インスリン発見の歴史
糖尿病という病気は
現代に始まったものではなく、
実は紀元前からすでに存在してたのです。
複数の古代文明において、
「のどの渇き」「多飲多尿」「尿が甘い」
などの症状についての記録があるのです。
しかし、それから長きに渡り、
糖尿病は治療法のない致命的な病気
として扱われてきました。
はるか数千年の時が過ぎ、
時は1921年、歴史が動き出しました。
若干29歳のF.Bantingと
19歳のC.Best(医学生)が
膵臓摘出したイヌが糖尿病を発症することを発見しました。
その成果を基にカナダで
膵臓からの生理活性エキス(インスリン)の抽出に成功したのでした。
その翌年、ヒトへの投与が臨床実験され、
翌々年にはインスリン製剤の生産が開始されました。
現在では到底考えられないスピードで
インスリンの発見から臨床応用されたのです。
この功績でBantingは
1923年にノーベル賞を受賞しています。
ちなみに賞金の半分はBestに渡したと報じられています。
インスリンの分泌はどこから?
先に説明したように、
インスリンは膵臓という臓器から分泌されるホルモンの一種です。
膵臓は胃の裏側にあり、
長さ15cmほどのオタマジャクシの形
をした臓器で、頭の部分が十二指腸に接しています。
膵臓には大きく2つの機能があります。
1つめは膵液(多種多様の酵素を含む液)
を消化管に分泌(送り出す)ことです。
胃や十二指腸など消化管は
生理学では”からだの外”と考えるので、
この機能を「外分泌」と言います。
2つめは、「内分泌」の機能です。
膵臓には、ランゲンハンス島(膵島)という組織が
まさに「島」のように点在しています。
ランゲンハンス島は、
α細胞(血糖を上昇させるグルカゴンを分泌)、
β細胞(血糖を下げるインスリンを分泌する)などの内分泌細胞の塊です。
膵臓には100万個以上の
ランゲルハンス島がありますが、
それを全部あわせても1g(1円玉1枚分)ほどで、膵臓の1~2%程度にすぎません。
このたった1gの組織がヒトの命を司っているのです。不思議ですよね!
現在ではこの「インスリン」を
人工的に大量に生成してインスリン製剤(自己注射)として使用しているのです。
⇒「インスリン製剤の歴史~動物から酵母へ~」を読む。