

何か仕事をしてもらったら、ありがとうを伝える。

これだけで、だいぶスタッフ間のコミュニケーションは改善します。本当に不思議。

すると、気持ちの良い空気が薬局内に流れ、よい雰囲気が患者にも伝わり、よき服薬指導のための土壌となるはずです。

雑談力のパワー

これは私自身が苦手というか、敢えてやっていなかったんですよね。

雑談している暇があったら、早く指導を終えて次の患者さんへ、という空気のところで仕事をしていたせいもあるかもしれません。

当然、そういう仕事を回す意識というのも必要なんですが、雑談というのは「信頼関係を築くはじめの一歩」なんだということが最近分かってきたんですね。

一言だけ「今日は寒いですねぇ。」とかでも意外に十分な効果はあったりします。

もし顔なじみの人であれば、その人の趣味の話とかでもいいですしね。

そういうワンクッションがあるだけで、相手の表情がほわっと変わるときがあるんですね。

要はコミュニケーションのスタートは、相手との波長を合わせることだと思うんです。

マニュアル車を運転したことのある人は、ギアチェンジを思い浮かべてもらうと分かりやすいんです。ギアを変えるときには、クラッチをゆっくり繋がないと噛み合わなくて、すごい衝撃が生じますよね?

人同士も同じだなって思います。

うまく緩衝材を使いながら、相手に波長をあわせてあげて、こちらから合わせていくという努力は大切かなと思います。

使える知識を身につける

薬の知識はもっておいて当たり前なのですが、その情報はそのままでは服薬指導で使うことはできません。

簡単にいうと、COXがどうのこうのとか、CYPがどうのこうのとか、誰も聞きたがる人はいないんです。

そういうバックにある小難しい理屈を踏まえて、

「結果、どうなのよ??」

というところを患者さんは知りたがっているわけです。

グレープフルーツジュースを飲むと腸管内のCYP3A4が阻害されるため、処方薬の代謝が阻害され、薬物の血中濃度が通常よりも上昇する恐れがあります。

はいはい、

で、どうなのよ?

飲んじゃだめなの?それともちょっとならいいの?

ここが知りたいわけです。

小難しい理屈なんて、よほど意識の高い人しか興味ありません。

「で、私の場合にはグレープフルーツジュースは飲んでいいの?」っていうことを指導できなければ意味ないわけです。

これが死んだ知識と生きた知識の違いであって、薬剤師が存在する意義だと思うんです。

でなければ、小難しい説明の書いた紙を渡して読んでください、でいいわけですから。

にしても、これまた難しい問題なんですよ?

グレープフルーツジュースにしたって、どのくらい影響があるかがすべての薬で分かっているわけではないし、影響が少ないものは飲んでよしとするか、すべて禁止にしてしまうか、で大きくQOLが変わる人もいるかもしれません。

こういう答えの出せないところをどれだけ真剣に考えられるか?というのが、結局のところロボットと人間の差になるんじゃないかな?って思うんです。

何か知識を手に入れたら、その知識の「使い方」を常に考える。

そういう視点をもっていくと、考えることがすごく多くなって非常に頭が痛くなりますよ(笑

でも、真のコミュニケーションやプロフェッショナルって、そういうところから生まれてくるのかなと個人的には感じています。

まとめ

長くなってしまいましたが、私自身が数年働いてみて感じたことをつらつらと書いてきました。

もちろん私がすべてできているわけではないのですが、自分自身のこと、まわりの方々をみていて感じたことを整理してみたつもりです。

「服薬指導」というテーマで書こうと思ったのですが、結局のところ、その基盤として生き方とかコミュニケーションの理解が大切なんじゃないかと、今となっては感じているところです。

これから実習で患者応対を経験される方、人付き合いで悩んでいる方など何かを感じていただき、お役にたてていただけたら嬉しいです。

人に偉そうなことを言える立場はまだまだないのですが、拙い記事を読んでいただいた方、お互い頑張っていきましょう!

それでは、最後までお読みいただきありがとうございました。

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コメント

  1. 猫好き より:

    お久しぶりです。
    薬局実習(精神科の門前薬局)に行っている関係で思うのですが、
    薬剤師が本当に求められるにはどうあるべきかを考えることが多いです。
    実習先の薬剤師の先生方の多くが、患者さんとの距離が近い(かかりつけ薬剤師)に
    似てきているなとふと感じました。
    薬の専門家として、ちゃんと薬剤師が機能しているなと感じる一方で、
    患者さん本位に偏り過ぎている感じも拭えないなとも感じます。
    医療系の学生として実習に来ているものとして、このような考えを持ってしまうのは
    問題かもしれないと思います。
    しかしながら、患者本位の医療こそ、本当の医療なのかもしれないとも思います。
    医師本位の医療と患者本位の医療。
    一長一短がある両方の考え方があると感じています。
    患者さんが薬剤師を信頼していくかどうかは、患者に対する心の寄り添い方であると
    思います。
    しゅがあさんはどう考えますか。

    • しゅがあ より:

      いろんな角度から物事を考えるのはよいことだと思いますよ!

      この記事では、特に薬局薬剤師を勤め上げるうえで、私自身が大切だな~と思ったことなので、もちろん正解というわけではありません。

      とはいっても、だいたいの仕事に共通することなのではないかな?と私は考えています。
      そして、この視点が欠けている人は「管理職」としてはうまく機能できないと思います。

      一方で、「職人」や「専門家」として邁進していきたい方は、より専門領域を強めていき、圧倒的な強みをもつことで成功できる人もいるかもしれません。

      いずれにしても正解はありません。

      患者さんとの距離感についてもケースバイケースで、近すぎても、遠すぎてもメリット、デメリットあると思いますよ。

      そのあたりは実践を通して腑に落としてもらわないといけないところだと思います。

      試行錯誤しながら成長していってください^^

  2. 猫好き より:

    コメントありがとうございました。
    いろんな意味で試行錯誤を続けていますが、思うのは結局自分が、どうしたいかによるのではないかということですね。
    患者との距離や他の医療関係者とのかかわりを通して、自分が本当に成長ができるかにかかってくると思います。医療現場の現状をこれから、目の当りにしながら、自分や自分の考えに向き合ってくれる仲間と共に、勉強していける環境を作り出していけたらいいなと思います。